時をかける山岳フリマ #毎週ショートショートnote # 山岳フリマ
私はAI富豪として成功を収めたアンドロイドである。金と時間はくさるほどある。バリ登山が好きなので、火星で開催される《時をかける山岳フリマ=オンライン版・人類主催》に参加した。今回の出品マウンテンは8山。①八甲田山(青森)②魔の山(小説。20世紀ドイツ文学の最高傑作のため没)③鈴鹿山(滋賀・三重)④高見山(ハワイ・日本。人のため没)⑤エベレスト(ネパール・中国)⑥八海山(新潟。酒しか出品しなかったので没)⑦かちかち山(山梨)⑧野毛山(日本)。自然環境、文化的価値、やはりコストパフォーマンスも重視して、③の鈴鹿山を選んだ。億単位の金が動いた。だが、この買い物は失敗だった。ご承知のように坂口安吾が、怪しく美しい残酷女と男の孤独を『桜の森の満開の下』とい短篇小説に描いている。「契約約款」の中ほどに通常フォントの半分のポイントで、以下事項が表記されていて、見落とした。現在、裁判係争中。『※尚山中に埋蔵されたる人体の処理は生死に関わらず本フリマにおける購入者乙が責任をもって行うものとする』臭いのなんのって。合成金属樹脂製の鼻でさえ曲がってしまった。本文476文字。