日本一周《トレートペリピ》がやってきた
目指せスーパースター。蕎麦宗です。
緊急事態宣言の解除が決まり、少しづつ人も動き始めた。それに先立って意を決して中国地方への旅に出たのが2週間前で、【サンライズ出雲と風まかせな自転車旅】に書いた。自分が動けば自分の周りも動くのは確かなようで、そのおかげか遠方からの来客も戻りつつあると思われる。
そんな折、一本の電話が入った。
「明日そちらやっていますか?」
若い女の子と思しき声が興奮気味に問い掛ける。その日は仕込みが長引いて普段より遅い時間まで店にいたゆえ、電話を受ける事が出来た。
「やってますよ〜」
なんでも*タンデム自転車に乗って日本一周の旅をしているらしい。今は沼津にいて、これから寝床を探すという。ほうほう、なるほど。その声に釣られて僕まで興奮して来た。
「ではお気をつけて、お待ちしております」
翌日、*パニアバックと大荷物を括り付けたタンデム自転車が、蕎麦宗の庭の前に横付けされた。若いカップルで、昨日の声そのままの女の子がにこやかに立っている。前もって受けた連絡で、すでに親近感がある。二人とも、旅人特有の人懐っこさのある爽やかな若者だった。早速入ってもらって語る。そこへポツリポツリと常連さんや僕の友人が入店。
「おー、磯崎久しぶりだな」
大学時代の友人(【全治2ヶ月】に書いた彼です)が、キャンピングカーに乗って旅する帰路に立ち寄ってくれたのだった。旅人同士が呼び合う聞こえない声に呼応したかのような連鎖。まあ、蕎麦宗にとってはいつものことだ。そんな偶然も相まって、彼らとの会話は弾んだ。
《トレートぺリピ》という名の彼ら、東京ディズニーランドを出発して関東一円を周り1400km走って三島にやってきた。ここまで2ヶ月。この調子で日本一周するとなると、2年はかかりそうだと笑う。僕が500km一泊二日の自転車旅アレコレを話した際、「なんだか恥ずかしい」と照れていたけれど、何さ、旅はスピードじゃなく中身の濃さ。いろんな形があっていいのは人生も同じ
書きたい事は沢山ある、でも一つだけ。この間、旅をしてきて、それぞれの土地土地に旅人を受け入れる空気感があり、その有る無しを嗅ぎ分けられるようになったという。それは例えば飼い犬達の毛並みなどにも現れるようだ。言葉で説明するのは困難なことだが、その曖昧模糊もうんうん!と共感出来きて面白い。きっと今の僕も旅人なのだろう。
帰り際。
「貧乏旅の若者に随分奮発させちゃったね」
に、
「旅の途中に投げ銭頂いて、それは地産地消みたいに現地その県で使い切る決まりにしてるんです」
と応える彼ら。殊勝なことです。
これから御殿場の友人宅を目指して出発するに、先んじて用意して置いた補給食を手渡した。自転車に関してはズブの素人のようで、エネルギー・タンパク質・ミネラルの補給について説明すると熱心に聞いてくれた。今時らしく、この旅をSNS発信しているようだ。さっそく撮影して、彼らのinstagramのストーリーに載せてもらう。ポータルサイトに色々用意されているのでご興味ある方はこちらのリンクからぜひ→《トレートペリピ》
彼らや磯崎が帰路に着いたあと、ふと、思った。旅人に触れた時のあの高揚感は一体どこから来るのだろう。ひょっとすると旅人を迎え入れた人も、彼らの運ぶ《ハレ…非日常感》を娯楽として受け入れ、同化して悦に入るのではなかろうか。だとすると、中国地方を旅した時の現地の方々の反応も頷ける。皆、大歓迎してくれたのはコロナ禍の経済的なことだけではない。この鬱屈とした《ケ…日常》を突き破る存在として、《旅人》に対して敬意を払うのだろう。
彼らの旅もつづく。そしてまた、僕らの人生という旅も続く。果てしなく、けれど何時、終止符が打たれるかも未知なその旅が、充実して満足できるものであることを祈ろう。
*Buon viaggio!
さて、ガンバラナシませう。
*タンデム自転車…二人乗り自転車。パラリンピックで見かけた方も多いかと思う。二人旅にはもってこいなので、欧米では人気の車種。
*Buon viaggio!…イタリア語で良い旅を!の意味
*トレートペリピ…フランス語で裏切り者の旅人。彼らの旅が、いい意味で色んな人達を裏切ってくれることだろう。
#タンデム自転車 #トレートペリピ #サンライズ出雲 #日本一周