忙しいのにアンニュイ
こないだ、オカンの22年前の写真を、偶然見ちゃった。女子短大の家政学部やったんやて。誰も信じられへんと思うけど、オカン、あだ名が〈あんにゅい・えみこ」
「落としたいボーイがそばに来よったら、しとやかに春風みたいに、ふわー っ、くるりと一回転するん。どんなイケメンもいちころや」
うち、おもろなって、よーく観察したんや。今のオカンは、身体はセイウチ、顔は泉谷ピン子。22年前は、ガッキーの面影ありってとこ。
実は先週、オカンがおかしなこと言いだしよってな。
「オカンの誕生日やし。たまには面白いイベントやってくれへんかなぁ」
オカンの小鼻がひくひく痙攣とる。何か企んでる顔やな、と、うちは、とりあえず納得したんや。
オカンがあッこまで才能のある人とは、わらんかった。
「この家に、なっか、記念になるものを創ってくれや。そうや22年前を思い出して「アンニュイなもの作ろ!」
ほんま言うと、ふたりとも店もってるし。 掃除・洗濯・御飯づくり。それに秋祭りに備えて、 笛、太鼓の練習、せえならんかった。忙しゅーて目が回るほどやった。でもお互い意地があるさかい、がんばったんや。
遂に、誕生日の日、せーっノ、で互いの考えたものを見せあった。うちは謎掛けをつくった。
「アンニュイは妖艶でっしゃろ。アンニュイと掛けて、自動車教習所に通う人と説く。その心は………」うちが喋ってるそばから、オカンたら、
「酔うえへん、やろ。そんなん、あかんでぇ、すぐ分かる。わいの勝ちや」
「オカンは何やの」
「これや!」と、出したのが「アンニュイ豆腐」
※見出し画像がそれ。普通のケーキのスポンジ部分を杏仁豆腐で作ったと
いう。
オカンにはかなわんは。
今、オカンの中華料理屋で人気メニューらしいで。
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