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三角関数(2)・弧度法 ~ギリギリ嘘をつかず最短手で説明したい~
★前回記事はこちら
三角関数・第2回「弧度法」
さて本日もやってまいりました、
「ギリギリ嘘をつかず最短手で説明する数学」
略して「ギリ嘘数学」です
第2回の今回、どうしても、地味な回になります。
すみませんが、円周率の話から始め、地味な展開で進めていきます・・・!
[1/7頁] 円周率とは?を真面目には考えたくはない。
今日の前半は「円周率って何だっけ?」に、今日の前半を使います。
とにかく「円周率は3.14だ」と覚えさせられ、「なんか円の面積とか計算するのに使う、中途半端な数値」として、有名かもしれません。
とはいえ「聞いたことはある!」という人は多いはずです。
しかしながら「なぜ3.14?」「円周率って何者?」と真正面から問うと、案外、その答えは難しいものになります。
ので、一旦今は我慢し、まず背景を少し知ってみましょう。
そこで、ですよ、
経緯を知るため、昔の話をします。
[2/7頁] 円の面積(昔の人視点)
まずは「面積」の話です。面積って、要は「広さ」ですね。
面積は、「縦・横が1、の四角形」を「面積1」とします。
これがとにかく基準なのですね。
「この四角形が何個分なのか?」で面積を表してる、とも言えます。
関東では「東京ドームXX個分!」なんて宣伝文句が多いですが、数学の世界では「縦横が1の四角形、XX個分!」として、広さを表すのですね。なんかシュールで良いですよね。
※ 日常生活で使うときは、「長さはcm・面積は㎠」など、単位を付けますが、数学の世界では省略してOK!
さて!
私たちは、まず円の面積を考えていきます。
ところが2000年以上前の人に思いを馳せるわけです。
当時「円の面積公式」なんてものはなく、計測することしか出来ません。
前回も登場した、おなじみの「半径1の円」です。
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このようにして
「なんか、円の面積って、3.1415くらいっぽくね?」と判明します。
公式で計算した、じゃなく、測ったんですね。
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円周率なんて当たり前でなかった頃、
「どうやら、半径1の円は、広さが3.1415くらいらしい」なんてことが、経験的に分かったのでした。
[3/7頁] どうしても登場する謎の値 "3.1415…"
昔の人達は、同時に「半径1の円」の、円周の長さなんかも調べてました

やはりここでも、3.1415くらいの値が出現することに気付きます。

水を用いて、球の体積を測ってみても、やはり、
出るわ、出るわ!3.1415のような謎数値!!!
こいつから、やはり逃れられない!ことが分かります。
「またお前かー!3.1415くらいの、お前!!」って感じです。
丸いものには、とにかく3.1415くらいの謎数値が、まとわりついてくることは、避けられない。これは!とにかく名前を付けなきゃ!
そう思うのは、とても自然なことに思えます。

[4/7頁] "π"を用いて簡潔に表そう!
名前を付けるにあたり、円の面積, 円周, 球の体積…どれでもいいです…が、
ここは1つ、ギリシア語で「円周」を意味する "περίμετρος"(ペリメトロス) の頭文字を取り、π で表すのが慣例となりました。
この "π" で表記される謎数値を、日本では「円周率」とも呼んでいます。
ちなみに、"π"は、「パイ」と読んでます (それ以外あるか…?)
で、結局、こういうわけですね:
【 π = 3.1415926535… くらい 】
2000年前は、数学の最先端を行ってたのはギリシャですから、ギリシャ文字の π が採用されたのも自然でしょう。
現代では、日本を含めて多くの国では「π=円周率、を3.14として計算する」が採用されてますが、 3.1 や 3.1415 の地域もあり、色々です。
そうそう。話を戻しますね。それで。そうなると…ですよ!?
半径1の円の面積 → π
半径1の円の円周 → 2π
半径1の球の体積 → $${\frac{4}{3}\pi}$$ (※πの4/3倍ってことです)
・・・と、驚くほど簡潔に表せます。
さて特に2つめ、「半径1の円の、円周は、長さ2π」は、記事の後半で今日は使い倒します
そして、そう、「円の半径が1じゃない」場合ですが、
結局「円周の長さは、半径の2π倍」なのは変わりありません!!

このように、図形の拡大縮小をするとき、
色んな「長さ」は、図形の拡大率と同じ倍率だけ、掛けられます。
「"半径"が3倍されたら、"円周"も同時に3倍になっている」ことは
確かに自然な話ではないでしょうか。

ということです。
長くなりましたが、「円周は 半径の 2π 倍だ」という話を、言い方変えながら繰り返してただけです。
結局、この1点だけ納得すれば、次の5ページ以降では困りません。
これだけ忘れずに、次に進んでください!
[5/7頁] 弧度法
ようやく今日の本題です。弧度法です。
一気に雰囲気は変わり、「1ラジアンとは何か?」という話をしますね。
まあ、絵で見た方が早いです。いきます。
例によって、半径が1の円、を考えていきますね。

半径と同じ長さの「ひも」があった、とするじゃないですか…?
円の半径は1なので、今回は、ひもの長さも「1」ですね。
それをですよ、こう!!です

えい!!
円に沿わせるように、貼り付けます。
隙間が出来ないように気を付けて、ピッタリと貼ってください。
はい。見て下さい。

ここに出来た角度を、数学界では「1ラジアン」と呼んでます!!
おおお~~~~~~~~・・・(拍手)
感動ですね。これが1ラジアン、です…!
何度くらいに見えます?
・・・57.3°くらいみたいです。
60°ピッタリに見えますが、そうではありません。
何故57.3か?というのは記事のオマケ部分で述べます。
それでまあ、こんな調子で

これが、2ラジアンですよね。
そして次が難しいポイントで、ちょっと頭を使うのですが、
「円周1周の長さは、半径の 2π 倍」という話がありましたよね。
ということは「半周分の長さは、半径の π 倍」で間違いないです。
π 倍、ということは、3.14倍くらいですね。
つまり「半周分の長さは、ひも3.14本分くらい」という話です。

もちろん実際そうなります。
ひも3.14本分くらい貼り合わせると、ちょうど半周分になるのです。
つまり「半径のひも π 本分」の角度が、180°、ということ
になりませんか・・・?
なりますよね。なるのです。
だから、
180°=π ラジアン
が言えちゃいます。
良いですね。
ここ納得してもらえれば、今日最大の難所はクリアとなります。
もう軽く流しますが、こうなると当然、360°=2π ラジアンです。
2πラジアン=1周分です。
2πラジアンつまり360°回ると、元の位置に帰ってきます。

[6/7頁] 具体例で練習
必要な知識は全て
前回の記事とあわせて、練習をしてみたいと思います。
(読んでない人は、必ず前回を読んでください! → 前回記事)
問題:sin(1) は、いくらくらい?
さあ来ました。
sinの中身は、1°じゃなく、1 ・・・なところに注意です。
数学界全体的に、「ラジアンの場合は、単位を省略していい」という暗黙のルールがあります。
だから、1ラジアンの sin を聞かれてますね。
そして思い出しましょう。
sinだから、(半径1の円の)指定角度の y 座標を読めばいい…のでした。
となると、残るは「1ラジアンってどこだっけ?」という話しかないです
図に戻りましょう

その点の y 座標ですから・・・

約0.84ですね。
sin(1) = 約0.84
・・・というのが、答えになります。
x座標は約0.54なので、ついでに答えちゃうと、cos(1) = 約0.54 ですね
もう1つは、少し、毛色が変わったものを考えてみましょう。
$${\cos ( \frac{\pi}{2}) }$$ は いくら?
π が来ましたね。
しかし慌てず、です。
とにかく「180° = π ラジアン」を基準にしていきましょう。
一応確認ですが、$${\frac{\pi}{2}}$$って、πの半分って言ってます。
πの2分の1、ですからね。
ちょっと慣れない分数表記かもですが、慣れていきましょう。
それでです。πラジアンで180°ですから、$${\frac{\pi}{2}}$$ラジアンは90°ですね!
結局これは、「90°のcosを聞かれてる」話で、
更に言いかえれば「半径1の円の、90°地点の x 座標を聞かれてる」だけです
これは綺麗な答えになりそうですね。

cos(90°) = 0 となります。
ついでに y 座標が sin ですから、sin(90°) = 1 ですね!
まだ不安だ!という方には、練習問題を多少用意したので、
「どうしてもまだ練習したい」人は、試してみてください → 練習問題
[7/7頁] まとめ
確認問題です。
これに正解すれば、正直、今回の記事は、ほぼ理解できたと言えそうです
cos(π)、sin(π) はいくら?
答えは下にスクロールするとあります
そして、本日の内容をまとめます!
<前半>
・π とは、3.141592…くらいの中途半端な値である
(・日本ではこれを円周率と呼んでいる)
・円周1周分の長さは、いつだって、半径の2π倍である
<後半>
・1ラジアンとは、半径1本分をペタッと貼り付けた時の角度。
・πラジアン = 180°
(・半周は、半径 π 本分だから。)
4つもあるのですが、いずれも互いに結びついていて、ひと続きの話の流れの中で登場する知識ですから、意外に忘れないんじゃないか?と思います(と信じたい…。)
さて第2回終了で、次回第3回は「正弦波のグラフ」となります。
今回よりは随分楽しくなる予定です。
何より次回は「実装編」があります!
実際にソフトウェアでsin,cosを使ってみるパートですね。
このシリーズは、CGやデザインをやる人…を想定した解説だったので、実装にも対応したい狙いがあります(そうじゃない人も楽しめるつもりです)
では、また次回お会いしましょう~
[★] 確認問題の答え
cos(π)、sin(π) はいくら?
→ cos(π) = -1, sin(π) = 0 が答えでした
<概略>
π ラジアン、ってことは、まんま180°ですね、
その x 座標は -1、y 座標は 0 なはずです(下図の通り)

なので問題なく cos(π) = -1, sin(π) = 0 が言えます
[追1/7頁] おまけ
数学すでに多少慣れた人向けの話が多いかもです・・・
おまけ1:ラジアンは、rad と表記することが多いです。
・radを見たら「ラジアンかな?」って思っときましょう。
・しかし最悪なことに、半径も"radius"なので、「半径5」という意味で「rad : 5」とか書かれてることもあります。最悪ですね…!
・混乱するデメリットの方が大きいと判断し、説明しませんでした。
おまけ2:1 rad は57.3°
・これ意外と簡単かもしれません。
・「2πラジアン=360°」でしょう? それぞれを2πで割ると、「1ラジアン=360°÷(2π)」だと思いませんか?
・円周率で割るってのは少し気持ち悪いですが、360÷2÷3.1415926535くらいを計算機で叩くと、確かに57.2958くらいが出てきます。
・これが1ラジアンの度数ですね。60°よりは少し小さいです。
おまけ3:円周率まわりの数学史(と、記事の組み立ての根拠)
・「円周率」という名前なくらいですから、何かにπを掛けると円周になるわけです。
→ そうです。直径(=半径の2倍)ですね。直径にπをかけると、きれいに円周長になります。
・ところが、三角関数をやる以上、主役はとにかく半径です。あんまり直径を意識させたくなかった節があります。
・上述の理由と、「円周率は、経験的に帰納的に発見され、道具として使われた時代が長かった」「314/100という綺麗な有限小数ではない」という所を自然に汲み取って欲しいために、面積や体積も持ち出してみました。まずくないと私が思う範囲で、少し話を歪めた節があります。
(更に言うと)
・一見、かなり嘘をついてるように見えるかもしれませんが、面積や球の体積もπの有理数倍であることは、古代ギリシアで(というかアルキメデスらによって)既に知られていたようです。
・円周率を π という文字であらわすのが国際的な相場になったのは、かなり近代になってからで、17世紀以降です。逆に、円周率を道具として意識し始めたのはギリシアより昔で、4000年前のバビロニアに既にあるみたいです
・円周率の表記方法が国際的に統一されるずっと前に、様々な図形量で π が登場することは世界各地で知られてたので、まあ、この流れでも怒られはしないかな(=ギリギリ嘘ではない)と思った次第です(例えば微積などの近代数学によるπの定義を発見当初の定義として紹介したら流石にアウトかなと思ってます)
・とはいえ「流石にマズいだろう」という声があれば聞きたい感じもするので、強い意見があったら聞いてみたいです。
・そもそも、詳しい数学史の順序を知るのは、ある程度数学を知ってからでも遅くはないだろうと個人的には思っています(というか、学校教育で、歴史的背景を簡単にでも説明する先生って一体何割存在するのでしょうか…)
・詳しい円周率の経緯は、↓この辺りの記事、も良いかもしれません
おまけ4: ギリシア文字
πってギリシア文字なので、現代のギリシアでは、今でもバリバリ使われてます。「パ行」の音は全部πですもんね。英語でいうpみたいなもんです。
数学以外で日常的に π が使われる地域あるの、ちょっと不思議な感じも私はするんですが。そうでもないですか?
ただ話があまりに本質的じゃなく話の腰を折りすぎるので、、下の画像、嫌いじゃないのですが、ボツとなり使いませんでした…。

・おまけ5:今後の予定(変更の可能性 大いにアリ)

おまけは以上です。