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正解だらけのクルマ選び その1 【ブルーバードと最後日の入】

僕の記憶に残っている最初のクルマは日産ブルーバードである。メーテルリンクの著作で有名なチルチル・ミチルと青い鳥の物語。欧米では青い鳥は幸せの象徴とされ、当時の日産の社長がそれにちなんで名付けて誕生したとされる。戦後復興をすぎ、アメリカに倣ったモータリゼーションが進展してゆく1959年に生まれた名車は、日産自動車を代表する花形として53年間の長きに渡って作られた。

父親が日産党、ブルーバード好きだったため、我が家のマイカーは(3代目)510型系・(7代目)U11型系・(10代目)U14型系と、3台のそれが愛車として迎えられた。昭和から平成に移ろう頃までは、自動車は買いに行くのではなく、『納車』という儀式があった。シートがビニールに包まれたピカピカの新車がサービスマンの運転によって自宅まで届けられ、主人にキーが手渡される。まだまだ一家に一台の贅沢品だった自家用車=マイカーに家族みんながウキウキワクワクして待ちに待った瞬間だった。そうしてやってきた愛車を運転できるのは父親だけで、クルマの運転はステイタスを伴った『大人の男』への憧憬として記憶に刻まれているはずだ。今では誰でもクルマに乗ることも運転することも当たり前となっているが、多くの昭和生まれの同世代はきっとそんな時代を懐かしみ、ウンウンと頷いているに違いない。

そのブルーバードにまつわる、我が家の年末の恒例行事の一つに『最後日の入(さいごひのいり)』というものがあった。元旦早朝の初日の出は、正月早々くらいはのんびり寝ていたいから、早起きしたくないから、との理由で一度も行ったことがない。代わりに大晦日の昼過ぎに、家族みんなで愛車ブルーバードに乗り込んでドライブ。夕暮れを迎える前に西伊豆スカイラインを走り、達磨山方面へと向かった。

一年の締めくくりのこの日、山の上から駿河湾越しに静岡の平野へと沈みゆく太陽を眺めていると、その年にあった色々な出来事が反芻されて、今年も無事に終えられたこと、つまり生きられた事への感謝の気持ちが湧いてくる。あまり一般的ではないこの行事がなんとなく僕は好きで、ルノートゥインゴ・スズキアルトバン・ランチアイプシロンといった歴代の愛車達に乗って、妻と共に我が家の恒例行事として『最後日の入』を続けた。さすがに大晦日はテンテコ舞いなので、蕎麦屋を開いてからはそうはいかない。だからかれこれ何年も行っていない。

それでも子供時代のこの時のドライブ行事は、おそらく僕にとってクルマに関心を持ち、クルマ生活を営む上でのプント(起点)。移動や運搬のための道具というよりも、暮らしに豊かさをもたらす夢のある存在。あの時代、クルマはまさにブルーバード=幸せな青い鳥そのものだった。そしてそれは今の時代もあの物語の通りに、自分のすぐ近くにあるものなのだ、と思う。

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#日産ブルーバード #昭和の自動車 #正解だらけのクルマ選び #最後日の入り #幸せの青い鳥

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