サッカーはやめてしまったけれど その9 【スポニチ】
高校総体の中止が決まった。3年間の、あるいは人によっては幼少期から継続している競技の集大成となるはずの大会が、何もしないままに終えてしまう喪失感をどう埋めたら良いのだろう。同情ではなくいたたまれない想いしかない。個人的にはいっそのこと移行期として8月いっぱいまで学校はオマケで休みにして、9月入学という新しい(そして世界標準に合わせた)形でのリスタートはいかがかと思う。そして10月に高校総体も秋高野球も行う。
さて、高3のインターハイ静岡県東部地区予選で新聞記者の取材を受けたことがある。まだ一次予選の最中で、ほとんどが格下のチームだったので勝敗こそ心配はなかったが、決勝トーナメント進出に向け得失点差や総得点も考慮しながらの戦いだった。
そんなおり、とある試合の後、スポニチ県東部版の取材で記者からインタビューを受けた。初めての経験だったし、高校生の当時の自分には嬉しいことだったのでペラペラよく喋ったのを覚えている。すると、
「いやぁ〜、こんなに話してくれて嬉しいよ、*清商・清東・東一の選手達は何にも話さずに背を向けて行っちゃうからね〜」
と、その記者。その日は自分自身が3得点あげて4ー1で勝利したのだが、完全に格下相手なのでチームとしては10点を目標にしていた。先を見据えると予選1位通過を確実にしておきたかったので、決定機を作りきれなかったことなど、少し物足りないゲームだったことは否めない。それを聞かれるがままに素直に話した。
後日、郵送されてきたその日のスポニチを開き、東部版の高校総体コーナーを見ると自分の記事が掲載されていた。そこには
『…本人はハットトリックの活躍にもかかわらず「10点取りたかった」と欲を出す。格下相手に不満を口にし……』
とある。ナニコレ、ちょー感じ悪いじゃん。家族みんなで思わず吹いた。
「だから清商はじめみんな喋んないんだよ!」。
僕自身のメディア不信はここから始まっているし、今の若いスポーツ選手達がメディア対応の訓練を、幼少期からされているのはこのためだろう。
受け取り方は人それぞれだし、何を言うのも自由ではある。一方、情報を発信する立場にある以上、その取り扱い方に気を配る必要は隣合わせにあるはずだ。こうして文章を書いている今こそ、常にそれを忘れずにいたいと思っている。
*清商・清東・東一…清水市立商業(現:桜ヶ丘)・静岡県立清水東・私立東海大第一(現:翔洋)という全国大会常連高校。多くの日本代表選手を輩出している当時からのサッカー名門校。
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