2018年早慶戦55mドロップゴールの秘話
まず一度動画をご覧ください。
Twitterにて質問箱を初めてはや10日ほど経過しました。
質問の多くが「パス」「キック」に関することでした。
その中でも多数の質問としてこのドロップゴールに関する多くの質問をいただいたので、投稿2回目ですが、このシーンの秘話を書くことにしました。
■なぜドロップゴールを蹴るに至ったか?
・時間および点差
・気候
・ルール理解
の3点が要素として挙げられます。
●時間および点差
先程の動画をよく見ていただけるとわかりますが、このシーンは前半24分のプレーです。
まだ点差は0対0でした。
お時間のある人はそれまでの流れを見ていただきたいのですが、このシーンまでの流れはどちらのチームも安全策としてキックを多用していました。
大学ラグビーでは初めの5分間あるいは15分以内でどちらかのチームが先制点をとることができている傾向が強いのに対し、この試合はどちらのミスも少なく拮抗してる状態でした。
その状態がキックオフから24分間も続いたのです。
国民的に有名な早慶戦ということもあり多くの来場者を記録した一戦だったのでかなり見ごたえはあったのかなと思います。
ですが、プレーをしている選手の本音としては「絶対に相手より先に先制点(できれば7点ほしいが5点でもいい、なんなら3点でも)が欲しい」という感情でいっぱいでした。
SOとしていかに得点につなげるのかを考えている中だったのでまずは敵陣でプレーすることが最重要ポイントでした。
●気候
当日の気候(天気)としてはとても恵まれ雲一つない快晴でした。
風は電光掲示板から伊藤忠側に吹いていたので前半だと早稲田は風上(追い風)という状況でした。
前半キックが多かった要因としては早稲田側が追い風ということもあり、積極的にキックゲームにもちこんでいたという背景があります。
ドロップアウトになる1つ前の蹴り合いでも、僕の選択肢は間違っていないと思います(解説のかたもそういってました(笑))。
ただ風上という条件があったため少し長くなりすぎたというところです。
蹴り合いの中で、この日はキックの調子もいいなどの感覚を感じていました。
●ルール理解
皆さまはラグビーのルールをどれほど詳しく理解しているでしょうか?
驚くことにラグビー競技規則に関する本はたくさんあります。
2018年度版ワールドラグビーの競技規則です。
上記は昨年度のものですが、PDFファイルにしただけでも144ページ分あります。
項目別でいうと21項目もあり、初心者の方にはとてもではないですが、ルールをすべて把握することは難しいと思います。
実際僕自身はこのルールの75%覚えているかというところです。レフリーの方ですら100%覚えている人はいないと思います。
なにせルール項目が多すぎることと、そもそもそんなに細かなルールを適用する場面がほとんどないことも事実です。
裏を返せば誰も知らないルールがあるかもしれないということ。
それを活かした戦略、戦術をくしすればそれだけで先手を取ることができます。
そんな考え方を持ちながら普段の練習に取り組むのも面白いかもしれません。
では、本題でこのドロップゴールに関するルールについてです。
「キックされたボールがインゴールを超えてデッドになった場合」についてルールブックに記載されている内容です。
・一方のチームが相手チームに蹴りこんだボールがタッチインゴールに出るか、デッドボールラインを超えた場合、防御側のチームはいずれかの選択をすることができる。
a. 22メートルライン上、または、その後方のいずれかの地点でドロップアウトを行う。
または
b. ボールが蹴られた地点でスクラムを行う。
例外…ゴールキック、または、ドロップゴールが不正解だった場合、これらの場合、防御側のチームが22メートル地点でのドロップアウトで試合を再開する。
もうお気づきですか?
そうです、この例外と書かれている部分がキーポイントなのです。
あの場面で仮にドロップゴール成功ならなかった場合はまた慶応ボールのドロップアウトで試合再開となるのです。
もちろん、キックが飛ばずデッドボールラインを超えない可能性がありますが、インゴールのまでボールが届き、それを慶応側がおさえればまたドロップアウトだったのです。
1つ前のキックが伸びてしまい、インゴールまで転がった時点でこのルールが頭に思い浮かび、3度くらいはドロップキックをお互い繰り返し、テニスのラリーのような勝負をすることをまず考えました。
この3つがドロップゴールを狙うという判断にいたった要素です。
■本当には入るとは思っていなかった(秘話)
これまで、蹴るまでの過程の話を書き連ねましたが、実際は入るとは思いもしないまま、蹴るという判断をしました。
では、なぜ入らない(成功しない)と思うプレー選択をしたのか?ですが、この答えは簡単です。
理由は二つ。
・1つ目は、相手の選択肢を制限できるからです。
あの試合点数が動かずの状況だったためドロップアウトになった瞬間、相手が長めのキックを蹴ってくることは容易に想像できました。
その返答としてドロップゴールという選択をしました。
では、これが外れもう一度ドロップアウトになった場合相手は次にどういう選択をするでしょうか?
それを相手に考えさせれた時点で流れは自分側にあります。
相手の選択としては、長く蹴りたいけど真ん中目に蹴るとまたドロップゴールを狙われてしまうという怖さ。
もしくは、陣地はかせげないが自陣10メートル付近からDFを始めるかの2通りがすぐに思いつきます。
というところまで考えれた場合、やはりゴールが成功するかしないかは関係なく蹴る意味合いが出来るということです。
・2つ目は、会場の雰囲気を味方にできるからです。
例年2万人を超える観客を動員する早慶戦ということもあり、やはり会場の雰囲気、声援はとても後押しになります。
ある種、魅せるプレーもSOとして大切だと思っています。そのプレーがあるないでは応援してくださる方から声援によって生み出されるが確実に違うからです。
これらの要素3つと要因2つから蹴るという判断に至りました。
これらが、あのインゴールにボールが入り、置かれ、ドロップアウトとして試合が再開されるまでの時間で僕自身が考えていたことです。
●余談
・試合映像では横からの映像しかありませんが、実際に縦(電光掲示板から伊藤忠側)に試合を見ていた方はわかるのですが、蹴ったボールははじめポスト右側に飛び、風に流されポストの真ん中を通ったのです。正直、「あ、外した、、。」と思いましたが、当日の風に助けられました。というエピソードがありました。
・もう1つのエピソードとして、これだけの考えを思いついていたで、後ろに立っている人たち(近くにいた齋藤、河瀬を中心に)には「捕ったらパスをくれ、DG狙う」と、高らかに宣言していたこともありました。あの場面で外していたら恥ずかしいところでした。
・またこの記事を書きながら思いついたのですが、先ほどの2018年度版ワールドラグビーの競技規則の51枚目に以下のような文が記載されていました。
4. いずれのゴールも 、ボールが蹴られて 、味方 、または 、地面に触れることなくクロスバーの上を越え 、かつ 、ゴールポストの間を通過すれば成功となる 。
ということは、ドロップゴールを狙ったボールがDFチームの手等に当たった場合、クロスバーを越え、ゴールポストの間を通過しても得点にはならないはずです。
では、そのままデッドゴールラインを超えた場合はどうなるのでしょう?DF側が持ち込んだボールがデッドゴールラインを超えたので、蹴った側ボールのインゴールから5mの地点でスクラムとか??
謎が多いですが、今日の記事で伝えたいことは、しっかりとルールを理解することの大切さです。あまり詳しいルールを教えてくれる人はいないのでルールマスターを目指してみましょう!!