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4680大型円筒型電池の行方は・・・

2021年10月、パナソニックが世界に先駆けて新たな大型円筒型リチウムイオン電池となる『4680サイズ』の量産に目処が立ったという報道は業界を沸かせました。

https://jp.reuters.com/article/panasonic-tesla-idJPKBN2HF0MZ 

世界的にもLIBの分野で中国・韓国勢に遅れをとる日本にとって唯一の希望でもあるパナソニックからのこの朗報に対する注目度は高く、その後2022年に和歌山工場で量産に入るという続報が出たあたりから4680への期待はかなり大きくなっていたのではないかと思います。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/12333/ 

現在市場に流通しているリチウムイオン電池の形は主に4タイプあり(角形・円筒・パウチ・コイン)、その中でもテスラが円筒型電池を搭載したことを機に円筒型電池は一気に市民権を得てきたわけですが、この円筒型電池は端的に言ってしまえばより高いエネルギー密度、より安価な生産コストを追い求め大型化する流れにあります。

歴史を見れば1865シリーズ(直径18mm✖️高さ65mm)⇨2170シリーズ(直径21mm✖️高さ70mm)と技術革新が進み、そしてここに更なる発展系としてパナソニックが4680シリーズの開発を世界に先駆けて上市を目指しているというのが一連の背景になります。

製品のスタンダードが変わる節目になるかもしれないと、業界全体が注目している4680シリーズですが、実は直近は良いニュースがあまり入ってきません。既にテスラの自動車には一部搭載が始まったているのですが本来の目的とされる高いエネルギー密度、より安価な生産コストの実現にはまだまだ遠いのだとか。

ここら辺の4680シリーズに関する世界の動向について中国発で面白い情報がいくつかあったので、自身の業界情報と合わせ日本語でまとめてみました。
LIBの最新動向に興味をお持ちの方や新エネルギー分野にアンテナを張っている方向けに技術的な話が分からずとも読みやすい内容にしております。



■ 電池をめぐる水面下の戦い


新エネルギー車にとって電池は最も高価な部品の一つです。最近ではコスト削減が進んでいるのでもう少し落ちてますが一般的には車体原価の1/3を占めると言われてます。いわゆる、心臓ですね。
BYDの様に最初から電池ーEVを一貫して製造している企業であれば話は別ですが、世の中の大半がEVはEV,電池は電池という風に分業になっているのが現状です。なので、このEVメーカーと電池企業には常に”力関係”が存在します。

EVメーカーが使う武器は「価格の下落」、一方で電池企業が返す武器は「供給の減少」です。互いに自社が置かれているポジショニングを意識しながら日々激しいビジネス戦争が起こっているのがEVと電池企業です。そしてこのEVと電池企業の力関係を長く支配してきた企業がいます。中国最大手「CATL」です。CATLは長く角形の三元系電池において世界で確固たるポジションを築いてきましたが、ここにゲームチェンジをしかけるのが「4680型大円柱型電池」なのです。

2020年9月、テスラのCEOであるイーロン・マスクは次のように宣言しました。

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