プロDD・M ~その564
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
群青王国と遊戯機構がぶつかってる頃、走馬灯を巡る戦いは終わりに近づいていた。
「多くのヲタクが既に散り、走馬灯のエネルギー源となって消えていった」
ソウチョウが呟くと、その横に構えるコーが不思議そうに尋ねた。
「どうしてご主人はそんなに走馬灯に詳しいにゃん?」
「……はて、どうしてだかな」
「にゃん…?」
はぐらかしたソウチョウに、コーが質問する前に、走馬灯が激しく光を放ち始めた。
「いよいよ…..か。もはや窮屈な徒党を組む必要もなくなってきた。これから始まるのは本当の潰し合いだ。行くぞ、コー」
「ひーひゃひゃ!さすがはパイセン…..圧倒的だァ!」
オーハシが狂ったような歓喜の声をあげた。
消し炭の魔女は、周囲の敵を全てを灰とし、己のパートナーであるノコッチだけを優しく抱き起した。
「何かが…来る」
その時、ヨシケーが向かって飛んでくる何かを捉えた。
それを斬ろうとしたヨシケーだったが、その出力の大きさに咄嗟に身を躱した。
そして、地面に落ちたそれを見て驚いた。
「コイケ!?」
「くふ…まさかここまでの力があるとはね…」
立ち上がったコイケの目は、ヨシケー達を見ず、ただ追ってくる何かを見つめていた。
「来なさい…シャクゥ!!」
「しぶといな!コイケェ!!」
飛んできたシャクの拳とコイケの拳がぶつかり、周囲に大きな衝撃が伝わった。
「ニシ……いや、ニシではないのか。いずれにせよ、せっかく逃げ切ったのに、戻ってくるとは愚かなものよ」
ヨシケーの言葉にようやく周囲を確認するシャクとコイケ。
「どうやら熱くなりすぎていたようねィ」
「そのようですね」
だが、警戒したのは消し炭の魔女だった。
(明らかに先程までとは違う強い気…..ふふ…..面白いじゃない)
現時点で残っているヲタクは、女教皇の消し炭の魔女、太陽のトンジルスキー、正義のソバシ、技のヨシケー、塔のガリ、恋人のライチ、月のポッター、審判のコイケ。既に半数以上が失われていた。
「だけど、まだ多いわね」
すると、何かに導かれるようにポッター以外のヲタクも集まってきた。
「おや、皆さんお揃いで」
「ライチ!これは厄介だゾ☆」
ライチの登場に警戒を強めるトンジルスキー、それも無理はなかった。
(ライチ…全ての女に対して特効の力を持つ…それは私とて例外ではない…)
消し炭の魔女に唯一対抗しうるとトンジルスキーは判断していたのだ。
「「少し減らすか」」
消し炭の魔女と声が被ったのガリだった。
「どうやら好戦的なヲタクがいたようね」
「そっちこそ…な!」
ガリはくいっと手に持った酒を飲み干すと、攻撃を仕掛けた。
「六文屋流酔拳・梅割四杯目!からのォ!冷製三点突き!!」
周囲にも伝わるほどの凍てつく冷気を帯びた突きが、消し炭の魔女を襲う。
「甘い!その程度の冷気では私の炎は貫けない!業火爆炎掌!!」
2人の激突を皮切りに、他のヲタク達も戦いを始めた。
「やれやれ、NDK。これは見ているだけでいいのかな」
「ええ、ソバシ。力は温存しておいて損はないわ」
ソバシ達を除いて、戦いは激化した。
「ナイットン!!」
トンジルスキーの肉体が弾丸のように跳ね、敵に迫る。
「ふふ、僕が男には無力だと思わないことだね」
ライチはそれをするりと躱して、反撃の蹴りを決めた。だが、それも分厚い体に阻まれた。
「なにそれ、反則。とんでもない防御力だ」
「消し炭様の盾となることで、この肉体は喜びを得るんだゾ☆」
「ふっ…自分が喜びを得ているようでは温い。女性を喜ばせてこそ、男は映えるのさ」
戦いの中、脇で見ているソバシに、今度はヨシケーが斬りかかった。
「見ているだけとはつれねぇな」
「おっと…危ない。NDKに当たったらどうするの?」
「知るかよ。ここは戦場だ」
「何かそろそろ決着がつきそうですにゃ?」
「見えるか、コー。もうすぐ走馬灯は具現化する。そうすれば、ようやく手が届く」
「でも、ご主人。ポッターは行方不明だし、パスが切れちまってますにゃ。召喚されたヲタクと契約しないと、中には入れませんにゃ」
「コー。感じないか?」
「ご主人…..?…….にゃにゃ!これは!」
コーは、ソウチョウの周りに蠢く闇を見た。
「お前を…吸って……復活……」
「いまだ生に執着するか、カエルよ。いいだろう、契約だ」
「け…い…やく…..?」
「もはや思考も途絶えたか。まぁいい。すぐに思い出す。体はそこのを使えばいい」
そういうと、ソウチョウは、コーを指した。
「にゃにゃにゃ!にゃにを言ってるんですか!ご主人!」
「安心しろ、お前が消えてなくなるわけじゃない。ただ少し変なのが混じるだけだ」
「にゃーーーーーーーー!!!!」
ヲタクを失い、フィールドの外に弾き出されていたセルーとツムギは、偶然、ソウチョウがカエルと契約する現場を目撃していた。
「まだ…生きてたの……」
「あ…あ…..なんて邪悪な…….醜悪な気配…….」
ツムギは驚いた。これほどまでに怯えたようなセルーの姿は見たことがなかった。
「ええ…恐ろしい。なんて悍ましいの、カエル…..!今度こそこの手で完全に消滅させて…..」
出ていこうとするツムギをセルーが掴んで止めた。
「なぜ止めるの!?」
「ダメ…だ….あれは…..次元が違う…..」
「どういうこと?カエルは所詮手負いよ、一度勝ってる。私達が2人でかかれば…」
「違う!そっちじゃあない!あの男、ソウチョウ…..あいつは俺達に気づいてた。だけど、見逃したんだ!俺達が…取るに足らない存在だから!!」
「!!」
「行くぞ、コー。いや、カエルか。今宵、走馬灯が、そして、歴史が変わる」
「ふぅへへへへはぁ!復活したァァァァ!礼を言うぜェよォ!……にゃぁ」
(待っていろ…スズハラ……)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?