プロDD・M ~その518
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
「かっかっか、断られちまったな。それにしても今年は人材が多くていいねぇ」
セルーは笑いながら、この日は帰っていった。
この時、既にセルーは最前管理組合の打倒へ向けて人材集めに奔走していたのだった。
その頃、別の場所では。
「特区に入らねぇか?オーハシ」
「それにしても意外だったな。もっと下っぱが来ると思ってた。特区最強の戦士、セルーさんが俺を訪ねて来るとは」
「何を言ってるんだ?俺はセルーさんに仕えているクリノブだ。セルーさんはプロDDを名乗るマルスに会いに行ったぞ」
「何?」
オーハシ。特区に近い林檎区をあっという間に制圧した傑物。
彼は当然、特区からの誘いが来るものだと思っていた。
しかし、自身を差し置いて、セルーがマルスを勧誘に行ったと聞き、興味を持った。
「大体の話はわかりました。俺はこれだけ覚えておけばいいですね」
「あ、ああ」
「セルーさんが俺を差し置いて認めた男が、マルスという奴だって事」
その後、マルスはスペとラルクマに付きまとわれていた。
「おいおい、お前らが何をしようと勝手だが、トイレぐらい1人で行かせてくれ」
なんだかんだと言いながらも、次第に特区に興味が出てきたマルス。そんなある日、マルスは突如、武器を持った集団に囲まれた。
その男達が道を開けると、間を割って、バイクの男が現れた。
「考えたんだ。なぜ俺が認められなかったのかを。答えは簡単だった。俺は林檎区を制圧したが、お前とはやりあったことがなかったからだ。だから、今、やってやるよ。お前がマルスか?」
マルスはふーっと息を吐くととぼけた。
「こいつだ」
そう言って、マルスはスペを指差した。
「違うだろ!マルス!」
「何かの間違いだろう、俺たちはただの散歩同好会だ」
ラルクマも空気を察してとぼけた。
しかし、オーハシはそれらを無視してナックルをはめた。
「悪いな、俺は冗談が嫌いだ。逃げようとしても無駄だぞ。俺はケンカが大好きでね」
そう言うと、オーハシはマルスを思いきり殴り付けた。
その拳を片手で止めるマルス。
「そうだ、それでいい。興奮するぜ。これが決闘ってやつだ」
それに対し、一旦、距離をとり、手を指すマルス。
「外してから言え、カッコ悪い」
「お前もはめたらいいだろ」
次のオーハシの一撃はマルスの顔面を捉えた。
しかし、すぐさまマルスの拳がオーハシに返る。
「DDパンチ!…..つけなくても変わんねぇだろ?」
2人はそのまま激しく打ち合った。
周りを囲んだオーハシの手下達はビビり始めていた。
そして、スペとラルクマも2人の戦いに見入っていた。
「すげえ戦いだ」
「あのオーハシって野郎もなかなかやるぜ」
しばらく打ち合った頃、他の連中が、さらに周りへとやってきた。
「何か騒ぎが起こっていると思えば、野蛮な連中の遊びのようですね」
「や、やべぇぞ…こいつら!最前管理組合だ!」
それを見て蜘蛛の子を散らすように逃げていくオーハシの手下達。そんな中、オーハシは組合員に向かっていく。
「ちょうどいい、最前管理組合のレベルがどの程度なのか前から知りたかったんだ」
「野蛮人のくせに、我々を測ろうとするとは愚かにも程がある」
その横でマルス達は考えていた。
「やべえな。セルーさんもいない、この状況では…」
「もうこれはあれしかない」
そんな3人にも迫ってくる組合員。
「あれか…そうだな」
「野蛮人のくせに、奥の手でも持ってるってかい?」
「ふふふ…..逃げろ!」
「にげるんかい!待ちやがれ!」
「ちっ!あの野郎!」
それを見て、オーハシもマルスを追いかけ始めた。
「逃げきれたか?」
「てめぇら…..」
「お前もついてきたのか、オーハシ」
「立てよ、マルス。続きをやろうぜ」
「まだやるのか?」
「認めねえよ。特区最強のセルーさんが認めたのが、たった3人グループのリーダーだって?」
スペとラルクマはひそひそと話し始めた。
「おいおい、俺らマルスの手下みたいになってんぞ?」
「まぁ、最近、後ろをついて回ってたからな」
そんな声は聞こえず、マルスは、オーハシの言葉に笑って返した。
「…たった3人。確かにたった3人だけだが、100人を捨てて残った3人だ。少なくとも、こいつらは俺について逃げてきただろ?」
オーハシの勘違いを利用したこの言葉は、彼の心に刺さった。なぜなら、彼の手下は誰一人としてこの場にいなかったからだ。
と、ここでスペが口を挟んだ。
「マルス、かっこいい台詞の途中で悪いんだが…」
「かっこつけたつもりはなかったが、かっこよかったか?」
「俺たち、逃げ損ねたみたいぜ…」
気付くと周りは再び囲まれていた。
「観念しな。お前ら少し暴れすぎた。秩序の為にここで死んでもらう」
(敵の数が…..多すぎる…..!)
そんな時、男はやって来た。
「おいおい、壁の外まで最前管理組合が出張ってきたんじゃねぇか」
「セルーさん!」
スペが叫んだ。
「あれが…セルー…!」
オーハシもその方向を見た。
そして、マルスは、
「セルーさん、助けてもらったからって特区軍に入るとは言ってねぇぞ」
「ふっ、助けに来たんであって、お前の点数稼ぎに来たんじゃねぇよ。俺がここに来た理由は、お前らがこの特区で危険に晒されたからだ。ヲタクってのは、真実より体面が大事なんでね。誰かが特区で襲われりゃ俺は助けに飛んでくる。それが特区の戦士だ」
「セルー!お前の首を我々は欲しているぞ……!」
「敵の数なんてわけないぜ..お前らが俺の首を欲しがっているのは知っている。お前らにとって絶好の機会だろう。そんなことはわかってて来た。なぜなら、それがロマンというものだからさ」
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