『天保陰間艶暦』(てんぽうかげまのつやごよみ)毎週ショートショートnote |お題【釜揚げ師走】
西暦1840年頃、江戸・天保年間に隠れたベストセラーあり。「由緒正しき陰間(男色)衆」、元旦零の刻に【初春釜祈祷】を成す。下腹の神(髪)を尻へおしあげ、阿弥陀様にご高覧いただくをもちて、一年の男色の感度至高、直腸内安全を祈願せり。
その様を活写せし書物が『天保陰間艶暦』(てんぽうかげまのつやごよみ)なり。当時、人々は今日より気軽に男色を愉しめり。下の髪を結いあげる職人こそ、通常の髪結いの上を行く技量を必要としたと評判なり。故に彼らは【釜揚師たち】(かまあげしたち)と呼ばれ、尊敬を集めたと本書の言う。一般庶民と同じく、12月師走は誠に多忙なり。
そうした歴史的背景をふまえ、〝大江呂文化研究所〟の十返舎颯介所長は次のように教えてくれた。
「江戸の滑稽本には、よく『私も小間物で商いさせていただいております。〝釜揚師走〟で、神様に足を向けて眠られませんわ』とか『釜堀り一年、釜揚げ五年』と書かれていますが、みな神への敬いの気持ちなのです」御仕舞い