プロDD・M ~その519
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
セルーの強さは凄まじかった。
その場にいた最前管理を全員蹴散らし、マルス達を救出したのだった。
「これが古代の..特区の戦士の力……」
それはマルスの目には眩しく映り始めていた。
「なぁ、マルス。本当に俺たちの仲間に入らない気か?」
「俺はDDだ。この時代の..いや、この場所にとどまるべき人間じゃない」
「?」
うまく聞き取れなかったスペは、それ以上は聞かなかった。
だが、話を始めた。
「セルーさんの昔の話をしてあげようか?」
「長話はごめんだ」
「すぐ済むって。…初期の特区の戦士達は、人々を守らなかったんだ」
「…え?」
スペの話によると、当初特区の奴らは好き勝手に暴れ、力なき人々から、最前管理組合と同じように搾取をしていた。
しかし、ある日、路地裏にボロボロの少年が現れた。
彼は、人々に拾われ、恩を受けた。それを返すため、彼は成長して特区の戦士となり、それを束ねた。
「彼は見返りを求めない。なぜなら、既にもらっているから。彼はずっとこの場所を守ってきた」
「まさか、その男って……」
マルスは歩き出した。
その足は自然とセルーへと向かっていた。
「セルーさんよ、1つだけ聞かせてくれ。望みも要求もなく、何の魂胆があって、特区を守ってきた?1人でかっこいい事をして世間が誉めてくれるとでも?」
「ロマンだよ」
「な…?」
「それがロマンというものだからさ」
「……ロマンだと。ロマンなんて」
マルスは激しく動揺していた。そして、そのままその場から立ち去った。
翌日、セルーは酒を飲んでいた。
「ふっ……二度と来ないかと思っていたぜ?……マルス」
「何か問題でも?こないだもらった酒がうまかったから、また飲みに来ただけさ」
互いにニヤリと笑う。すると、その後ろの席には…
「だとよ、オーハシ」
「もっとうまい酒なら他にあると思いますね」
こうして特区の戦士達は揃った。
最前管理組合への反撃の幕が開けた瞬間だった。
セルー達は最前管理組合に対抗すべく、壁の外の勢力をまとめ始めた。
マルスもオーハシも目覚ましい活躍を見せ、セルー達の壁の外統一は10年は早まったと言われている。
だが、順調すぎたが故に虎の尾を踏んでしまった。そう、その女に出会ってしまった。
「断る。私はそういう争い事には興味がないんだ」
「そう言わずによ」
「しつこい男は嫌いだよ」
次の瞬間、男の身体は燃え尽きた。
「てめぇ!この女ァ!うぎゃああああ」
一瞬の出来事だった。オーハシがつれていた手下達が焼き尽くされた。
「ば、化け物…..」
「はぁ……女一人捕まえて、化け物とは…..失礼な男だねぇ」
オーハシの命が散りかけた瞬間、拳が飛んだ。
「DDパンチ!!」
「……!!」
「大丈夫か!オーハシ!」
「てめぇ!マルス!今いいところだったんだ、邪魔すんな!」
「言ってる場合かよ!」
マルスはその女の名を知っていた。正確には通り名を知っていた。
その女、原点にして頂点。原初よりこの世界に君臨する魔帝。
「消し炭の魔女……..!!」
「…私も有名になったもんだね」
周囲に炎が起こる。マルスとオーハシは懸命に抗った。
「DDパンチ!」
「林檎キック!」
しかし、消し炭の魔女の圧倒的な力の前に、地に伏すしかなかった。
「人の庭を荒らしたんだ。責任はとってもらうよ」
「待て」
「……..誰だい?あんた」
「俺の名はセルー。こいつらの頭だ」
「ボスが手下の不始末の責任を取ろうってのかい?」
「そういうことだ」
次の瞬間、炎がセルーを焼いた。
「ぐっ…..」
「根をあげても構わないよ。そしたら、後ろの奴らも全員死ぬだけさ」
その言葉を聞き、セルーはにやりと笑った。
「なぜ笑う…..?」
「食事は済んだか?明日の朝まで燃やし続けるには、準備が必要だと思うぜ?」
「……ふっふふふふ、上等」
そのロマンは、マルスの目には眩しく映った。
彼は、セルーの背中を見て、大きく成長した。
一方、オーハシは、この時、ロマンの限界を感じた。
消し炭の魔女の圧倒的な力を見て、リアルに目覚めた。
「どうした?帰らなかったのかい?」
「消し炭の魔女様……いや、パイセン!俺に力を教えてください…..!」
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