3試合で8失点。新システム導入後、2試合連続完封。直近5試合の守備局面を振り返る
1) 直近5試合の結果
直近5試合の結果は以下の通りとなっている。
第15節 vs 千葉 1-1 △
第16節 vs 京都 1-4 ●
第17節 vs 鹿児島 1-3 ●
第18節 vs 甲府 2-0 ○
第19節 vs 大宮 0-0 △
7戦負けなしの状況の中、ホームで迎え撃った京都に前半だけで3失点を許し、完敗を喫したあとはリズムを壊し、鹿児島にも大量失点で連敗。たまらず新システムを導入し、守備を安定させ、上位陣を相手に2試合連続で勝ち点を拾っている。
2)4-1-4-1システムの弱点
一言で言うと、弱点は・・・
アンカー脇
である。
理由は主に3つある。
1. アンカーが出て行くと、中盤のスペースをがっつりあけてしまう
2. CBが出て行くと背後のスペースを開けることになる
3. SBが対応するとサイドのスペースを開けることになる
図のようにアンカー脇にボールが入ってしまうと誰かがつり出されてしまう構図となってしまう。
だからこそ、アンカー脇にボールを入れさせないための守備が求められる。
しかし、千葉、京都、鹿児島戦ではいいようにアンカー脇を利用された。
千葉戦は3-4-2-1システムのいわゆる2シャドーのところに誰が行くのかが特に前半ははっきりしなかった。図のように、アンカー脇に立たれるシャドーを各ポジションが警戒したことで、ボールの出所となる3バックの脇(HV)と2ボランチにはっきりとしたプレスをかけることができなかった。
続く京都戦は敵の4-3-3システムのIHが常にアンカー脇に立ち続け、その攻撃のほとんどが彼らを経由したことによるものだった。後半から3-5-2システムを採用し、前への圧力を強めると同時に、前から順番にマークする人を捕まえ、ボールを奪う局面を作り出すことには成功したが、それを見た中田監督は闘莉王を投入し、5-4-1システムに布陣をかえ、見事にゲームをクローズされた。
最後の鹿児島戦では、2試合連続での守備の崩壊を恐れるあまり、中盤の選手は自分の持ち場を離れて前線からプレスに行くことを怖がり始め、かといって最終ラインは出来るだけ押し上げようとするため、空いてしまう背後のスペースをいいように使われる。すると次第に最終ラインも押し上げることができなくなってしまい、サイドに開く牛之濱と五領の推進力のあるドリブルに後手を踏み、前半だけでまたも3失点。後半に、コイッチを入れ、2トップにし、前線に枚数を増やし、圧力をかけることで主導権は奪い返し、1点は返すもタイムアップ。連敗を喫することになる。
このとき私は以下のようなツイートをしている。
つまり、攻撃⇆守備で可変システムを採用し、そもそものアンカー脇という概念を無くし、前への圧力を増やすという方向性が見つかったのではないか、と感じた。しかし、GAFFAはこのタイミングで新システム採用という大胆な采配を行なったのだ。
3)新システムでの変化
4-1-4-1システムの弱点と3試合の守備の弱点を箇条書きで整理すると
・アンカー脇に入ると後手を踏んでしまう
・だからこそ、アンカー脇に入れさせないためにも出し手へのプレッシャーが必須
・しかし、ヴェルディは相手の立ち位置に惑わされ、敵の出し手へのプレスの強度が低い
・それに伴って最終ラインも下がってしまい、敵のサイドの選手が余裕を持って仕掛けることができてしまう
というようになる。つまり、完全な負のスパイラルに陥っていた。
鹿児島戦後、監督も ① スペースを消すところ ② 1vs1で奪いに行くところ ③ 奪い切るところを課題としており、守備の基本的なところから修正する必要があることを示唆していた。この解決策となったのが、新システム3-4-3である。
それでは何が大きく違うのか。
それは
DFが捕まえるべき相手がはっきりしたこと
に他ならない。
これにより、前線の選手も以前のように迷いながらではなく、
自信を持って敵の最終ラインにプレスをかけられるようになった。
3-4-3システムは守備時には5-4-1のような布陣に変形する。
以前の4バックシステムの際には5レーン理論でいうハーフスペースの捕まえ方がはっきりしなかった。
ところが、新システムの場合は既に5レーンに人がいるので、敵の立ち位置に惑わされることがなくなったのだ。
こうして、最終ラインが安定することで前線の選手も自信を持ってプレスをかけることができるという好循環が生まれたのだ。
じゃあ、新システムって最強なのと思うかもしれないが、欠点もある。
次の章では新システムの欠点について触れていきたい。
4)新システムでの懸念
新システム導入後、2試合連続完封と一見、順風満帆に行っているかのようにも思えるが、招いたピンチは当然存在する。
例えば、甲府戦では平の裏を何度も疲れる場面があった。
ボールを奪うには出し手へのプレスを強める他ないため、隣り合わせのリスクとも呼べる。
問題なのはもう一つの方である。
押し込まれると、5-4のブロックがかなり自陣まで引っ張られてしまうのだ。つまり、FWが孤立し、攻撃に移ることが難しくなる。
大宮戦の後半はかなり押し込まれ、かなりの時間を自陣で過ごしてしまった。
だからこそ、出来るだけ前線でのボール奪取を行う必要が求められる。
5)まとめと感想
最終ラインの選手がマークすべき相手をはっきりさせたことが守備局面改善の1番の要因である。
しかし、5バックでは押し込まれると自陣に閉じ込められる危険性が高いシステムであり、守備に重きをかけるシステムである。さらに、今回は触れていないが、攻撃面では「立ち位置を守る」ことが求められるシステムであり、創造性を解放したことで手にした5月の3連勝のことを考えると、本当に適切かどうか筆者は疑問である。
事実、大宮戦では攻撃ではほとんど手詰まりの状態となり、シュート数はわずか4本、枠内シュートに限れば1本である。
しかし、こう考察すれば辻褄があう。この新システムはあくまでオプションであり、もう一度チームに守備の原則を叩き込むことを目的としたものである、と。4バックも3バックも使いこなせるチームになればそれだけ戦術的な幅が広くなるし、3バックを多用するチームが多いJ2ではいつかは通る道だったのかもしれない。
守備の安定とは引き換えにヴェルディらしさの攻撃の迫力が減ってしまうことは実は新システムの最大の懸念だったりもする。今後、指揮官がどのように4バックシステムにこの3バックシステムの要素を反映させていくのか、注目していきたいところだ。