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忘却

あの日より前に設定した目覚ましのアラーム音を、敢えて変えずにいる。遠ざけるように変容したくなかったから。
6/14 いつもの目覚ましなのに、Luna Parkを聴きながらしみじみと(ああ、もう生で聞くことは叶わないんだな)と思ってしまい、急に寂しさが襲ってきて10日日ほど、寝食が疎かになるくらいに酷く落ち込んだ。
体内時計が(そろそろライブじゃないかな、公式チェックしなきゃ)とうるさく誤報を告げている。
花を愛でる、勉学に励むなどしてどうにか気持ちを前向きに立て直したが
7/15 寝起きに声を聞くとなぜか強烈に鮮明にあの人の笑った顔が脳裏に浮かんだ。寂しい。
いつまでこんな風に思い出せるだろう。
いつか悲しさも寂しさも薄れる時にはきっともう、微笑みに刻まれたささやかな皺とか、聞き取れないくらい微細な声のゆらぎとか、周辺1cmくらいに纏っている空気の暖かさとか、瞳の奥の優しい光とか、そういうデータには書き込まれていない彼に関する記憶が、いつか忘却の向こうに行ってしまうんだろう。
そう思ったら両目から涙が静かに溢れた。さみしい。

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