Moglie 〜モリエ〜 その8
解体工事が始まった隣の空き物件。モリエの看板がどうなるのか気になった僕は、しずしずと職人さんに近づいて話しかけた。
「看板のことでお話ししたいのですが、オーナーさんは今日いらっしゃいますか?」。
職人さん曰く今日は来ないとのことなので、自分の携帯番号を渡してオーナーさんに電話を掛けてくれるように頼んだ。
つながったのは昼過ぎだった。一度だけだけど面識はあったのですぐに連絡してくれたのだが、自分が出先で電話に出られなかったからだ。履歴には見知らぬ同じ番号がいくつも並んでいた。何度も丁寧にかけ直してくれたようだ。申し訳なく思いつつも、再びかかってきた電話越しに僕は伝えた。
「あの看板を譲ってくれませんか」
聞けば案の定、解体が終了したあとは看板も処分場へと運ばれるとのことだった。前のモリエさんにはとてもお世話になったので、せめて看板だけでも遺したい旨を語った。オーナーさんも快諾してくれた。
「ですが、工事は今日の夕方までには終わる予定です、外壁や看板も…」つづく
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