プロDD・M ~その491
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
走った。ツムギは一心不乱に走った。
「マルス様!!!!」
そして、たどり着いたその先に広がった光景は、地獄だった。
「ツムギ、自らの足で戻ってきたのね。ちょうどこいつらをぶち殺そうとしていたところよ」
笑みを浮かべたスギコの後ろには囚われのマルス。
前方には、ボロボロのアネンゴ、サエカピ、ガリ、ブルーハワイがいた。
「いいえ、違うわ」
「ん?」
「あんたを…殺しに!」
「ハハハハハ!あんたが我がデパートにいた時、何度私を殺そうとした!?毒殺、暗殺、奇襲!結果、私を殺せたか?お前には見に沁みてわかっているはずよ…あんた達ごときでは私を殺せないって事ぐらいねェ!」
「…….!!」
「いい?私はあんたを殺さないし、私からは逃げられない…あんたには永久にうちでアレを作ってもらう…….」
その言葉を聞き、ツムギは涙をこらえた。
その様子を見て、スギコは続けた。
「今からこいつらを全員ぶち殺すわけだが、もしあんたが自ら快く我が元へと戻り、アレを作り続けると言うのなら、命を助けてやってもいいわよ。ただし、こいつはダメだがね」
と、スギコは、マルスを指差した。
「!!」
「さぁ、選べ。あんたはこいつらの仲間か、それとも私の部下か」
(ここで、スギコの手下だといえば、アネンゴ様達は助かる…でも……)
意を決して、ツムギは皆に向けて叫んだ。
「みんな…私と一緒に……死んで!」
すると、倒れていた仲間達が一斉に立ち上がった。
「その言葉を…待ってたぜ…!」
「成程…全員ぶち殺し希望か」
戦いを観察する4人もそれぞれスギコの力を推し量ろうとしていた。
「スギコの力がまた増した…底が知れねぇ。あいつの能力の本質は何なんだ?」
コジオが呟いた。
その時、ライコは1人考えていた。
(200万といったところか)
「梅割5杯目…..ぐはっ!」
「ガリ!それ以上は!もう限界を超えてる!」
「バカ言え!命を賭けるって誓ったばかりだろうがァ!!くらえっ!六文屋流酔拳・冷製三点突き!!」
ガリの攻撃がまずスギコに襲いかかった。
「無駄無駄ァ!」
スギコがカウンター気味にガリを鉄扇で弾き飛ばす。
その裏からすぐさまアネンゴが飛んできて強烈なパンチを繰り出した。
だが、それを鉄扇を開いて受けたスギコは、さらにそのパンチを滑らせて懐に入ると、もう1つ取り出した鉄扇でアネンゴの腹を突いた。
「笑止ッ!!」
「うはっ……!」
重い一撃に思わず膝をつきそうになるアネンゴ。追撃にかかるスギコへ向けて、今度はブルーハワイが炎を繰り出す。
「ファイヤー音頭!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」
しかし、スギコの鉄扇がそれを全て空中で消し去った。
「黒糸!」
「貧弱ッ!!」
サエカピがその最中に飛ばした魔術の糸も、もう片方に鉄扇によって切られてしまった。
なおも立ち上がり、アネンゴ達の攻撃は続いたが、スギコに具体的なダメージを与えることは出来なかった。
「まだ無駄だとわからないようね..わかった。そろそろ地獄へおとしてあげるわ」
そう言うと、スギコの纏うオーラが一層強いものとなった。
「300万円投入……!!」
そして、スギコは鉄扇を投げた。それらが自由に空中を舞い、ガリ達を傷つけていった。
「みんなァーーーーー!!」
ツムギの涙まじりの声が響いた。
「ツムギ!全てはあんたの望んだことよ!!」
「うわああああああ!!」
頭を抱えて塞ぎこんでしまうツムギにアネンゴがぽんと手をおいた。
「ツムギ、悩むな。わらわ達を、信じろ」
「だって、アネンゴ様…….」
「必ずお前を救って見せる……」
そう言って抱き締めたアネンゴの背中には幾つもの鉄扇が突き刺さった。
それでもアネンゴは決して弱みをみせず、ツムギが落ち着くまで抱き締めた。
他の者達も、鉄扇を出来るだけそちらへ飛ばさぬよう努めた。
「よし、落ち着いたようだな。そこで待っていろ」
再びスギコの方を向いたアネンゴ達は一斉に走り出した。
「うおおおおおおおおおお!!」
「いよいよ諦めたか!無謀な突撃よ!全く愚かで哀れな生き物よなァ!!」
宙を舞う鉄扇に加えて、スギコの持つ鉄扇がまるで生き物のように、アネンゴ達を切り刻んだ。
「弱いくせにしぶとさだけはある!」
「わらわ達は負けない…..!!」
「やれるもんなやらやってみなァ!!」
4人の猛攻を防ぎつつ、さらに攻撃を与えてくるスギコ。
「今だ!行くぞ!!」
アネンゴの掛け声と共に、4人は縦に並んだ。そして、前方へと向けて走り出した。
「特攻…ってやつか?ナンセンスね!!」
スギコの鉄扇はやまない。それどころか照準を合わせて、まず戦闘のアネンゴを集中砲火した。
「がああぁあああああああああ!!」
「くたばりなァ!」
「わらわはここまでだ…あとは頼んだ…!」
前のめりに倒れこんだアネンゴの身体を飛び越えてガリがスギコめがけて飛びかかる。
その下からサエカピの術が地を這った。
「上下同時!雑魚にしては考えたわね!だがッ!このスギコには効かぬッ!無駄無駄無駄ァ!!」
スギコは、上下同時の攻撃を華麗に両の鉄扇で捌いた。
そして、高速でそのまま放った鉄扇はサエカピを吹っ飛ばした。
「まだだァ!!」
切られたガリはまだスギコへとパンチを繰り出した。だが、それもスギコのカウンターを受けて沈んだ。
「…!ブルーハワイはどこだ!?」
「ここだァ!!」
倒れていくガリの背後から突如姿を現したブルーハワイの渾身の一撃がスギコへ向かった。
「小癪ッ!!」
さすがのスギコも、咄嗟に身を捩り、躱すのが精一杯だった。
反転したブルーハワイがスギコへ向けて猛ラッシュを繰り出す。
それに応戦するスギコ。その圧倒的なスピードとパワーはブルーハワイを凌駕し、彼を吹き飛ばした。
「終わりよ…もうあんた達は立てない…..」
勝負あり。4人を倒したスギコはにやりと笑った。
だが、スギコはこの時、気づいていなかった。
ブルーハワイは、自身の裏をとったのだということを。
そう、飛ばされた先……そこには…….
「覚悟とは…暗闇の荒野に進むべき道を切り開くことだッ!アネンゴ、ガリ、サエカピ、そしてブルーハワイ…お前達の覚悟は、この登り行く朝日よりも明るい輝きで道を照らしている。そして我々がこれから向かうべき正しい道をもッ!!」
「………….マルス!!バカな!こいつ、初めからそれが狙いだったのか!」
囚われのマルスがいた。その歪みに触れれば、彼は解放されるッ!!
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