プロDD・M ~その510

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

 スペは風になった。
 そのスピードで打ち付けられていたラルクマを救出した。
「まだ息はある…生きてて良かった」
「今は….な」
「なっ!?」
 だが、そんなスペの横に、既にユケはいた。
「俺の深夜高速についてくるとは…!」
「ふっ…ついていったのではない。我が力は、全てをなるようになる、なすようになす。つまり、この世界の全てが俺の為に微笑む能力。誰も勝てぬ、逃げられぬ」
 スペが右へ動こうとしたが、偶然・・手を出したユケの手に切り裂かれた。
「がっ…..」
「ほらな…こういうことだ」
(意識が…だめだ…送り届けねば…俺は..あの人のもとへ…)
「ふん、何をしても無駄だ。全ての状況は俺に有利に働く…ほらな」
 スペがラルクマを抱えて目指した場所。そこにセルーはいた。
 だが、それこそがユケにとって有利な状況であった。
「労せずしてセルーを捉えられる、助かったぞ、雑魚どもが」
「ユケ…….てめぇ」

 マルスの目の前で、セルーは血まみれになっていた。
「セルー……」
「来るな…マルス…こいつの能力は危険だ….」
 マルスは見ていた。何をしても、何をどうやったところで、ユケには届かなかった。
 全てがユケに味方をしているようだった。
「最初はほんの瞬きほどの一瞬しか使えぬ能力だった。しかし、女神の力が流れ込んでくるにつれて、2秒…3秒と長く世界を操れるようになった」
「くそぉぉぉぉ」
「かつてはちと手を焼いたが、セルー!貴様の力ももはやまったく無力なものよ!」
 セルーが何度目かの拳を突き出す。それは大気をねじ曲げるほどの豪腕だった。
 だが、それでもユケの前には無力だった。
「無駄だ。これで我が怨敵、セルーも死んだ」
 ユケの指がセルーの心臓に突き刺さっていた。
 鍛え抜かれた肉体、力も技も全ては無意味だった。
「に…逃げろ…マルス…..や…やつに….近づ…くな……」
「セルー!!」
「ま…..間合いを..とれ……距離を….離れろ…離れるん….だ…..かなわ….ない」
 ゆっくりと、ユケが近づいてくる。
 マルスの目には、その後ろに倒れているセルー、ラルクマ、スペの姿が映っていた。
「ユケ」
「ほぅ…逃げずに向かってくるのか。せっかく仲間達が俺の危険性を命がけで教えてくれたというのに」
「近づかなきゃ、てめぇをぶちのめせないんでな…..」
「ほほぅ…..では十分近付くが良い」
 互いの距離が少しずつ縮まる。
 先に仕掛けたのは、マルスだった。
DDパンチ!!」
「ふん!!」
 マルスの一撃をユケがたまたま放った蹴りで防ぐ。
「無駄だ。この俺の能力な何人にも破ることは出来ん。俺が何をどうしようと勝つ運命なのだからな」
 マルスは自身の右手へ走った痛みを堪えながら、次の一撃を放った。
DDラッシュ!!」
「ふはは!!」
 ラッシュに行く前にローキックがマルスの足を止めた。
「ぐっ…..」
「だから、無駄だといっただろう?」
 ユケはマルスに先に攻撃をさせて、その様子を楽しんでいるかのようだった。
 マルスの左足に激痛が走り、その腿は腫れていた。
「貴様のDD力とやらに俺のWhatever happens,happensがどれぐらい効くのか試してみたかった。ま、試すほどでもなかったようだが」
「試すってのは、傷にもならねぇ撫でるだけの事を言うのか?2万円もしたズボンは破れたがよ」
「どうしてヲタクというのはこう負けず嫌いなのだ?くだらぬ挑発に乗ってもうちょっとだけ試してやるか」
 この時、初めてユケは自ら踏み込んだ。
 しかし、百戦錬磨のマルスは、それこそが狙いだった。
「ぐふぇっ……..な……..ぜ…….」
 気づくと、ユケの腹を、マルスの拳が突き抜けていた。
「お前は…最後の一手を誤った」
「がはっ…異物が…….」
「そう、お前は世界を手にしたつもりだろうが、俺の手にはある…..別次元の女神の力がッ!!!!」
「や…..やめ……」
 ユケの腹を貫いたマルスの拳が光を放っていく。
FOOL THE WORLD世界を騙す
「がぁぁぁぁぁあああ!!俺の集めた…..女神のち…..かぁ…..らぁ…….」
 ユケから凄まじい量のエネルギーが放出され、その肉体は灰となっていく。
 そして、世界に潤いが戻った。
 マルスは、勝利に喜ぶこともなく、仲間のもとへと駆け寄っていた。
「セルー…ラルクマ…スペ…」
 セルーはふらふらと立ち上がり、ラルクマとスペを抱えていた。
「マルス……よくやってくれたな」
「みんな…大丈夫なのか?」
 マルスの問いにセルーは首を振った。
「だめだ、必ず俺がみんなを助ける!」
「無理だ…この傷では助からねぇ…..」
 その時、近くの建物が壊れ、中から謎の機械が現れた。
「なんだ…これ..?」
「生命維持装置?」
 その時、マルスの身体が光り出した。
「どうやら役目を果たして、元の時代に戻るみたいだな…マルス」
「待て!俺はまだ!」
「ふふっ…あの機械が動けば、もしかしたら、また会うこともあるかもしれないな」
「セルー!ラルクマ!スペ!!」
「マルス!!俺達は眠る!!だが、いつどこで出会ったとしても、俺達は、仲間だッ!!」

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