プロDD・M 〜その562
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
「どうせ今、命が残り2つとか考えているんでしょ?」
NDKの問いに、エーケーはドキッとした。それを隠し、平静を装って、剣を構えた。
「だから、言ってるじゃない。ネネネソードを失ったあんたに、私の攻撃は防げないって」
「!!?」
エーケーはその時、自身に纏わりつく瘴気に気付いた。
「もう何もかもが、遅い」
「な、なんだ、この私が知らない輪形彷徨が…!?」
「失墜の夏」
エーケーを取り巻く瘴気が一層濃くなっていく。そして、それは彼を黒く飲み込んでいった。
「ぐああああぁぁぁぁ…….」
「無駄よ。命が幾つあろうとも、瘴気はあんたの全てを飲み込んでいく」
「どこで…..こんな力を……」
「時代を進んでいるのよ。古いヲタクはもうついてこれないの。加速するこの新時代に」
「ふっ…そうか…ならば!もしも女神と対話する事が…出来たなら伝えてくれ…!お前との日々も悪くは……ごふっううう」
言いかけて、エーケーは完全に飲み込まれた。
「さようなら。伝える義理はないわ、党首さん。走馬灯はあたしが有効に活用してあげる」
NDKは不敵な笑みを浮かべると、ソバシのもとへと向かった。
「ライチ、ツバサ、悪いけど、時間だ」
「つれない事を言うな、ソバシ。まだ始まったばかりじゃねぇか」
手を止めたソバシに、ライチがやれやれと言った表情を浮かべた。
「NDKが…呼んでるから」
そう言って、立ち去ろうとするソバシに、ライチは声をかけた。
「まぁいいんだがよ、一つだけ忠告しておくぜ。あの女には気をつけな」
「…..」
残ったツバサとライチは向き合うが、互いに矛を収めたままだった。
「そのまま行かせるのかい?あんたもとんだ甘ちゃんだね」
ライチが笑いかけると、ツバサは真面目な顔をして答えた。
「愛し合う者たちを引き裂くほど、俺は野暮じゃない」
それを聞いたライチは意味深な表情を浮かべて、呟いた。
「愛…..ね。愛し合う2人……か」
ツバサにはその言葉の真意がわからなかった。
片手を潰されたコイケは、少し後退しながら、ニシに化けていたシャクを睨みつけた。
「くっ…」
「あらぁ?かわいそう。もうその手、使い物にならないわねェ」
「…….ずっとニシに化けて機会を伺っていたのか?」
「ううん、あの日、マルスたちと行動を共にしていた時、アタシはニシに襲われた」
「…」
「あの時、考えたの!この爆発に紛れれば!ってね。まんまと引っ掛かったわぁ。皆、アタシが死んだと思った……でも期待外れだったわ」
「どういうことだ?」
「きっとマルスちゃんが、走馬灯を手にするものだと思っていたけれど、あの子、やられっちゃったみたいねェ!」
「……!」
「油断したマルスちゃんから走馬灯を奪うはずだったのに。当てが外れたわ。仕方ないから、あなたを取り込んで、もっと強化して……」
「黙れよ」
「?」
コイケの言葉に、シャクは一瞬驚いた。しかし、またすぐに言葉を繋げた。
「思ったより、熱い所あるのね、コイケちゃ~ん。でも、どうするのォ?片手を潰されて、もうたいして力も残っていないでしょ」
「ふっ…….甘く見られたものですね。どうやらあなたは知らないようだ。古より、この大陸を蝕む、真のヲタクの恐ろしさを……」
一方、遊戯機構の幹部達に追われ、絶体絶命となっていたライコ。
「カシワギ…イマセン…くっ…ここまでかよ…いや、足掻いて見せよう、俺はライコ…..雷の虎」
激しい電撃を纏い、ライコがイマセンへと飛び掛かった。
「まだそんな力が残っていたとはね!」
イマセンとライコの拳が激突し、両者が後ろへ飛ばされた。
しかし、圧倒的に不利なのはライコだった。
「くそ!」
「引用RP!」
相手がイマセン1人だったら、まだライコは逃げ切れたかもしれない。
だが、ここにはカシワギもいる。
純粋な女神の力を乗せたカシワギの引用RPが、吹き飛ばされたばかりのライコを襲った。
「ぐああああああああ!!」
「惜しかったな」
「がはっ…はぁ…はぁ…」
「安心しろ、すぐにお前の主人のもとへ送ってやる」
「へ…へへ…主人…?何言ってんだ…?アッキーさんはただの顧客……それ以上の感情は…ねぇよ…..」
「……そうか。まぁ、どっちでもいいが、お前はここで死ぬ、それは避けられん。あれを見てしまったからな」
遊戯機構会長ケイが、アッキーを贄にして召喚したあれ…ライコを見ていたのだ。
「あんたら、とんでもない事をしてくれたよな…..」
「さて、これ以上話しても仕方ない、さらばだ、ここで死ね」
カシワギがライコにとどめを刺そうとしたその時……。
「むっ!!」
カシワギは咄嗟に身を翻して、飛んできた剣を避けた。
「何か聞き捨てならん言葉が聞こえたな」
投げた相手の声が聞こえた。それを睨みつけて、カシワギが呟く。
「何の用だ…..?亡霊が……」
「アッキーが死んだだと?馬鹿を言うなよ、あいつを殺すのは、俺だ」
その姿を見て、ライコは驚いた。
「ポンチョ……!?群青王国騎士団!?」
祭壇に残されたケイは、贄となり消滅していくアッキーの体に礼を述べた。
「貴様のような罪深き男でも、最後は我の役に立ってくれたな、感謝するぞ」
「ここは…..?」
「想定以上の成果だ!この遊戯機構のヲタクを召喚する儀式は、やはり贄の力が重要ッ!!」
召喚された男は、辺りを見渡した後、ケイの顔を見て、状況を理解した。
そして、ケイは、男を見て満面の笑みを浮かべた。
「ようこそ、いや、おかえり遊戯機構へ……プロDD……マルス!」
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