プロDD・M ~その526
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
アッキーとコイケの戦いを密かに覗き見するものがいた。
遊戯機構会長ケイ。春霞のケイとも呼ばれたその男は、まさに命が燃え尽きる手前だった。
(春霞に続き、遊戯機構の女神からのエネルギーの供給が消えようとしている……ふ…このまま座して死ぬのを待つならば、走馬灯を…..)
彼は焦っていた。故に、リスクを冒してでも、この戦いへの監視を行った。
(かなり強固な阻害防壁…覗くだけで、失敗すればこちらもただでは済まないが、僅かな隙間を縫って、俺の目を通すッ……!)
「ここに来て…さらに新たな力を見せてくるとは…さすがはアッキー……」
コイケは口周りの血だけ拭うと、立ち上がり、アッキーを強く見据えた。
アッキーも油断せずに、再び構えた。
一瞬の静寂の後、2人は同時に前へと突き出した。
互いの身体が激しく衝突する。
「…..!!」
その叩き合いは、コイケが上回った。
ケイは感じていた。
「この集中力…皮肉な事にアッキーの強さが、コイケの底力を目覚めさせた」
だが、ここで、再びの正面衝突の間に、アッキーが身体をさらに深く潜らせた。
「…..!?させるかッ…!!」
コイケがそこに照準を合わせる。だが、それは虚像!
「officialfake!!」
つられたコイケの視線が下へ行く。
だが、アッキー本体は、コイケの頭上に飛んでいた。
「あの野郎、気持ち良くofficialfakeを決めやがった…!」
(完全に空いた!勝つのはやはりアッキーか!?)
ケイはそう思った。
「ライチ…ここまでやる男だったとはな…」
ヨシケーの刀が意識の外から伸びてくる。
それをライチの足が逸らす。
「おっと…顔はやめてくれないか。全世界の女達が悲しむ」
「ちっ、女を利用しているだけだろうが」
「女を騙しているわけじゃないさ。女ってのは寂しい生き物。一人じゃ生きられない女が世の中にたくさんいる。そういう女を助けて金をもらう、当たり前の事さ」
「生意気なことを……」
「それはひがみかい?」
「そうかもなッ!!」
刀と蹴りが交錯する。
その衝撃で周囲の壁が割れた。
その壁の向こうに人影が見える。
「ふぅ~….ちょろちょろと目障りな連中だ」
「同感だ」
「見えるか!麻呂の得意の分身の術ゥ」
大量のヒロマルが、カエルの周囲を回っていた。
それらが全てが実体でもあるかのようにカエルを襲う。
「Amazing Glow!!」
しかし、カエルは慌てず、ぺろりと唇をなめると、ふっと身体を動かした。
かと思うと、ヒロマルの分身が全て消滅した。
「な、何をしたでおじゃる!!?」
「Parade's End」
「その力……いったい何人の罪なき人間を手にかければ…どれほどの恨みを買えば…..」
「どうしたの?もう終わり?」
「ふっ…ふふひひひ」
笑うヒロマルの上に、カエルは飛び乗り、すぐさま顔を蹴り飛ばして宙返りしてから着地した。
転がったヒロマルをうっとりとした目で見ながら言い放つ。
「僕が絶望させてあげるよ♪」
その表情に、ヒロマルは生まれて初めて恐怖していた。
(人間の暴力ってのは、100%出し切ることなんてんできっこないはずでおじゃる…)
「さぁて、どう料理してあげようかなぁ」
(この男……こいつは……こいつはァ…….正真正銘のォ…….)
「あれれ、逃げるのかい?」
ヒロマルの足は自然と、カエルと逆方向へと向かっていた。
身体が勝手に逃げるのだ、心の底からカエルと言う存在に恐怖しているのだ。
「待~て~♪」
「ひっひっはっはっ」
「逃げたって無駄だよ。もう君は、僕の射程に入ってるんだから」
「あっ、ああ~!!」
ヒロマルは身体の力が抜けるのを感じた。
(痺れている…..動かせない!!)
「Paralyzing。ほら、君の足の動きだけ麻痺させた。ちゃんと痛みを感じられるようにね」
「はぁ…はぁ…..」
「味あわせてあげるよ」
その時、ヒロマルはかつてない幸福を感じていた。
「愛がない故に美しい。美しさがない故に愛がある。まさに聖人だけが持てる矛盾!」
「はぁ…はぁ…たまらないねェ…ふふふ」
「待っていた……..お前みたいな変態を」
ヒロマル、消滅。
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