プロDD・M ~その509

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

「本当に良かったのか」
「大丈夫だ、マルスが言ってただろ」
「なんだかんだあいつが入ってから、俺達もずいぶんと勢力を拡大した」
「楽しかったな」
「ああ…」
「もう戦わなくていいんだ…」
「この戦いが、終われば、な」
 スペとラルクマは2人でユケの追跡を躱すように逃げ出していた。
 そして、一方で、セルーはユケの痕跡を辿っていた。
(いた…..ユケッ!逃げるなどとそんなことが出来るか!一人でもやってやるッ!奴の能力がわからないなら、わからねーなりにいくらでもやっつける方法はあるぜ……暗殺だッ!)
 世界を正常に戻し、弱者を救うため、セルーは戦士の矜持までも捨てようとしていた。
 そこに、聞き覚えのある声がかかる。
「早まるなよ、セルーッ!」
「マルス…….!」
「俺はお前のような直情タイプはほっとけと言ったんだがな…ラルクマとスペがどうしてもくっついてやれって言うんでな…来てやったぜ」
 マルスが少し悪っぽく笑うと、セルーはとても嬉しそうに笑った。
 その頃、ユケは、ラルクマとスペに追い付こうとしていた。
「なかなか速いな。どちらかの能力か?だが….」
「ユケだな!覚悟ォ!」
「フン」
 ユケは飛びかかってきた一般兵達をあっさり殺すと、その内の1人を捕まえ、その馬に乗った。
「行け、走らせろ」
「へ、へい…..」
「追い付かなければ殺す」
「ひ、ひぃ」
 馬を止めようとする者達は次々と牽かれていった。
「こ….ここまでやったんです!私の命はッ!助けてくれますよねェ~~~ッ!」
「だめだ」
「あはははははは」
「いたな…もっと近づけ…もっち近くにだ。近くなければ」
 そんなユケの乗った馬の横にラルクマ型の実体を持った何かが現れた。
「ラルクマの…」
Eistence!」
 その分身体はユケに攻撃を仕掛けた。と思ったら、次の瞬間、吹き飛ばされた。
「いつの間に…..!ぐあっ」
 分身体がダメージを負った分、ラルクマにも反映された。
 スペが慌てて言う。
「気を付けろ!近づきすぎだぞ!」
「すまん、つい...。奴にもこのExistenceが見えるのか…そうか…やはり鍵は女神の…..」
「大丈夫か?奴の能力を見たのか!?」
「ああ…今俺は10mの距離から攻撃したが、あと少し近づいていたらやられた……確かに奴の能力は何か想像を超える恐ろしい秘密が隠されている。しかし、2つだけわかった」
「何!?」
「1つ、奴の能力はそう遠くまではいけない。1つ、拳で攻撃してきたことから弾丸などの飛び道具は持っていない」
「注意深く探るんだ。石橋を叩きすぎるということは決してないからな…」
「はっ!?気を付けろ!何かとんでくる!」
 その時、馬に乗っていた兵士が投げ飛ばされていた。
 思わず、足を止めてしまった2人。
 そこに、ユケが迫る。
「行け。俺が止める」
 立ち止まったままのラルクマ。それを見てにやりと笑うユケ。
 ラルクマは堂々と傍らに分身体を出す。Existence。ラルクマは、自分のこの分身体を見る時、いつも思い出す。子供の時から思っていた。街に住んでいるとたくさんの人と出会う。
 しかし、普通の人たちは、一生で真に気持ちが良い合う人がいったい何人いるのだろうか?
 他の子供達のアドレス帳は友人の名前でいっぱいだ。50人はいるだろうか?100人はいるだろうか?
 母には父がいる。父には母がいる。
 自分は違う
 街を治めるボスなんかはきっと何千人といるんだろうな。
 自分は違う
 自分にはきっと一生誰一人として現れないだろう。なぜなら、このExistenceが見える友達は誰もいないのだから……。
 セルーさん、スペ、マルスに出会うまでずっとそう思っていた。
 それは目的が一致した初めての仲間だったからだ。
 最前管理を倒すというこの戦い。気持ちが通い合っていた仲間だったからだ。
 ラルクマは、Existenceを見て考える!
(こいつを昔のように誰にも気づかせなくしてやる。そう、ユケの正体を暴くために完璧に気配を消してやろう)

 一方、後ろからやって来たマルスとセルーは。
「上だ!ラルクマが戦っている!」

「前方に、ラルクマとスペしかいない。そうか、二手に分かれて挟み撃ちというわけか。フン、無駄なことを」
 そう言って、踏み込んだユケだったが、何かを踏んだ。
「むぅ!?」
 その瞬間、弾丸がユケを掠めた。
 ユケが気を巡らせると、そこには無数の糸が張り巡らされていた。
「これは…..マスクの女神のThis Wold結界!!くそっ!」
 無数の罠が、ユケを追い詰めていく。
「触れれば発射されるThis Worldはッ!すでにお前の周囲を!お前の動きも手に取るようにわかるぞ!」
 次の瞬間、ラルクマは吹っ飛ばされていた。
 そして、その腹には致命傷とも言える傷が入っていた。
「マヌケが…知るがいい…この俺の能力は、全てをなす、そこには不安も何もない」
「ごふっ…..な…..ぜ……」
Whatever happens,happens全ては俺の思うがまま

「ラルクマーーーーー!!馬鹿な!どうしてこうなったッ!!」
「見えなかったッ!何もッ!!」
 セルーとマルスにも、ラルクマの敗北が見えていた。
 いや、ラルクマはまだ死んでいなかった。
「はぁ……はぁ……まだだ…….」
「……愚かな。その傷ではもう助からん」
「うるせぇ…俺はマスク族…..この程度の傷でェ……」
「死に損ないがッ!もう一度…..」
 その時、ユケの横を風が駆け抜けた。
「ラルクマはやらせねぇよ……」
「スペ……ッ!?」
深夜高速

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