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【1章】 1.始まりの自死

『20◯◯年9月9日午前3時頃、◯◯区の32階建ての商業ビル屋上から飛び降り男性が死亡。即死でした。

遺体は損傷が激しく身元の判別が難しい状態でしたが、ビル屋上に残された所持品は美好萌人(ミヨシモエト)さん(19)のものと判明。

その後ご家族の協力のもとDNA鑑定が行われ、鑑定の結果から遺体は本人であると断定されました。

美好萌人さんはその若さでカリスマ音楽家として若者から絶大な支持を得ていました』


「…………」


『巷はパニック状態…。

“何かの間違いであって欲しい“

“彼が自死を選ぶはずがない“

そういった若者の声も虚しく…ご自宅からは遺書らしきものが発見されたとのことです』





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「ありえねえ…」

ーーーーーザッ…

「あっ、おい!どこへ行く!?神田!線香っ!上げねえとだろ!?」

「るせえ。やってられっかよ、こんな茶番」

「っ………。

あっ、おい 待てっ!てめえ!オバちゃんから持たされてたコーデン貸せっ!」

「ああ?うっせえなあ」

ゴソッ……

「…んな端金、奴あ求めちゃいないだろうぜ」

「はあ〜?コラ、待て!さすがにそれくすねて遊ぶのはいくらお前でもバチ当たりってもんだぜ」

ーーーースタッ…

「昔からの付き合いなんでしょ?むこーもお前に常識求めちゃいねえだろうが…。最後の見送りくらいしてやれよ…!

浮かばれないでしょうが……!!」

「チッ……。どいつもこいつも泣いて喚いてるこの状態で、浮かばれるもクソもねえだろうが

巻き込まれる方はなあ…」

「うわああああああ…!」

「「……」」

「…巻き込まれる方は?」


ーーーーぐるッ

「!!??」

「たまったもんじゃねえんだよ!」

「顔こわっ!」

「フン!」


ーーーーズンズンッーーー!

「あっ!まじで待て!香典!!香典だけでも置いてけっ。

俺がっ!怒られんだろうが!
お前のカーチャンに、俺がっ!」

「知るか!クソッタレが!おらよ!」

ーーバチーンーーー!!

「ぶぐぁっ…いってえ!クオラ!金を!!」

ーーーひらっーーーー

「しかも香典を!人様の面に投げ捨てんじゃねえ!!

縁起悪ィでしょうがあ〜!!」










“美好萌人“のお別れ会場“にてーーーーーーーー


2人の学ラン姿の若者が出入り口付近で割と大きな声で香典を投げつけるやりとりをしていたが、大して目立ったり注目を浴びることも、ほとんどなかった。

何故なら大規模の葬儀会場では大音量で音楽が流れている上、見た目も派手な若者達で溢れかえっており、皆が各々に大声を上げて泣いたり喚いたりと騒々しかったからーーーーー。


























下書きネーム 香典






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