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【短編朗読】天使と幽霊

はい、私、幽霊なんです。
っていっても今さっきそこで死んだばかりなんで自分で幽霊というのも違和感があるのですが

え?あー、交通事故ですよ
あそこの交差点です
救急車とかパトカーとか凄かったでしょ?

すみませんねお騒がせして
っていっても私のせいじゃありませんけど

トラックがいきなり歩道に突っ込んできたんですよ
私に向かってですよ?どんだけの確率ですか?ワンチャン誰かが殺し屋を私に差し向けたのかと思いました

でもそのトラックも宅配の車で長時間労働の居眠り運転だったらしいです
まあ、その運転手は助かったんですけどね

結構有名な会社ですし私死んじゃってますからねーこれから大変そうですね
まあ、同情なんかしないですけど

あ、そういえば
貴方はなんで私が見えて話せるんですか?
霊感とか強いタイプですか?
私が強い方なんでそういうのには慣れてるんです

あ、名刺?どうも。
え、貴方が天使さんなんですか?
スーツ着て、眼鏡かけて七三分けで
絵に書いたようなサラリーマンですけど

あー、なるほど、死んだ方が驚かないように姿を変えているんですね

え?前に驚かすなと激怒されて
天界に連れていくのに苦労したと
はぁー、天使さんも大変なんですねー

わかります
私も営業をしてましたからそんなこと山ほどありました
こないだなんて…

え?飲みにですか?
いいですけど、この姿で飲めるんですか?

飲み放題に食べ放題?
まじですか?

じゃあ、行きましょー
こんなもやもやした気持ちで
天国なんて行ってらんないですからねー

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