【緩和ケア】悪性消化管閉塞(MBO)
家庭医ギータです。
今日は緩和ケアの勉強です。
緩和ケアの外来を任されて感じたのは、
一般的なプライマリ・ケアの急患外来と
緩和ケア外来に通院中の患者さんが予約外で受診された場合とで
鑑別疾患が全く違う
ということです(当たり前ですが……)。
例えば、
「おなかが痛い」
「頭が痛い」
「背中が痛い」
といって臨時受診した患者さんの場合です。
プライマリ・ケアの外来では
まず重篤な疾患を見逃さないようにしつつも、
頻度の高い一般的な疾患であることがやはり多いです。
例えば、
「おなかが痛い」 →急性胃腸炎
「頭が痛い」 →緊張性頭痛、偏頭痛
「背中が痛い」 →急性腰痛症
といった具合です。
しかし緩和ケアの外来では、下記を念頭において診察、検査を行います。
(大幅に単純化した例です)
「おなかが痛い」 →腸閉塞
「頭が痛い」 →脳転移
「背中が痛い」 →脊椎転移
これまでとは全く違う世界に足を踏み入れていると感じています。
というわけで、今回は「悪性消化管閉塞」についてまとめました。
調べ始めると「沼」にハマってキリがないので
ザックリ、以下の3つの疑問に答える形としています。
1) そもそも、悪性消化管閉塞(MBO)とは?
当初、同僚が「MBO」と言っているのを聞いてもピンときませんでした。
「悪性腫瘍によって引き起こされる腸閉塞」
(Malignant Bowel Obstruction:MBOと呼ばれる)
のことです。
特に、卵巣癌や大腸癌(+胃癌)の患者さんに起こりやすく、
MBOの場合、患者さんの予後として1〜3カ月といわれています。
2) 良性とどう区別するか?
上記の通り、MBOの場合、患者さんの予後が限られてしまいます。
一方で、患者さんは腹部手術歴がある場合が多いので、
「良性の腸閉塞」(癒着性腸閉塞など)を起こす可能性も十分にありますが
それらを見分けるのはなかなか難しいのです。
閉塞部位としては小腸閉塞が大腸閉塞より4〜5倍多いです。
・小腸閉塞:多くは良性(最も多いのは術後の癒着)
・大腸閉塞:悪性の原因が大半を占める
「良性」の原因としては以下があります。
・放射線性腸炎
・非閉塞性腸疾患
・イレウス(麻痺性腸閉塞)
・腸管偽閉塞
・重度の便秘
3) 治療はどのような選択肢があるか?
・薬剤
・ドレナージ
・消化管ステント
・手術(バイパス術、人工肛門)
があります。
まず、手術ができるかどうかを考えますが、
超重症であったり、パフォーマンスステータスが低いことが多く、
手術の対象にならないことが多いです。
本人の意向を聞いたり、
専門家(専門科)と相談したり、
多職種カンファレンスを行ったり……と
複数の要素を考慮して判断することになります。
ザックリ分類すると……
薬物治療(症状に対して)
・痛み →オピオイド
・吐き気 →ハロペリドールなどの制吐剤
薬物治療(閉塞そのものに対して)
・ステロイド
・オクトレオチド
非薬物治療
・イレウスチューブ(経口or経肛門)
・消化管ステント
・胃管ドレナージ
上記の選択肢があり、個々の患者さんにとって
何が最善かを考えて適用を考えます。
3) まとめ
ひとつのトピックを深掘りするだけで
時間があっという間に過ぎていきますね……。
目の前の患者さんにとって最善のケアを提供できるように、
無理せず、続けられる方法を模索していきます。
<主な情報源>
①UpToDate® “Palliative care of bowel obstruction in cancer patients”
②『緩和ケアレジデントの鉄則』医学書院 2020年