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1章
「…すげえ、なんかのアトラクションみてえだ」 「……扉を開けたらすぐに向こうへいけるわけじゃないんだね」 「うん。でもすぐに着くよ。一分もかからない。 冷基がいつか言ってた”次元の狭間ってやつだよ、ここは」 ーーーーーー”扉”を開いた先には、扉そのものと同じ黄色のような金色のような光が強く差しているだけの空間が四方八方に続いていた。 「理想は下界の某国民的アニメみたいに開けたらすぐに血界ーーーっていう風にしたかったんだけど、なかなか難しくてね。 構造が複雑なんだよ
「これが扉だ」 美都市から電車で1時間、更に徒歩で40分ほど歩き、人里離れた山のふもとにそれはあった。 「…すげえ、ほんとに扉だ」すげえ光ってる 「あ、触らないで。結界が張ってあるから、触れると魔物が出る」 「えっ!なんだそりゃ」 「人の目につかない場所ではあるけど、万一見つけた人間が誤って開けてしまうと大変でしょ。その対策さ」 「……どこにその魔物がいるの?」 「ここ」 ーーーーースッーーーーー 森の奥に明るい光りを放つ扉がひとつ。光が強い為、地面から浮い
「なあ、シキ。なんで失踪した人間が血界で見つかるん?」 「ん?」 「お前、前に”次元がどう”とか言ってたけど、それと何かカンケ―あんの?”次元の歪みで飛ばされて~”みてえな?」うるしが言ってた ーーーーある日の放課後、冷基は屋敷に訪れていた。 地下の一番奥のひとつ手前の部屋。そこが冷基の修行部屋として定着化しつつある。二週間前に千影に命じられたあの日から、冷基が一日も欠かさずにここへ通っているのは少し意外ーーー。 口に出すとすごまれそうな感想を胸の内にしまったまま、
冷基の目があまりにも真っすぐで淀みがなくそして一切の遠慮がなかったことが、逆に清々しい気持ちにさせたのだろう。 「カッカッカ!大胆に失礼な奴じゃ、お前のそういうところ、シキにそっくりじゃい。似ておるな、お前ら」 「なんだと?失礼な、俺は時と場を弁えて発言しているぞ」 「あ~ん?てめーちょいちょい喧嘩売ってくるよな?」 「…おいおい、やめろよお前ら」めんどいから… 「息子じゃ」 「「えっ?」」 「12年前、私の息子が失踪した。 …初めに姿を消したのは息子の妻ーー
「あれ、一人多いね?」 約束の日の土曜日ーーーー。 ドラッグちかげのレジカウンターではそれらしく白衣を着た外国人風の佇まいの男が客人たちを待ち構えていた。 「ブ、ブロンド美人…!」 「?漆原富雄くん、だよね?」 「!うっす!初めまして」 「ここを見つけたのは君だよね。どんな人なのか気になってた。来てくれて良かったよ。 俺はシキ・ルービック。よろしくね」 「…お、お…っす。ーーーお、俺ーーーな、男か…。まじか…綺麗な面だな、おい」 ーーーチラッーーー 「みんな
「えっ、…じゃあ妹川も行くん?」 「うん、そうだよ。あいつもその”血魂”ってのに成功したからさ」 「…そうなんだ…。てかあいつも屋敷見つけ当てたとはな…」 「いや、好香の奴はサイト巡りはしてないみたいだぜ?…んぐっ、つーかこれうめえな。もう一本頼める?」 「ああ、ハートね…。ちょっと待って、そいつはちっと焼くの時間かかるから母さんに言ってくるわ。 ーーーーーー……、て、……ええ!?!?なんそれ!?どういうことよ!?」 ーーーーーある日の祝日、昼の14時頃。 まだ
ーーーー時は遡りひと月半前、美好のお別れ会。 巨大な収容人数を誇る葬儀会場の主催・関係者待合室にてーーーーーー。 ーーーーーカタカタ、カタカタカタッーーーーー 「…若、何してんの、こんな時に…」 「いや、少し…。やらないといけないことがーーー…」 「…事務作業なら後でやれよ。…ここ数日ろくに寝てないやろ、お前。セレモニーが始まるまで休んどけって」 「平気です、僕は。”調整”してるので…。それより皆さんの方が休まれた方がよろしいかと。セレモニーの段取りは済んでいるか
「おはよう。二人とも、冷めるから早く座れ」 「おはよう、千空」 ーーーーガタッーーーー 「っおっ、ビックリした。お前以外に人いたんか」 「ああ、彼は千影のお孫さんだよ」 「…あの婆ちゃんの。似てンなあ?」系猫目… 「千空(チアキ)だ。よろしくな。 冷基、だな。聞いたぞ。血魂に成功したんだってな?よく頑張ったな。あれの後は体力が落ちる奴も多いから、たくさん食って帰れ」 「…うっす。どーも」 「む…?なんだかお前、俺に対する態度と違うな?」 「あ?そうかあ?お
ーーーーーパチッーーーーー 「ーーーーッ…!」 「起きたね。おはよう」 「ーーー…ここは…」 「屋敷の地下、ここは医務室さ。 おめでとう、神田冷基くん。 君は見事、血魂に成功した。よって、正式に君の依頼を受諾する。 …ーーーということでさっそく必要事項を聴取して、依頼書を作りたいんだけど…体は平気?時間はある?」 「……平気だ。…今何時?」 「朝の9時だね。バッチリ8時間眠っていたし、今日は土曜日で学校は休みだと思うけど、家の人は大丈夫か? もうまる3日帰っ
「冷基!」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ーーーーーキーンコーンカーンコーンーーーーー 「……………んー?なんだ、うるしか。 ……なんだよ、せっかく気持ちよく寝てたのに」 「屋上で寝てる場合じゃねえ!噂の転校生が早速先輩たちに呼び出されたぜ。どうする?助けに行くか?」 「……ふわあぁーーっと…。 ……転校生……あーなんか朝、先公が言ってたな。つか行かねえよ、何で俺が」 「可哀想じゃん?来たばっかなのに、ち
ーーーーーギュッーーー…! 「ーーー…ッおい、おいおいおい! 何してんだ、てめえ!」 「勝負、受けるんじゃろ?なら大人しくしとれ」 「いやいやいや、おかしいだろ!なんの勝負だよっ!?血抜き勝負でもしようってのかあ!?」 「そのまさかじゃ。今からお前さんの致死量ギリギリの血をこの注射器を使って抜いていく。生き残れたらおぬしの勝ちじゃ」 「なっーーー、」 「どうじゃ、シンプルで頭の悪そうなお前にもわかりやすいじゃろ?カカカカ!」 「…ーーーっのクソババア!!やっぱ
ーーーーガーッーーーー 「いらっしゃいませ」 ポタ…ポタ…ッ… 「お客さん、びしょびしょのドロドロだね。傷だらけだし…、その様子だと傷薬をご所望かな?」 ーーーースタッ…ーーーーー 「てめえが俺にメールよこしてた”S”か?」 「さあ?なんのことやら」 「しらばっくれんじゃねえ。…ただでさえ数日振り回されて疲れてるし、俺ぁイライラしてるんだ。 しら切るってんなら吐かせてやるぜ!」 「野蛮だなあ、なんのことを言ってるの?」 「これだよ、これ!」 ーーーーバッ
「ーーーーーどこだよっ!ここっ!美都市じゃねえじゃねえかっ。 うるしの野郎、オオボラ吹きやがって…」 ーーーガサッーーー… ーーーニャアアーーーー 「うわっ、ビックリしたっ!!脅かすなよ、猫かよ!! …あ~もう、なんなんだよ…。 うるしの送ってきたこの地図通りに来たら次々あそこ行け、ここ行けと指示がきやがる。。そして行くとこ行くとこで喧嘩売られるしよぉ。 うるしの野郎、俺の連絡先をワケのわからんサイトに登録したに違いねえ。帰ったらシメる…。」 ーーピコンッーー
ーーーカランカランッーーー 「いらっしゃいーーー…って、富雄ちゃんか。どうしたの?」 「やあ、久しぶりだね。富雄くん。髪切りにきたの?」 「やっほー、おばちゃん、おっちゃん。神田いる?」 「ははは!富雄くん、いつも言ってるけどさ、この家全員”神田”だからね!」 「しょーもないこと言ってないで早く片付けて!19時のお客さんもう来るから!」 「はははっ。はいはい、そうだねえ」 「ったく…、店じまいしたら好きなだけ打てるんだから、客席で牌を広げないで欲しいわ…。」
ーーー居酒屋 うるしーーー 「あのバチ当たり野朗め。 ーーー…とはいえ。 俺も自殺とは思えねえんだよなあ」 「富雄ー!早く降りてきて手伝ってー!」 ーーーピコンッーーー 「へいへい、ちょいまち。ライン見てからな。 ったく、今帰ってきたばっかりだっつの」 ーーートンッ、トンッーー 「お店忙しいから美羽(みう)と羽莉(うり)をみてて!!」 「ほいよー」 「ほらっ、あんた達。お兄ちゃんと遊んでな!」 「はーい!」 「トミーくん〜♡」 「おおー♡メシ食ったんかー
『20◯◯年9月9日午前3時頃、◯◯区の32階建ての商業ビル屋上から飛び降り男性が死亡。即死でした。 遺体は損傷が激しく身元の判別が難しい状態でしたが、ビル屋上に残された所持品は美好萌人(ミヨシモエト)さん(19)のものと判明。 その後ご家族の協力のもとDNA鑑定が行われ、鑑定の結果から遺体は本人であると断定されました。 美好萌人さんはその若さでカリスマ音楽家として若者から絶大な支持を得ていました』 「…………」 『巷はパニック状態…。 “何かの間違いであって欲し