島原のラーメン屋台
熊本出張と長かった懇親会を終え、迎えた土曜日の朝。
もちろん、そのまま帰るわけにはいかない。ここからが、出張の本番!
ホテルを抜け出し、朝から熊本城にのぼり、熊本の街をお散歩。
なかなか年季の入った市電が、熊本の街を走り抜けていく。
賑やかな鶴屋百貨店前。ここが、熊本の中心だ。
旅は続く。熊本港から、九商フェリーに乗り込む。
さあ、島原半島へ!
フェリーのデッキに出て、海を眺める。
なににも代えがたい贅沢。缶のカルピスがうまい。
あれが金峰山か。あれは天草か。
そして前方に、そびえ立つ山。あれが、雲仙普賢岳か。
海。山。すれ違うフェリー、漁船、高速船。
普賢岳が眉山の後ろに隠れ、フェリーは島原外港へと着いた。
鮮やかな黄色の島原鉄道で、島原の街へ。私鉄ならでは、漁師町の軒先をかすめるように走る。車内に差し込む日の光は、早くも夏のそれである。
島原城を正面に見るホテルの部屋のテレビで、照ノ富士8回目の優勝を見届ける。
さあ、島原の街へ繰り出そう。
ガンバ寿司、ぐぞうに、寒ざらし。
ガンバ寿司とは、フグの押し寿司のこと。これが、とてもうまい。
満腹の多幸感を、温泉で増幅させる。
さあ、シメはラーメン。
島原城のすぐそばに、その屋台はあった。
笑顔がステキなおばちゃんとおっちゃんが営んでいる。
闇に浮かぶ屋台の、優しい光。
屋台に書かれた「酒、ラーメン、おでん」。それは、幸せの呪文。
ラーメンはもちろん、とんこつ。九州の味だ!
珍しい「餃子おでん」をつつきながら酒を飲んでいると、地元の人たちが次々と屋台に集まってきた。元ボクサー、医者、おじさんラグビー軍団。
元ボクサーは相撲に詳しく、大相撲トークで盛り上がる。
空手教室の帰りのちびっこたちも、おじいちゃんに連れられ屋台へ。
空手着の女の子が、僕の隣で美味しそうにラーメンをすする。
「ラーメンが食べたくて、来たと!」
常連さんたちが「カクエイちゃん元気かな〜」とか言っているので、田中角栄?と思って聞いてみる。顔が似ているんですか?
「田中角栄、同姓同名とよ!」
なるほど。田中角栄も来る屋台!
平和で賑やかな屋台の横を、けたたましい音とともに暴走族が駆け抜けた。
でも、なぜかみんなあまり迷惑そうではない。
なんでも、暴走族の兄ちゃんたち、たまに屋台を手伝ってくれるんだとか。
「走り方は悪いばってん、とても良い子たちとよ〜」
あったかい島原の屋台。予定外にもう1杯、レモンサワーも飲んで、酔っ払ってしまった。
帰ろう。屋台の写真を撮っても良いかな? おっちゃんに聞くと、
「良いよ、おばちゃんの顔のアップでも撮ってくか?」
人生は旅。
屋台で食べるラーメンが、おでんをつついて飲む酒が、旅を彩る。
きっとまた、来るよ。
0時30分、ホテルの窓から街を眺めると、まだまだ賑わっている屋台の光が見えた。
長い島原の夜が、更けていく。