プロDD・M ~その512

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

「アッキーさん…何やってんすか」
「….おう、ライコか。仕事熱心だな。こんな所まで来るなんてな」
 ここは秘境。アッキーは月に遺された足跡の主を探して、ここまでやって来ていた。
「まぁ、仕事ですからね。雇用主がしっかりしてくれないと、僕も困るんでね」
「で、何かあったのか?ここまでわざわざ足を運んでくるって事は?」
「ああー…そうなんすよね。実は……アッキーさんが不在の間に、コイケが反旗を翻しました」
「何だと!?」
 アッキーは思わず手に持っていた手羽先を落とした。

 白の拠点にて、終結した構成員達、それを前にコイケが壇上に立つ。
「敬愛する白の諸君….我々白は、アッキーの指揮のもと、戦いに負け続け、ついに最後のこの拠点を残すのみとなっている。ここで我は皆に問う。それはなぜだ?我々が最下位の軍団だからか?女神の力が弱いからか?無力に滅ぶ運命にあるからか?」
 皆の沈黙を突き破り、コイケがさらに叫ぶ。
「否だ!!」
 全員がコイケへの注目を高める。
「かつて古の大戦においてあらゆる女神を支持する様々な種族が争う中、我々は戦い、そして生き残った!かつてこの島全土をすら白が占めていたのはなぜか?我らが暴力を得意とする種族だからか?最善管理組合のような異形の術もなく、ピンチケ集団のような身体能力もない我々がこの島を支配できたのは、戦いに特化していたからか、断じて否だ!」
 頷く構成員達が増えていく。
「我らが生き残ったのは弱者だったからだ!いつの時代どこの世界でも強者は牙を、弱者は知恵を磨く。我らが今、なぜ追い詰められているのか、それは知恵を磨くことを放棄したからに他ならない。我らが専売特許だdったはずの知略を、戦略を、生き残るための力を、放棄したから、それがこの惨状だ!」
 周囲から、そうだ!という声が聞こえる。
「皆の者、答えよ。なぜに頭を垂れるのか?繰り返そう、なぜ頭を垂れるのか?我々は弱者だ、今もなお。昔、そうだったように、何も変わっていない。アッキーは間違った!まるで強者であるかのように、力を振るった!弱者が強者を真似て振るう武器はその本領を発揮しない!だが、我らには知恵がある。学習と経験から生じる未来予知にすら到達しえる知恵を持っている!繰り返す我らは弱者だ!」
 皆のボルテージが最高潮に上がった時、コイケは最後の言葉を放った。
「我々は弱者であり、そして、勝者だった。いつの世も強者であることに、あぐらをかいた者の喉元を食いちぎってきた誇り高き弱者だ!私、コイケは、新たな白の党首として、ここに立つことを宣言する!!」
 歓声が上がる。
 そこにいた皆が、コイケを新たなリーダーとして認めた。
 アッキー不在の間のクーデターは見事に成功したのだった。

 そのクーデターの様子を見て、高笑いする者達がいた。
「よくやった、コイケ」
「お前が持ちかけた計略、見事に成功したようだな」
「ふっ、そのようですね。これで今日はうまい酒が飲めますよ。これで白も我らが傘下。末端の連中はその事すら気づいていないですがね」
「それも面白い。生きるも死ぬも、我らの手中というわけか。悪どいな、神父。お前の考えそうな悪巧みだ」
「褒め言葉と受け取っておきますよ、レジェンド」
「レジェンドちゃうわ!」
「北の悪美烈駆、東の状況軍団、南の灰かぶり、西の白……四大組織、磐石の体制ですね…..後は傘下外の組織を狩っていくだけ…..」
 この時、神父は思いも寄らなかった。
 この組織にヒビを入れるたった1人の狂人が存在していることなど……。


「ひーっひっひ、うえへへへへ、アミダで決めたよ。今日は北に行く日だ」
「待て、カエル」
「…….」
「そう勝手に動き回られては困る」
「…俺に指図するな」
 止めるメグタンを、カエルは睨み付けた。
「まぁまぁ…..彼にも彼の考えがあるさ」
 それをなだめるライチ。
「ちょっと、ライチ。甘やかしてはダメよ」
「そう言うな。彼は我々の切り札なんだ。多少は融通してあげよう」
 そのやり取りを見ていたカエルは、にやりと笑った。
「さすが話がわかる。それに比べて、やはり女はダメだな」
「何!?」
 再び一触即発の空気になるが、またライチがなだめるのだった。
 そして、カエルは悪びれず、ふらっとどこかへ出ていってしまった。

 一方、北方にある、かつて北極星の拠点だった場所を改造したヒロマルハウスでは…。
「ふぅ~~…今日もいい天気でおじゃる」
「ヒロマル様……新しい女をお連れしました」
「ほほぅ…上玉でおじゃる…気に入った、名をなんと申す?」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?