プロDD・M ~その515

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

「ふぅ~、終わったな。コイケの奴、よほど俺が目障りらしい」
 くいっと着ていたシャツを直すアッキー。その周囲には、刺客達の屍が積み上がっていた。
(腑抜けた….?冗談じゃない。この男、さらに強くなっている……)
「どうした、ライコ。裏切りの算段はやめたのか」
「いえ、俺はアッキーさんについていきますよ」
「ふっ….それでいい」
(契約が有効な間はね…)
「さて、俺はこれから北上する」
「!?コイケは放っておくんすか?このままだと後ろから狙われ続けますよ」
「ふっ…くくく…ライコよ、俺がこの程度の刺客にやられると思うか?」
 ライコは首を振った。なにしろ、アッキーは、
(あの戦いの中で、口の手羽先を落としていない…恐ろしい男だ)


「女達が減っている…だと?」
 ライチが報告を受けたのは、カエルがヒロマルの弟達1万人を葬ってすぐの事だった。
「現場の痕跡から、犯人は悪美烈駆で間違いないかと」
「カエル…だから言ったのに…こうなっては仕方ない。全構成員に通達しろ。北へ向かう」


「御兄様。やったでおじゃる。ライチパーティーが動き出したでおじゃる」
「よほほほ、よくやった、ヒロ12,005号。優秀でおじゃる。配下の女に手を出せば、必ずライチパーティーは動き出すでおじゃる」
 そして、捕えた女の前にヒロマルが立った。
「カエルの弱点を吐け」
「し…知らない」
「ならば、痛みを与えるでおじゃる。やれ」
 ヒロマルの指示で、悪美烈駆の構成員が呼ばれた。
 拷問の指示に、構成員は少し躊躇が見えた。
「お前、名は?」
「イオリです」
「よし、イオリ。麻呂が直接、お前に伝授してやるでおじゃる」
「は、はい」
「いいでおじゃるか、人に痛みを与える時に決して相手の痛みを思いやるな。痛みを考え楽しむのはこちらの役目でおじゃる。痛みを与える時は痛みを与える喜びを噛み締めろ。それが相手に対しての最高の思いやりでおじゃる」
 そういって、ヒロマルは、イオリに器具を手渡した。

「悲鳴が…聞こえるな」
「…….」
「正直、好きじゃない」
「…….」
「喋らないな」
「………無駄だから」
「そうか」
 月明かりの下、ヨシケーは刀を研いでいた。
 その横でマキゲは、大剣アネンゴころしを磨く。
 2人の間に、特に意志疎通はなかった。
 しかし、次の瞬間、互いの側に真っ二つになった暗殺者の死体が転がった。
「今、揉めているのは、ライチパーティー…だったな」
「…….だけど、こいつら、男よ」
「ふむ……」
 ライチパーティーの戦闘員はほとんどが女。それは常識だった。
 その時、ヨシケーは、咄嗟に後ろに飛び退いた。
 地下から、強烈な力を感じたのだった。
 地面が割れ、溢れる力の奔流。
 そして、その割れ目から男が飛び出した。
「…..やはり酒場のごろつき程度では相手にならないか」
「…….この匂い…知っている…」
「へぇ、天下のヨシケーに知られてるとは光栄だね」
「あの男の血を引くものか、面白い」
「天下五拳ガリ、行くぜ!」
 2人の剣と拳が交錯しようとした時、何者かが間に入り、制止した。
 そして、それをけしかけたと思われる男が遠くから言った。
「ガリさん、病み上がりなんだから、おとなしくしててくれって言ったじゃないですか」
「へへ、わりぃ、ソウチョウ」
 敵が増えたが、ヨシケーとマキゲの表情は変わらなかった。
 だが、それは戦いを制止した男の力を見るまでだった。
「あの時の続きをやりに来たぜ」
「愚かな…」
 ヨシケーが呆れたように口にすると、ソウチョウは不敵な笑みを浮かべた。
「ふっ、これを見てもまだ余裕を保ってられるかな?やれ、ポッター」
beyond control制御不能


「あら?どうしたの?コムギ」
 消し炭の魔女は、コムギの異様な雰囲気に気付いて話しかけた。
「疼くんだよ…このタトゥーの跡がな…」
「自分で入れたのではなくて?」
「ふっ…..」(これは誓いの印さ……)


(恐ろしい…俺は心底この男が恐ろしい…)
 ライコは、アッキーの様子を観察しながら、そう思っていた。
 白を追放されたアッキーは、白の女神から受ける恩恵もなくなっていた。
 だが、それでアッキーの力が衰えるような心配は一切なかった。
(この男…北上する過程で、また別の女神の力を自分に引き入れやがった…..類希なるDDの才……!!)
 アッキーは笑いながら、女神の力が込められた栞を、自らの懐に入れた。
(これほど強いDD力を持っていれば、女神の方から近づいてくる……いったいこの男はどれほどの業を背負っているのだ)

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