プロDD・M ~その516

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

 ポッターの剣は踊るように、狂うように、ヨシケーを攻撃した。
 その捉えどころのない動きは、ヨシケーでさえ受けるのでやっとだった。
 否、ヨシケーは見ていただけだった。
「ふっ…いかにも強者といった面をして現れたから観察してみたが、この程度か」
「!?」
「初めてこの剣を受け止めた男、少しは期待していたんだが…」
「何を…言ってやがる!?哀原!有未!!」
 ポッターが両手の剣の名を叫ぶと、その剣は一層力を漲らせた。
「…….暇潰しにもならんな」
 そう言うと、ヨシケーは、その剣を腰に締まった。
「おい、何のつもりだそりゃあ」
「俺は兎を狩るのに全力を出す馬鹿な獣とは違う。多少名をあげた剣士がいたところで、ヲタク歴に区分される中でも最弱の時代のヲタク」
「…」
「あいにくこれ以下の刃物は持ち合わせていないのだ」
 そう言って取り出したのは、玩具の短剣だった。
「人を馬鹿にすんのも大概にしろ!なめるなァーーーー!!」
 突っ込んでいくポッター。棒立ちのヨシケー。
「井の中の蛙よ、世の広さをを知るがいい」
butterfly!!」
 ポッターの蝶のように開いた腕から両刀が振り下ろされた。
 だが、その剣は無情にも、玩具の短剣に止められていた。
「馬鹿な!ポッターの剣が止められた!出せば相手が吹き飛ぶ大技なのに!」
 ソウチョウの叫びに合わせて、ポッターはさらに攻撃を続けた。
(ヨシケーがこんなに遠いはずがねぇ!)
 しかし、その剣も簡単にあしらわれ、ポッターは弾き飛ばされた。
(この距離はねぇだろう、この遠さはねぇだろう!!)
「なんと凶暴な剣か」
「こんな玩具にあしらわれるために、俺は今日まで女を転がしてきたわけじゃねぇ!!俺は勝つために!!」
「何を背負う。その強さの果てに何を望む。弱き者よ…….」
真夜中の…..ラルム!!」
 水…いや、涙をまとったポッターの剣が、ヨシケーへ向けて振り下ろされた。
 ソウチョウは言う。
「流した女の涙の分だけ、ポッターの剣は強くなる。その境地……涙をこめた最強の一撃……」
 しかし、その剣が振り下ろされた時、ポッターの胸に刺さっていたのは玩具の剣だった。
「はいやああああああああ!!」
 すると、ポッターはすぐさまその剣を抜き、後ろへ退いた。
「撤退が早いな」
「ちげぇよ…..俺にはまだもう一段階ある……」
「む…..」
 ポッターが構えたその剣はまるで風車のようだった。
「対照的な2つの剣は重なりあう……奥義……旋風ッ!!」
「!!?」
センセーションッ!!!!」
 産み出された風の刃が、本体を隠す。いや、無数の凶器となり、ヨシケーに襲いかかった。
 ヨシケーは咄嗟に、本来の剣を抜き、それを一撃のもとに全て斬り伏せた。
「がはっ…」
「見事」
(敗けた…..かなわねぇ…..俺が敗けるなんて考えたことなかった、これが最強の剣…..)
 そして、とどめを刺そうとしたヨシケーがポッターへと剣を向けると、ポッターはくるりと反転した。
「何を…?」
背中の耐久力は、正面の約7倍……ぐはぁあうおおおおおおお」
 ポッターは背中で剣を受けると、なんとか持ちこたえた。そこにソウチョウが飛んでくる。
「クソがあああああああああ!!」
「ポッターのマスターめ、どこまでも汚い連中よ!貴様らの心に、戦士はいないのか!」
 ヨシケーの振るった剣が向かってくるソウチョウを斬ろうとする。
 すると、そこにガリが入る。
「ガリ…..!」
「はっ!!」
 ガリの拳が、ヨシケーの剣をかろうじて受け流すと、その隙に、ソウチョウがポッターを救出した。
 そして、ハッチャンが投げた煙幕に乗じて一同はその場から逃走した。
「……逃がさない」
 マキゲはなおも追おうとしたが、それをヨシケーが制した。
「待て」
「なぜ止める?ヨシケー」
「本命のご登場だ」
「…….?」
 煙幕が切れた先に、男は立っていた。
「争いに乗じて漁夫の利を狙ったのかもしれんが、あてが外れて残念だったな」
「いいや、俺は戦いに来たわけじゃないよ。悪美烈駆。これはいわゆる交渉だ」
「お前の事など信じられるとでも…?俺の生きた時代にもお前の悪名は知れ渡っていたよ。ああ、何度も殺し合ったな、懐かしいものだ」
「だからこそだ。その腕を信用して、こうして直接出向いている。俺は俺の野望のため、お前はお前で俺を利用すればいい」
「…….話すことはない」
「そう言うと思ったぜ、だが引き下がれねぇな」
「ならば力づくで排除するまでだ」
「ふっ、俺がこの手羽先を落とすことがあったら、ここから立ち去ってやろう」
 男は、アッキー。そして、その後ろにライコが立っていた。
 ヨシケーは、再び剣を抜くと、アッキーの口元の手羽先に向けた。

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