廃盤・蕎麦宗で、最初に出てくるお茶への想い
目指せスーパースター。蕎麦宗です。
『このお茶やっぱり美味いねぇ』
常連客でもある親友の*辰野が来店してくれて、蕎麦宗のお茶を一口すすった際に開口一番こう言った。いつも飲み食いしているものでも、ふと、そう感じ入ることはよくあることで、この日は改めてそう思ったようだ。
2021年1月からの改定で、開業当時(2005年)そのままだった価格を大幅に値上げした。それに伴って蕎麦粉のみならず、お茶の原材料もさらに上級シフトさせており、福井産の蕎麦茶と地元韮山の《蔵や鳴沢》さんの焙じ茶をブレンド。それらを知人の井戸から汲ませて頂いている三島湧水で煎じている。
多くの蕎麦茶は〇〇県産とは名ばかりで、中国産の蕎麦の実をその県で加工したというものばかり。そんな中にあって、蕎麦宗でお出ししている蕎麦茶は、正真正銘の福井県産蕎麦の実を同県で加工したものだ。しかも、今時流行りのトレーサビリティとやらで、どこの畑で穫れた蕎麦なのかまで調べれば分かるというから恐れ入る。凄っ。
そんなこんなの品をご用意しているのは、お茶はお客さんが口にする《最初の料理》という認識でいるから。お店で出てくる一口目が
『美味いなぁ』と、
『ん、ふつー』では
随分と印象が変わるのは間違いない。
そんなワケでとっても良いお茶ですよーと宣伝している話ついでに、修業時代の親方の言葉を思い出したので書くとしよう。
…当時(2000年)は《緑茶》がペットボトルに入った飲料として、ようやく認知された頃。お茶屋で購入した茶葉を急須で入れて飲むモノ、からのシフトが始まっていた。修行先の懐石八千代では、それはそれはびっくり価格の高級緑茶・焙じ茶を使用していたが、その理由は先に述べた一口めの話と、コースで15000〜20000円の料理を出す店だから。
当時も今も、ましてや静岡県民的には、お茶にお金を出すという感覚は皆無で、飲食店では無料サービスで出てくるものという認識が一般的。しかしながら、これ幸いとばかりにドリンク類を頼まずに、出迎えるためのその高級茶ばかりをガブガブとお代わり繰り返して飲むような、下品な方々もいなくはない。
そこで、ペットボトルのお茶の話を持ち出して、『有料でもいいはずだ』と言い出したのが親方で、その話に自分も妙に納得した記憶がある。時代が早いので、当時は実際にはしなかったものの、今ならそうしたとしても説得力は持ち得ていよう。同様のことは席料とかチャージとかにも当てはまり、徐々にそうなりつつあるのがこれからの飲食店なのかも知れない。
そんなワケで、蕎麦宗の価格には蕎麦と先付けとはもちろん、お茶代や席料も含まれていると捉えて頂けたなら、随分とお値打ちだなぁと思って貰えるのではないかと思います。
あ、でも、お茶のお代わりや長居をしてもアップチャージはありません。東京都内の飲食店はそんな風に変わりつつあるご時世ですけど、ここは伊豆は三島ですからね。ケチ臭いことは言いませんよ。せっかくなのでお茶のお代わりもご遠慮なく、そしてごゆるりと過ごされて下さいな。
では、ガンバラナシませう。