プロDD・M ~その503

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

初動
 突然、背を向けたダ・サイゼン・サク・ジャンパーは、奇妙な動きをして、マルスの肩に両足を乗せた。
 そして、そこから体重移動でマルスを投げ飛ばした。
「ぐあっ」
「まだまだ行くぜ!俺のジャンプ!」
「くそっ!」
 その異常な動きにマルスは翻弄されていた。
 そして、ジャンパーの異常な動きを支えるのがその肉体だった。
 蛙のように発達した手足がそれを可能にしていた。
(これが、女神の力を過剰摂取したものの末路……)
「どうした?その程度か、ピンチケども。壁子を突破したぐらいで調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
「くっ……」
 再び後ろ向きに身体を浮かび上がらせたジャンパーは、そこから今度は身体を捻らせ、蹴りを放ってきた。
 異質な攻撃にマルスはガードが遅れた。
(まずい……!!)
「死ねッ!」
 その時、太い腕が、ジャンパーの蹴りごと吹き飛ばした。
「ぶえぇ!!」
 その腕の主の名前をマルスは叫ぶ。
「セルー!!」
「ナンバーズに出会ったら、1人で対処するなって言っただろ?マルス」
「悪い!助かった!」
「ふっ!俺とお前は盃をかわした義兄弟なんだからよ!」
 立ち上がったジャンパーは2人を睨み付けた。
「てめぇら…!この俺をなめんじゃんねぇ!!」
 周囲に冷気が走る。
「ふん、いまさら小細工を」
「黙れ!お前を討ち取れば終わりよ!シャキ!シャキッ!かき氷!
 ジャンパーの冷気を纏った飛び蹴りがセルーを襲う。
 だが、セルーはその只中を、真っ直ぐ拳を打ち込んだ。
「うるぁ!!」
「へぶしっ!!」
「俺には通用しねぇッ!!この拳一本で十分よ」
 マルスは素直に凄いと思った。学ぶべき力がここにある…と。
「マルス、安心するな。まだだ」
「!!」
 倒したかに見えたジャンパーだったが、なんと再び立ち上がっていた。
ギリ耐えジンセー…….
(これが太古の戦士達の執念なのか…?)
 すると、そんなマルスの様子を見たセルーが自身の肩へと促した。
「乗れ!マルス!」
「!!」
「マルス、お前に足りないのは、信じる心だ!もっと自分を…仲間を信じろ!!いくぜっ!ワンハンドリフト!!」
 そう言ってセルーはマルスを片腕で持ち上げ、ジャンパー目掛けて走っていった。
「うおおおおおおお!!DDジャンピングニー!!」
 そこから飛び降りたマルスの飛び膝蹴りが、ジャンパーの顔面を潰す。
「ぷはらっ」
「勝った……」
 自然とマルスは拳を突き上げていた。


 一方、白のアジトを離れ、単独行動をとっていたアッキーは、月へと到達していた。
「俺は確かに声を聞いた。俺を導く女神の声を…..」
 しかし、そこには誰もおらず、アッキーは無駄足かに思われた。
 だが…..
「これは…この足跡は……」
 アッキーはそこに遺された6つの足跡を見つけた。
「現世に実体を遺せるほどの強い思念を持った女神…..それも6柱……くくく…….俺はまた1つ新しい扉を開くようだ」
 その痕跡を辿り、アッキーは秘境へと向かった。


 ヨシケー達の進撃は、各地に及んでいた。
 凄まじい勢いで他勢力を潰していき、一気に走馬灯戦争の優勝候補と噂されるまでに成長していた。
「もはやうちに手出し出きるような奴もいない。案外、骨のない奴らばかりだったな」
「ひひひ…さすがはヨシケー。あとは1つずつ着々と息の根を止めていくだけでおじゃる」
 ヒロマルは各地を渡り歩いた経験や情報を十分に活かし、計略を進めていた。
(しかし…足りぬわい…なにかが…麻呂が求めているものはこんなものではないでおじゃる…)
 同時に、不安定さを抱えていた。それには、他のメンバーも気づいていた。
「…帰ったよ」
 そこにマキゲが帰還した。
「よほほほ…ご苦労だっておじゃる。どうだった?春霞は」
「たいしたことない。春霞のケイは討ち取ったわ。女神の力を失った雑魚…敵ではなかった。これで仇の1人は済んだのね。正直、拍子抜けだったけど」
「ほほほ…さすがでおじゃる。モミジからその大剣アネンゴころしを受け継ぎし者よ」
 その言葉を言いきらない速さで、マキゲはヒロマルの眼前に剣を向けた。
「おい…汚ねぇ口でモミジちゃんの名前を吐くな」
「す、すまんでおじゃる……」
(ふっ…ふふ…ぞくぞくするでおじゃる……)

 快進撃に、他勢力は危機感を募らせていた。
 しかし、この男だけは、余裕で事を構えていた。
「ふーん…兄さんの気配を感じない。つまらないよ……あっ……そうだ…….最近、調子に乗ってる連中でも狩って暇潰しでもしようか……うふっふふふ」
 その男、カエル。手に持ったナイフをぺろりと舐めて、恍惚な表情で立ち上がると、どこかへと歩き始めた。
「ヲタク狩り……そうだな…最初のターゲットは……魔術師のヲタク…ヒ・ロ・マ・ル♪」

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