見出し画像

【1章】 7.二人の依頼人



「冷基!」











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







ーーーーーキーンコーンカーンコーンーーーーー




「……………んー?なんだ、うるしか。
……なんだよ、せっかく気持ちよく寝てたのに」

「屋上で寝てる場合じゃねえ!噂の転校生が早速先輩たちに呼び出されたぜ。どうする?助けに行くか?」

「……ふわあぁーーっと…。
……転校生……あーなんか朝、先公が言ってたな。つか行かねえよ、何で俺が」

「可哀想じゃん?来たばっかなのに、ちょっとテレビに出てるからって早速目えつけられてさ。三年の先輩たち結構いかついぜ?」

「先輩っつても女だろ?もし殴られても知れてるって、死にゃしねーよ」

「神田~、お前なあ、誰もがお前みたいに野蛮に生きてねーのよ。しかも女の子だよ?

細っこいのよ。殴ったり殴られたりせずに森の世界で生きてんのよ。シルバニアなのよ」

「カルフォルニアかなんかしらねーが、ふてぶてしいからそうなるんじゃね?態度が悪ィとかさ」

「全然ちげーし。お前もはやシルバニア知らんだろ?そして誰よりもふてぶてしく態度の悪いお前がそれを言うか!」

「るせー」

「…まあ確かにお前の言う通り、話しかけてやっても愛想もねーし?…でも三年の先輩達に囲まれると流石にやばいーーー…

ーーーあ、ほら、噂をすれば…!
神田、下見てみろよ。ゴミ捨て場の前」

「へえ、話しかけたんか。どれ」





ーーーースッーーーーー


「あの細っこいのか。ほんとだなー、結構な人数に囲まれてら。ひー、ふー、みー…。
…10人くらいか?」

「…うわあ、マジでやべえじゃん。バッドとか持ってる奴いんだけど…、流石にあれで殴らねーよな?」

「さあ。でもあれ木製だから平気だろ」

「そういう問題じゃねーの!」

「やられそうになったら逆に掴んでバッド取り上げて、渾身の力で脳天に一発かましてやりゃ黙るだろ」

「黙るとかじゃないの、頭パックリいくの、それ!女の喧嘩じゃねーよ、もう…。せめて髪ひっぱるくらいにしてくれよ~…?」

「髪を引っ張られたらチャンスだぜ?逆に相手の手を押さえたまま勢いよく前に頭を下げてやったら相手の手首が反り返るから、その痛みで相手がバランスを崩した隙にだなーーーーー」

「ああもう!お前の野蛮トークはもういいわっ!!」そんなときだけイキイキしゃべんなっ!





ーーーーーガシャンーーーーー!
ーーーザーーッ!



「おい、どこいくんだよ。うるし」

「下!助けに行くんだよ。やっぱり我慢ならん!…女の喧嘩のレベル超えてるんだよ。あんなのは全然可愛くない!」

「可愛い喧嘩なんてねーだろ。てめーの姉ちゃんはお前と喧嘩する時可愛いのかよ?」

「蓮香の話はやめろ!あいつは女どころか人間じゃねえ!…そう思わねえと健全な中2の俺が女嫌いになってしまう……。

ということで俺は行くぜ!止めてくれるな!」

「別に止めねーけどよ。やられんなよな。だせえから」

「うるせーわ!!
…ったく、薄情な野郎だなあ、てめーは!

…大体あの転校生、美好ジュニアの連れてきた
子なんでしょ?守ってやれよ、連れの連れなんだからさ!」

「るせー、連れの連れは俺の連れじゃねーやい。行くならさっさと行きやがれ。せいぜい死なねーようにな」

「ふん!めっちゃ生きたるわ!!」







ーーーーーガチャッ、カンカンカンッーーーーー



「…ほんとに行っちまいやがった。お節介な野郎だぜ。……厄介なことになって後で泣きついてきても俺ぁ知らねーからな…」


ーーーーーチラッーーーーー




「……可愛くもねー癖にちょっと有名人だからってスカして調子乗ってんじゃねーよ、ブス!」

「美好と別れろよ、釣り合ってねーよ、ブス」

「つーか態度悪ィんだよ、謝れよブス」






「…おーおー、でけえ声出して響いてるぜ。うるし間に合うのかあ?あいつ(笑)俺は一服しながら高見の見物させてもらうぜ」


ーーーーカチッ、…シュボッーーーー

ーーーーースゥッ、…ふうーーーーーー



「……つーかブスの連呼すげー。あれか?”カス”みてえなノリでとりあえず言ってんのか?(笑)




……ーーーーーつーか、美好の連れ、っつっても。…どぉせ長く続かねえだろ…。


………はあ…今日もつまんねえなあー
…とりあえずそろそろふけるかあーーー」









ーーーーーーパンッ!パパンッ!


「キャアーーーーー!!」

「何持ってんだよてめー!?」

「ぎゃあッ!!おいっ、近づけんなよっ、やめろっ!…今すぐ地面に置けっ!」



ーーーーーパパパパン!!!!!パンパン!!


「きゃあああぁーーー!離れろぉー!!」

「あ…っ!妹川!待てよ、逃げんじゃねえ!!」














「ーーーー…っくりしたあ~。……あいつ、爆竹ぶっ放しやがった。

……なんて女だ、普通持ってるか?爆竹(笑)
しかもめっちゃ投げてたし。


…逃げ足も結構早え、もう見えなくなってらあ。

ーーーー!


ーーーーあ、うるし。おっせえ〜。
誰もいなくなってんじゃん。

ーーーーあ、先公……、あ、爆竹か。濡れ衣着せられてらあ。…あーあー、焦っちまって…あ、逃げた……めっちゃ追っかけられてる……。




……ぷっ、ギャハハハ!!あほだ、あいつ(笑)
間悪すぎだろ!何が”助けに行く!我慢ならん(キリッ!)”だよ(笑)

…ギャハハハハ!!
ひーっ、おもしれー、腹痛えっ…!」














ーーーーーーカンカンカンッーーーーーー…!



「ーーー!…あほがお帰りだぜ(笑)」




ーーーーガチャッーーーー!


「ーーーよお、うるしくん。お前はサイ&コーかよっ(笑)?おもしれえもん見せてもらったわ、…くッ、ギャハハハハ…!

だめだ…!笑いが止まらん(笑)ーーーーー…」


「…げっ、…誰かいるしーーー」







「あっ、お前ーーーーーー、」


「……最悪ーーーーー…」








ーーーーーカンカンカンッーーーーー…!


「こっちだよ!階段上ってくの見えたからっ…」

「オッケー!妹川ーーーっ、逃げても無駄だからなーー!」

「お前の面に爆竹の礼してテレビに出れなくしてやるよ、覚悟しろよブス!」










「…ーーーまじ最悪………」

「……爆竹もう持ってねーの?火ならここにあるけど」

「…ーーー!

……もうない。さっき落とした」

「んなら使う?これ」



ーーーージャラッーーーー…



「……使わないよ」

「ハハッ、だよなあ。さすがに使わねえか(笑)」

「………っていうか…メリケンサック持ってる奴、現実で初めて見た」

「これはいざというときの護身のために持ってるだけだけどな。普段は素手で行くから使わねーし」

「………そうなんだ」

「おう、つーかお前こそ。爆竹持ってる女初めて見たぜ、俺ぁ(笑)」

「……あたしも護身用。…普段は使わないーーーーーー」












ーーーーーーカンカンカンッーーーーー!


「きっと屋上だよ!」

「妹川、てめーから出てこいコラァ!」










「…ーーーーやば…」

「……そこの展望台に上って隠れとけば?」

「…え?」

「そこに梯子があんだろ?あれ俺が持ち込んだやつだから、使っていーよ。登ったら持ち上げときゃバレねーよ、多分」

「……でもーーーー」








ーーーーーカンカンカンッーーーーー!





「早くしねーと見つかるぜ?」

「………うん、…ありがと」





ーーーータッ、タッーーーー…








ーーーーーガチャーーーッ!!




「…いない…!」

「妹川!!どこだ!?」

「あっ、ーーーー。”神田冷基”!」







「…ンだよーーーー?」


「今ここにあんたの学年の転校生が上がってきたでしょ?そいつどこ行った?」

「しらねーよ。誰だそいつ」

「妹川好香(マイカワヨシカ)だよ。知らないの?最近、美好が連れ歩いてる女じゃん、最近頻繁にテレビ出てんだからさすがに知ってんでしょ?」

「知らん、俺はテレビはお笑いしか見ねー」

「「「だっさー!」」」

「っせーな、放っとけっつーの!」

「お前相変わらず生意気だなー?
敬語使え、敬語!」

「そーだそーだ!」

「うっせ!つーかせっかく一人でゆっくりふけてんだから邪魔すんじゃねーっつーの。用がねーなら行った行った!」

「ふーん、まあいないならいいけど」

「そだね、存在さえ知らなそうだし。ところで今日は相棒は?一緒にいないわけ?」

「相棒だあ~?」

「漆原だよ。蓮香さんの弟の、あんたらいつも一緒にいんじゃん」

「いねえ。なんか今さっき先公に追われてんの見えたけど」

「え、どこ?」

「そこ、ゴミ置き場ん前。ここから見えた」

「まじ…?爆竹だよ!まじかよ!あいつバカじゃね?おもしれえ~!(笑)」

「あの子のせいになってんの?可哀想~!キャハハ!」

「ねえ、それより妹川探そうよ。まだ学校にいると思うし」

「ああ、だね。爆竹の礼しないとだし。じゃあね、”神田冷基”。漆原弟によろしく~!」

「へいへい、早く行け。うるせーからー」










ーーーーーーガチャッ、
…カンカンカンッーーーーー……










「おーい、行ったぞ」





ーーーカチャーーーー…トントンッーーー



「………ありがと」

「おー、梯子そこ置いといて」

「…………さっきの人たち知り合いなの?」

「知り合いっつーか…。前に3年の男の先輩と喧嘩した時にその場にいた奴らだな」

「…………どっちが勝ったの?」

「俺」

「………メリケンサックで?」

「馬鹿か、だから使わねーって(笑)」

「…ふーん…」



ーーーーストンッーーーー


「お、そこ俺の定位置なんだけど」

「…疲れたーーー。ちょっと座らせて」

「まあいいけどよ。爆竹女王さんよお(笑)」

「………ここから見てたんだね」

「ああ、そうそう。俺の連れがーーーー…。

あ、あいつどうなったんだろ」

「……?」

「…まあいっか」

「……うん?」



ーーーースッーーーーー


「ーーー、煙草吸うのかお前」

「………悪い?
てゆうかあんたもさっき吸ってたよね?」

「まあまあ」

「……火貸してくれない?」

「いいよ、持ってねえの?」

「…さっき爆竹と一緒に落とした…」

「…ぷっ、お前さ。
爆竹ライターでつけるの危ねえべ?(笑)」

「…え?火つけたのチャッカマンだけど……」

「チャッカマンと爆竹持ち歩いてるてお前、やべーよ!何に追われてんだよ(笑)ギャハハ!」

「……別に。…だからいざって時のーーー」

「はーおもろ(笑)
なんか今までの女とタイプちげーな、お前」

「…ーーーは?」

「美好の連れなんだろ?お前」





ーーー……ポトっーー…




「タバコ落ちたぜ?ほら」

ーーースッーーー…

「……美好の、…知り合い?

…………通ってる、美容院のーーー?」

「おう、そうそう。
お前もあいつと一緒に店に来たんだろ?

お前の髪切ったのが俺の母ちゃん」

「…………ーーーそれは…どうも……。

……お世話に、…なって…ます…?」

「吸わねえの?」

「………いや、…その……」

「ーーーーん」



ーーーーシュボッーーーー


「ーーーー…いや、あの……」

「吸えよ、誰も見てねーし」

「ーーーーー、」

「ほら」

「…………いや…」

「言わねえよ。内緒なんか、お前。美好に」

「ーーー………」

「ほい」


ーーーースッーーーー


「………」


ーーーーシュボッ…!

ーーーーースゥッーーーー
…フウゥーーー……ッ……



「…はあぁーーーーー…」

「良い吸いっぷりだな、爆竹の後の煙草はそんなうまいか?(笑)」

「……これは溜め息。……なんでよりによって知り合いの人にーーー…」

「ハハ、すげえ引きだなあ(笑)」

「………”神田冷基”さんはーーー」

「さんて。(笑)つーか俺の名前知ってたんだ」

「…さっきの人達がそう呼んでたから」

「あー、三年の女共な」俺も吸う



ーーーーシュボッーーーー…


ーーーースゥ……


「はああ~。それにしても面白いもん見せてもらったわ~」

「……さっきの、美好に言うの?」

「爆竹か?」

「…とか、先輩に囲まれてた、とか」

「言ってほしくねえなら言わねえけど。
つーかそもそもそんな頻繁に会わねーし」

「……そうなの?」

「おう、月一回うちに髪切りに来た時くらいだぜ」

「……じゃあお客さんとお店の人…的な?」

「そのあとに遊び行ったりダべったりするくらい。あと家で麻雀打ったり」

「…ガッツリ連るんでんじゃん…」

「まあ言ってほしくねーのもわかるわ。あいつ色々うるせーもんな」

「…うるさい…とかじゃないけど…。……余計な心配をかけるとアレだし。…忙しいじゃん、あの人」

「ふーん?まあ、そうだなあ。あいつ毎日仕事だなんだと飛び回ってるもんな」

「……神田…くんは…ーーー」

「冷基でいいぜ。あいつもそう呼ぶし」

「……じゃあ、あたしも”好香”で…」

「好香な、オッケー。つうかお前よお、美好の連れとわかった瞬間に借りてきた猫みたいに大人しくなんのなー?(笑)」

「………ーーー、」

「別に普通でいいぜ?あいつは連れだけど、俺とお前は初対面なんだし」

「…ーーーーうん。…そうだね」

「おう。ただまあ一個だけ忠告すっとタバコはバレねえように気をつけた方がいいぜ。あいつ特にそれうるせえから」

「……冷基、も…うるさく言われるの?」

「おう、やべえ。毎回会うたびにやいのやいのと言ってくる。母ちゃんよりうぜえ」

「…ふっ、…そうなんだ」

「ーーーうん。それにさ、お前もあいつと同じで歌をやるんだろ?だったら余計じゃね」

「………だね…。ーーーねえ、冷基」

「んー?」










ーーーースッーーー



「ーータバコ一本ちょうだい」なくなった



「ーーー…、てめー、俺よりふてぶてしくね?(笑)」バレた瞬間それかw



「……そうなの?」

「そうだよ(笑)」













































ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








「冷基!起きて」








「ーーーーー………っ…、……ぁっ…、」

「ーーーー…!……よし、OKだ。焦点も合ってる。完全に意識が覚醒してる。

千影、輸血の用意をーーー」

「できておるわい」

「よし」



ーーーーーカチャッ、………カチャっ………



「……俺―――――」

「なに?なんでも話して。まだもう少し。完全に定着するまで、意識が落ちない様にーーー」

「…………どこやったっけ………ぅ…、あちぃ…」

「ーーー安心しろ、すぐに楽になる。

……で、なんの話?」

「………め、りけん……さっく……」

「…?なんだそれは?」

「………んなことも知らねーのかよ……、…外国人、…だっせぇー……」

「…む、なんだと?ーーー千影、知っているか?」







ーーーーースッーーーー…


「当然じゃ。ださいのう、外国人よ」

「…なんだよ?そんな常識的なことならどうして俺に教えてくれていないのさ?」

「何でも他人が教えてくれるわけじゃないんだよ、後で自分で調べてみな」

「……気になるなあ」

「今は処置に集中せい」

「平気さ、ここからは専門分野だからね。俺が失敗するわけがない」

「…”驕る者久しからず”ってね。油断せずにのう」

「ーーーちょっと待て、今のも習ってないぞ?どういう意味?」

「後で好きなだけ調べな。この世では赤ん坊のシキよ」

「…むむ。…ーーーーー冷基、お前は今の言葉の意味を知っているかーーーー」









ーーーーーースゥ…………









「…寝たーーーーーーーー」

「……もう良いのか?」

「ーーーうん。…定着してる。凄まじいスピードだ」

「…うむ。私が知っている中でも一番だな」

「…それどころか”あちら”側でもこれは驚異的な定着スピードだよ。…呼吸ももう落ち着いているし、酸素マスクも必要ない」

「ふう…かたや生死の境を一週間彷徨ったというのに、不平等なもんじゃな」

「……それが”普通”だよ。元より命を失う者だっているんだ。…生が繋がっただけありがたいと思わないとね」

「…こやつは地下で寝かせておくとして、あいつはどうする…?」

「家に帰してやればいい。もう回復しているだろうし」

「了解した」

「それにしても驚いたね。まさか二人もこの短期間にこの屋敷に辿りつくなんて。しかも同じ依頼で」

「…うむ。ガキのパワーは侮れんわい」




ーーーチラッーーーー



「え、今の”ガキ”ってまさか俺も入ってる?」

「当然じゃろ。一番私の視界に入ってるガキはお前だからのう」

「まて、だから言ってるだろ。
俺のところじゃ俺はもう立派なーーーー…」

「やいやい言ってんと早くそやつを運ばんか。色々調べものもせなならんじゃろ?」

「あ、お前わざとだな?わざと俺の知らない言葉をチラつかせて俺を一層働かそうとーーーー…」

「”お前”言うな言うとるじゃろ!!」



ーーーゴツンッーーー!


「ーーー…いったいな!こちとら彼の右を受けた後だぞ。信じられないお婆さんだ…」

「誰が”お婆さん”じゃ!」


ーーーバシッーーー!


「いてっ…!……一体なんて呼ばれたいんだ……。

めんどくさすぎるぞ、この世の老婆…」

「誰が老婆じゃ!」
























シキ























































いいなと思ったら応援しよう!