染、色の世界へ2
こちらの記事の続きです。
⚠︎ネタバレあります
◎大学
水の流れるような音が止んで、何かを描いている音がして、明かりが点いたら深馬がそこに立って絵を描いている。北見、原田、滝川、杏奈が揃う。
「あの二人もう仲良くなってない?」
「滝川は人たらしだからな」
「社交的なんだよ」
少しだけ深馬の独占欲みたいなものと、原田の滝川への尊敬の念を感じる。
「そしてチョイスも完璧」
「おいおい酒を飲むなんて聞いてないぞ。…僕の分もあるのかな」
深馬の音頭で乾杯する。曲が流れて声が聞こえなくなる。青春群像劇の幕開け。
原田は滝川と飲んでたのに北見に引っ張られて、滝川は帰る。
「フォー!」
原田の叫びが夜の合図。
寝てしまった北見と原田。
杏奈と深馬がキス。
風船が割れる。驚いた杏奈がキャンバスにぶつかる。落下するのを慌てて追う深馬。乾ききらない絵の具が腕に付いてしまう。色のついた腕。笑い声と共に音楽と映像。タイトルバック。
ああ、一気に引き込まれる。
◎展覧会
「去年と一昨年のとどっちが良い?」
「ゴッホの肖像画に良いとか好きとかないだろ」
「良いはなくても好きはあるよ」
展覧会に出した油彩はテーマが自分なんじゃないかと思ってる。自身を掘り下げていくうちにそれが真未との出会いに繋がっていく。
ちなみに滝川が深馬に「新しい風」が必要だと渡した画集はシーレ。シーレの代表作は自画像。
「深馬くんの絵、評論家みたいなことは言えないけど…「ありがとう」
「北見の彫刻見に行こう。」「先に原田の映像作品見に行こうぜ。こいつあれだけやっておいてバルーンアート使ってないんだぜ?」「作品を作り出すためには必要な過程だったんだよ。」
「杏奈ちゃんどこにエントリーシート出してるの?」「いろいろだよ。大手は一通りかな。2人は卒業しても作品を作るの?」「作品を作り続けられる人なんて一握りだけ。」
北原の二万ドル楽しみにしてた。
そして真未。
「これって僕の絵ですか?」
「は?」
◎恐竜
「どうした?改めて?杏奈とはバイバイした。就活行くって。順調だよ。こうなったら実家継ぐのもありかなぁって。泣かないで。頑張るから。お盆には帰るね。」
展覧会が学年変わって最初にあるんだろうか?という疑問は拭えないままだったけど、4年生(「慶光女学院の4年生です」)の就活始まってお盆には帰る(GWは終わってる)だったら6月の話かなと思った。梅雨の描写はなかったけど、初夏っぽさはたくさんあった。
◎面接
慣れない面接の緊張感がとても出てる。「〜の中で、〜の中で」って身振り加えて同じワード繰り返してしまうところも。
「え、芯がない…?」
チャイム
◎大学
相澤のインスタ見た?高架下の柱。バンクシー的な?深馬、お前どう思う?
「うーん、ここの流れがちょっと変。夜に書いたからかな」
深馬が書いた一本線のこと?
「深馬!ちょっと来い!いいから!…ロランス朱里さんが気に入ってくれたぞ、お前の作品!」
「期待に応えられるかどうか。実は…」
「それと深馬の今の状態とは関係ないんじゃないか」
「今まで怒りとか感情的なものを創作の発露にしていたんです。枯れちゃったんじゃないかって。不安もないんです。やばいと思えないところが一番やばいんじゃないかって。」
「次の講義に行ってくる。これをやってから考えてもいいんじゃないか。諦めるなよ。話ならまた聞くから。お前らはちゃんと考えておけよ。」
滝川がまともすぎる。「諦めるなよ」ってここで言ってる。
「やっほー!」
「荷物あるかなって」
「お前女子に荷物持たせんなよ」
北見のちょっかいの掛け方、深馬を見てる杏奈にこっち向いてほしくて会話投げてるだけの感じがする。
先方はスケールアップしたものをご所望とのこと。それを来月までに?ふざけてるよ。あれしろこれしろもっと大きく書け。作家の欲を無視して。
あれやれこれやれと言われた方がやりやすいときもあるよ。無茶なオーダーも乗り越えてみたい。
油絵は乾くのに時間がかかるんだ。時間がなくて展覧会もあの大きさにしたんだ。深馬の絵は緻密だからね。
1ヶ月は間に合わないことはないけど。就活?んなもんどうでもいいよ。そういうわけにはいかないよ。まさかの深馬が一番現実的。じゃあ諦めるの?
「トイレ行ってくる」
ここから北原杏奈の会話。いいよね。
最近話してる?電話はしてる。でも私が一方的に喋ってるだけかな。それよくないなー。
じゃ聞いてもいい?深馬くんってどんな人?菩薩みたいな。水に濡れたティッシュペーパー。形になったりならなかったりともいえる。俺はわかるなぁ。北見の言ってること。
ねえ3人はどうして仲良くなったの?原田にナンパされた。え?学食で友達にならない?って。大胆だね。
最初は仲良くなかったの?ううん逆逆。仲良くなりすぎちゃって。深馬は真面目だけど北見は🍻だから。スロットとか雀荘とか入り浸って。悪友。3年のときに深馬と競走したんだ。頑張ったからって良いものが作れるわけじゃないからね。誘ったことは一回もない。
同級生から見ても深馬くんってすごかったの?上手かった。そんな言い方ないんじゃない?杏奈ちゃんと出会った頃はもう既にそういう状態になってた。あのとき落ち込んでたんだ。それで杏奈ちゃんに声かけて。こういうふうに言ったら誰でも良かったって聞こえるかもしれないけど、杏奈ちゃんだから声かけたんだよ。実際深馬と付き合うようになったし。
自分の限界ってやつ?まだ大学生だよ?可能性が開いていくときって一方で閉じてく可能性もあるもんね。みんなの言ってること、全然わかんないよ。わかんなくていーよ。それを打破するのは並大抵のことじゃないってこと。
さっき言ってた秋の桜って何のこと?それって………
恋人に片想い、就活苦戦、北原の言ってることがわかんない杏奈。どんどん共感できる。
この会話での秋の桜は才能や成功を連想させる。本来咲くべき時期より早く咲いてしまった才能はその後どういう運命を辿る…?
◎卵(車の通りの下)
うわぁ、すごいな。スプレーを使っていてこのへんはステンシルか。いや全体はスプレー1本で仕上げてるな。
私なりに胎児や母体を連想した。
◎青い炎の白い花
答え出せず。
◎山羊と蛇
電話は杏奈が切らない限り繋がっていたんじゃないかと思った。ほぼ同時だけど電話を落として走って「待って」と言うので落ちた拍子には切れてない。
待って!なんで俺の絵に書き足す!できてないじゃない!
何で書き上げられない!怖いんだ。やっぱり。
最後の形は決まってる。最期は見れない。自分の死体は自分じゃ見れないもんね。
この辺りまでは聞こえてても良い。真未のセリフが空白になっていてもいいし、深馬の身体から再生されていてもいい。杏奈は怪訝がる顔をすることも多い。深馬のおかしさにいち早く気付いてる。
ここで見てて。
色のない山羊、手が止まる深馬、そっと背中に手を当て交代の合図、真未が色を加える、それを見て深馬も描き出す、それが蛇。
この深馬よく笑ってる。スランプなんて吹き飛んだみたいに楽しそう。
汚してるんじゃなくて洗ってる
うち、来る?
◎真未の部屋
ここ出てけって言われたら脅してやるんだ。
そこまでしてくれた人に。
自分の身は自分で守らなきゃ。
そうだよね。
ちょっと強めの真未の発言に同調する深馬を見ると、深馬らしい考え方と真未らしい考え方を天秤に掛けてるみたいだなと思う。
肩車。部屋の染み。
キス。スプレーが落ちる。
◎杏奈の部屋
プリテンダーのような着信音
深馬母に「ご無沙汰しております」
展覧会からは少し経ってる。
「ゴキブリ?ああ、捕まえたよ」
咄嗟の嘘に自分で笑ってる。
(もし恋人が浮気相手のことこう言ってたら最低だなって重ねて嫌な気持ちになる。)
杏奈がハッとしてたけど、深馬はどんな絵を描いていたんだろう…。
(基本的にグラフィティ以外のキャンバスは白紙だった。)
◎大学
この辺が面白い。
パース狂ってない?
空間が歪んでるーって感じで。
それをパースが狂うっていうんだよ。
どうだっていいよ、面白ければ!
そうだね。
冒頭で深馬が北原と言ってたセリフ。
先生みたいになりたい?
わからないって答えたんだっけ。でもほぼ否定に受け取った。
深馬、何があった?作風変わったな。誰かに何か言われた?何かを参考にした?
いや。しいていうなら、ちゃんと死ぬってことですかね。
この否定は嘘じゃなかったんだと思う。
「展覧会の深馬の絵に似てない?」
真未が深馬と出会うのは山羊と蛇の場面なので、展覧会の絵を知っているのは(仲良くなってから見せた可能性もあるけど)、ヒントだと思う。
細かくダメ出ししてある。本当に良い先生だったんだね。
でも何でこれ直接俺に言ってくれなかったんだろう。
◎ベンチ
「深馬くんが深馬くんじゃないみたい」
「深馬くんが生き生きしていることに私はきっと関係ない」
「ほかには?ほかには?」
杏奈のことを、北見を振り回してる悪女とは思えなかった。良くも悪くも深馬しか眼中にない感じがする。
◎街
「謙遜のふりして自己防衛。周りは気づいてるよ。上手くいってるなら突き進んじゃえ。客観視なんて丸めて捨ててしまえ。」
「守られた自由だったんだ。家族とか学校とか仲間とか社会とか組織とか法とかとにかく自分じゃない何かに。それに気づくたび自由の範囲が狭まっていく」
ビルを描いていて四角がどんどん小さくなって、一度消してはもう一度描く、このシーンはセリフと相まって印象的だった。
「私が深馬の自由になってあげようか」
◎大学
この絵には触れないでほしいんだとはっきり真未を拒絶する深馬。
「出版社の社長の息子で深馬と同じくらい好成績で入った人?」
「ああ、うん」
真未にここまで話してたのかな?ここもヒントだったのかなと思った。
発想が砂。どこにでもあるって話。普遍的なアイデアってことだろ。技術はあるよ。幼少期からの美術教育でこれ?お金の無駄。誰でも続けてれば身につく技術だね。何もかも中途半端なんだよ。そいつと付き合うようになってから深馬うまく描けなくなったんじゃない?
深馬、今誰かと話してた?いや。え、独り言?あー最近一人で勝手に喋ってる(笑)やばいかも(笑)だいぶ疲れてるね。
これだって嘘じゃなかったり。
「杏奈ちゃん、泣いてたぞ」
「もっと大事にしてやれよ」
「もっと作品に打ち込めば?お前の作品、中途半端なんだよ」
「てか俺のこと疑っておいて北見に近づいてたのか。最低だな、あいつ。」
中途半端は直前に真未が言ってたのと同じ言葉。
作品貶された上に杏奈のことまで下げた発言されたら北見も火が点くよね。
深馬は杏奈の部屋で隠し事聞かれたこと引っかかってたのかな。
ここ冷静に撮影してる原田もいい。
北見が絵を傷付けようとしたことに対して深馬が殴りかかる。
真未のスプレー。
◎真未の部屋
髪を括る真未は初めて?
透子ちゃんの狂ったみたいな駄々こねるみたいな泣き喚き方、とても良かった!
ごめん。ごめん!なんでこんなことしたの。ちょっと悪戯したくなって。だって真未があんなことしたから。あんなことって?スプレーぶちまけて。深馬が頼んだんじゃない。頼んでない。頼んだよ。じゃあ何かできた?1人じゃ何もできないくせに!
重なった深馬と真未の後ろで杏奈の面接はなかなかむごい。
◎面接
慶光女学院ってお嬢様の女子大だと思ってたから、シングルマザーの母が仕事掛け持ちして苦労して妹も大学まで、ってところは意外だった。1〜3歳しか変わらない妹がいて長姉だったんだ。
良いところというのは他の人からすると悪く見えるものですし。あまり自分のことを話さないというか。嘘をついてるわけじゃないんですけど。最近少しおかしい…
深馬は嘘はついていないんだよね。
「え?自分を家電に例えると?ですか」
絵が壊されるSE
◎大学
黒深馬登場。深馬と真未が一つになったことがきっかけになってる。
「自分のことは自分で分かってるつもりです。先生にはわからない。また死ねなかった」
滝川にも深馬にも原田にも疑われた北見。
◎疑われた北見と杏奈
蝉の鳴き声がする。もう夏なのか。
原田の隠しカメラ回収。
北見から杏奈の手を取るけど北見から離すのが切ない。
◎黄色と赤の絵
赤が龍、(先入観ありきで)黄色がライオンの顔に見えた。二人とも最初から色を使ってるのでこれまでのグラフィティとは意味合いが違うはず。
医療系のフォロワーさんと観劇した後、彼女は心臓にしか見えなかったって言ってた。ふたつに見えるものが実はひとつで、しかもそれが心臓なら、かなり話の流れと合う。
深馬と真未で赤い一直線を描く
そして左目に。ここの音に英語の歌詞がついているように思えるけど聴き取れない。
◎杏奈と深馬
「俺たちさ…「私内定もらったんだ」
杏奈の服装から同日の夕刻だと思った。壁にはいつも夜に描いてたから、このひとつ前のシーンはやっぱり違う意味合いなんだと思う。
別れ話しようとしたのに、内定おめでとうって言って、「好きだよ…私は」って言われて関係を終わらせられないのは平凡な大学生らしさがあった。絵に手を加えようとした真未のことは拒絶できたのに。
◎真未と深馬
「俺たちの偽物がいるらしい」
同日の夜。
とっちめてやるって言い方がまた真未らしい。
◎山羊と蛇
「なのにお前は、作品が壊れたらあっさり諦める。もっと足掻いてくれよ。」
滝川の大人ならではの冷静な怒りがとても良かった。深馬を通して正門くんも圧倒されたのでは。
「本物のふりをすれば本物になれる」
「あの二人と仲良くなれば周りが君を見る目が変わるって。あの人すごいんだ。その通りになった。」
絶望の淵から救ってくれた人に執着したくなる気持ち分かる。恋心とはちょっと違うと私は思ったけど「好き」に種類なんてないかもね。
◎真未に電話
「犯人わかった?」
犯人って偽物のこと言ってるんだけど、絵を壊した犯人にも聞こえる。
「ちゃんとした不幸とちゃんとした自由がある真未には分からない。たまたま入学した時にうまくいっただけなんだ」
「深馬は恵まれてるんだよ。これ以上何を望むの?」
「君は一体誰なんだ?」
「誰かだなんてそんなに大事なことかな」
「はぐらかすな」
「今まで一緒にやって来たことがすべてだよ。ずっとこうしていれたらいいな。深馬の望むこと私が全部してあげる。そうすれば君は何にだってなれるんだよ」
「君は何にだってなれるんだよ」
真未の一生を思いながら見ていたら切なくて苦しくなる。ずっと一緒に生きてきて、真未として出現してからは深馬と一緒に話したり描いたりするのがきっと楽しかった。最後の形は決まってるから、真未は自分の最後は分かってたんじゃないかな。真未とこのままいることを深馬が望まないことを。
逃げて、走って走って倒れて、山羊の絵を消そうとしてもスプレーが切れて消せない。
「もしもし、原田、全部滝川がやったことにしていいよ」
深馬は消したがっている。
◎病院
グレーのパーカーに白インナー黒パンツ。きれいに白と黒が半分。
道端で倒れていて熱中症。一週間意識がなくて思い出そうとすると頭が痛む。
「あのさ…「ポリダクトリーは滝川だったんだよ」
「クビになったよ。器物損壊だからね」
北見が遮らなかったら原田は何て言おうとした?
◎語り
首元を拭う杏奈を嫌がったのに、今は杏奈に渡されたタオルで腕を拭く。
「何かががらりと変わってしまいそうで。違うな、戻ってしまうだ。一度ついた染みは消えない。だよな?真未」
黒真未の激しいダンスに泣ける。
◎居酒屋
「バックアゲインモラトリアム」
さらさらと流れる3人の会話、聞き心地良かった。
「捕まってないよ」
原田のセリフの矛盾。
「滝川がフランスに行くって話になったとき深馬入院してたんだっけ」
「滝川が好きって話、高架下で話してくれたじゃん」
「話してないよ!俺誰にも!」
オールバックの伏線回収。
「まだダメなんだな」
「あぁ」
◎白深馬が壊す映像
はじめは何で黒深馬じゃなくて白深馬なんだろうって思った。
深馬の視点とこの時系列で話が進んでいくからそう思っただけで、白深馬が壊したから真未が出てきたともいえるなと思った。自分が壊したなんて受け入れられなくて誰かのせいにしたかった。現にこの居酒屋の時点でもまだ受け入れられてない。
◎フラッシュバック
恐竜、山羊(モノクロ)、義指でタギング、展覧会
「杏奈ちゃんどこにエントリーシート出してるの?」
「いろいろだよ」
◎真未の部屋
真未への電話は繋がらないけど、部屋の染みがあってよかった。たしかに真未は存在していた。
真未を思い出す床。丸くうずくまる深馬。
最後のダンスの黒真未も床を意識してた。
その後携帯触るのは真未の連絡先消してるのかな…
「もしもし、俺だけど、今大丈夫、良かった、あのさ、杏奈、今から、会えないかな」
原作からラストのセリフは好きだった。市村はもっとカラッと言うような気がする。深馬は縋り付くように言う。
◎白い真未と秋の桜
→続く
舞台「染、色」
配信 7/9(金)19:00〜
見逃し配信 〜7/11(日)23:59まで
https://online.johnnys-net.jp/s/jno/page/senshoku