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庭の芝生とインナーチャイルド
今はのんびりプ〜太郎、山川宗一郎です。
少し前の【52歳のアーリーリタイヤ】という記事に書いたように、DIYによる庭のリビルドに精を出していた。15年近く放置されていた犬小屋跡のコンクリートや金網などを撤去し、木塀を作り植樹して芝を貼り直す。そして、自作のデッキに座って完成した庭と借景の山々をぼんやりと眺めながら、コーヒーやワインを啜る。そんなのんびり贅沢な時間を過ごしている。
だが、その庭作りにもスツタモンダはあって、父と息子の小さな争いがあった話。
家に長く居るようになって、身の回りを気にいるように美しくしたいと欲が湧いた。とはいえ好みもある。また年老いて現状維持派の建主=親父からすれば迷惑でしかない。ただ、先々の管理し易さ等を思えば、子供世代の意見も認められて良いはずで、希望と実利の両方から庭の改造を提案した。それにしても、老いたあの世代の親は頑固。きっと我が家だけじゃない。
大まかにその計画を示したが、芝生の張り替えを話したところで父親からクレームが入った。
『なんでもお前の思い通りになると思うなよ』
まるで子供扱いになじられた事に、さすがに腹が立って怒り心頭に反論した。
とはいえ、反対されたにしても、たかが庭たかが芝生。なぜにそこまでの怒りが露わになったのかと、自分自身に目を向ける、つまり【内観】が必要だ。大方こういった激しくネガティブな感情が引き起こされるのは、《インナーチャイルド案件》である。このことは前回記事【スピ風呂!体験記】に書いた通りだ。
そこで、穏やかに瞑想をする。タイムラインに乗って記憶は遡り、やがて子供時代の映像が浮かんだ…
幼き頃の宗一郎少年が、泣きながら庭のオモチャを拾っている。無闇やたらと厳格だった父親に、遊びっぱなしにしたオモチャを投げ捨てられたのだ。短気なので、それは何度もあった。
僕はもともと汚れるのが嫌で、ミニカーや超合金を砂場で遊んでいる幼馴染みの行為があり得なかった。しかも親の指導は厳しく、発泡スチロールの箱に収め・紙箱に仕舞い・自分のオモチャ箱に入れたら押し入れに戻す、を毎回やっていた。
昭和生まれの庶民にとって、玩具を買ってもらえるのはクリスマスプレゼントくらいだった。それやお年玉で買った大事なオモチャ達を、時間までに片付けなかったにせよ無碍にされた上に、捨てられるという行為。芝生の上に投げられて壊れてはいない。しかしそれを拾いながら泣いている幼い自分を眺めていたら、今の僕まで自然と涙が溢れて止まらなくなったのだった。
後に成長した頃に、『壊れない様に芝生の上に投げていた』と父親から聞き、仕方ないと受け入れたことは覚えている。けれど、その瞑想で蘇ったビジョンの中で、禿げて土がむき出しになった所に転がったオモチャが少しだけ汚れて傷が付いていた。僕はその小さな傷や汚れですら悲しく、そして許せなかった。あれだけ大切に扱っているオモチャ達。大事にしろという教え。それに反し矛盾した行為は、幼き宗一郎少年に大きな傷として残っていたのだ。
目を開けて瞑想を区切り、僕は再び目を閉じる。インナーチャイルドの次のステップは癒すこと。先程のビジョンへと戻り、浮かべたイメージの宗一郎少年の横に立ち頭を撫でる。
『お前は悪くない、でもあの叱り方しか出来なかった父親も悪くはない。でも、嫌だよなその傷、悲しいよな土で汚れてさ。』
オモチャを掴んだ宗一郎少年を僕は抱きしめた。
『今は辛いけれど、このおかげでお前は誰よりも物を大事に扱う様になるんだ。何の心配も要らない。未来の、大人のお前には美しいモノが揃ってるし、綺麗に整えられて飾られる様に身の廻りにあるよ』
そう伝えて二人、いや一人すっかりと泣き止むまで芝生の上に立ち尽くした。
やがて目を開けて涙はもう乾いている。インナーチャイルドを癒せたと、確かな実感が湧く。これでまた次に進める、そう思った。
後日、この話を父親に伝える事にした。とはいえ責めるつもりはない。彼は彼で、軍人だった父親を、自身が生まれる前から戦争によって亡くし、テテ無し子として母子揃ってイジメと迫害を受けて育った。ましてやあの時代、このド田舎で。その酷さは想像に難くない。それに話は祖母からも父親からも何度も耳にしたので、必要以上の躾が祖母由来であることも知っている。
『…それを知ってるから親父を責めるつもりはないけど、悲しかったんだよあのオモチャ投げられたのは…』
父親は黙って聞いている。
『たかが芝生であれだけ怒りを感じたのは、目の前の芝生が、踏み固められて土が剥き出しで、あの頃の悲しみに繋がってるってのが分かったんだ。オレは…だから…芝生を貼り直したいんだよ。青々とフサフサにしたいんだ。オモチャに傷が付かなくても済む様に』
おかげで今があるということも伝えた。戦後すぐの片親の母の躾を受ける少年時代の親父を癒すべく、自分がやったのと同様の方法も教えた。親父の目が潤んでいるのが分かった。
後日、庭の改修の許可が降りた。若い頃に、庭師のアルバイトもやっていたことのある父親なりのアイデアも聞き、それを受け入れつつ、デザインを煮詰めた。手伝ってもらい庭木を植え、竹の支柱を組んだ。
暇に任せて観たYouTubeのおかげで、美しい芝生の育て方はすっかり知識として身についている。剥がした芝生の下土を整地する。肥料や目土も用意して、整然と貼り直す。足掛け10日間ほどで完成した。
『あの残ったコンクリートは剥がしたくなるな』
時間の都合でハツリきれなかった、犬小屋のコンクリート床の一部が目に入る。芝生の張り替えをやった後に眺めて、父親も母親も、自分の当初の狙いを理解した様だった。
『そのうち暇見て残りも削って芝生を植えるよ』
僕の作った庭が、この家の庭になった瞬間だった。そして、自分のインナーチャイルドの一つが、完全に癒された出来事となった。終
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