【紹介】スマートフォン版音声ガイド「聴く美術」を使ってみました。


はじめに 

 駄洒落でお話を書くことと、博物館が好きな散財と申します。

 先日初めて存在を知りました、スマートフォンで聞ける音声ガイド「聴く美術」。実際に試してみて、これは便利と思いましたので、使用する際の注意点なども含めて、軽くご紹介したいと思います。

【1】「聴く美術」とはなにか

 「聴く美術」は、スマートフォン用アプリです。

 Android版とiOS版があり、株式会社アコースティガイド・ジャパンより、2019年から提供されています。

 アプリ本体は無料で提供されており、中身である音声ガイドのデータをアプリの中で購入(正確にはレンタル)し、スマートフォンにダウンロードして視聴する、と言う感じで使用します(無料のコンテンツもあります)。

 音声ガイドのデータは、美術館・博物館の特別展、直近では国立科学博物館のミイラ展や、東京国立博物館のポンペイ展など、それぞれの音声ガイドごとに買い切りとなっています。

 買い切りといま表現しましたが、これは例えば、月額などの定期的な課金が発生するわけではない、と言う意味です。
 一回支払をすれば、あとはいつまでも聴ける、と言う訳ではなく、利用期間には制限があります。後述しますが、この点はご注意が必要。
 買う、と言うより、数ヶ月単位の長期間でレンタルできる、と言うイメージです。

 こちらの会社から音声ガイドが提供されていない施設や展示については、「聴く美術」で視聴することができません。その場合は通常の音声ガイドの機械か、もしくは他のサービス等を利用することになります。

 じゃあ「聴く美術」で視聴できる音声ガイドはなにかと言うことですが。アプリ内でも、近日公開予定のガイドを見ることができますし、公式Twitterアカウント等での告知などでも確認することができます。特別展であれば、公式サイトに告知が載りますので、そちらが一番確実ですね。

【2】使い方~事前準備

 つづいて、実際のアプリの使い方についての流れを説明します。
 使用したのはAndoroid版のみですが、iOS版もおそらく大きくは変わらないと思われます。

 アプリをインストールして起動すると(恐らくは、最新データをダウンロードしたあと)、何らかの音声ガイドの紹介が、大きく表示されます。
 この画面を左右にスワイプすると、購入となる音声ガイドが切り替わっていきますので、目的の音声ガイドを探してタップ。

 そのガイドが有料であり購入可能であれば、「このツアーをアンロック」の表示と、ガイドの購入金額が表示されますので、ほんとにあってるか確認の上、タップして購入します。

 Androidの場合はgoogle playでの支払となり、「聴く美術」アプリやサイトに、クレジットカードなどの支払情報を登録することはありません。
 確認していませんが、iOS版ではApp Storeでの支払になると思われます。

 また購入までの一連の作業は、アプリ画面左上のメニュー(Ξ)から、「ダウンロードを管理」を選んでも行うことができます。
 というかまあ、目当てが決まっていたら、たぶんこっちの方が早くて便利です。

 音声ガイドを購入した、または無料の音声ガイドを選択した場合、音声ガイドの容量とともに「このツアーをダウンロード」の表示が出ますので、そのままタップして音声ガイドをダウンロードします。
 ちなみにダウンロード先を選択することはできず、必ず本体へのダウンロードとなります。
 ほとんどの音声ガイドが、利用期限付きのコンテンツとなるため、これは致し方ないこと。

 ダウンロードが終わったら、音声ガイドを利用する準備は完了です。
 購入した音声ガイドをタップすると、再生できるガイドの内容一覧が画面に表示されます。
 まずは一番上にある、お願いを必ず確認。
 あとはスマートフォンと、愛用のヘッドフォンなりイヤホンなりを用意して、いざ博物館へ。
 展示会に入場して、音声ガイドの指示に従って。音声ガイドを聴きながら、ほうほうふむふむと展示物を鑑賞すればよい、と。
 だいたいそんな感じの寸法です。

 ちなみに、会期がまだ始まっていない、などの理由で、まだ音声ガイドが提供されていない場合(画面のどこかに「予告」の表示があると思います)、アンロック画面ではなく、対称の特別展の公式サイトが開きます。

【3】「聴く美術」の良い点3つ

 音声ガイドと言えば、馴染みがあるのはヘッドフォンごと貸してくれる機械式。
 そんな機械式の音声ガイドに対して、スマートフォンを使う「聴く美術」が良い、と思える点は、以下の3点にまとめてみました。

1.持って帰れる、繰り返し聴ける

 何と言っても最大のメリットは、繰り返し聴ける、と言う点。

 機械式の音声ガイドは、施設の中での利用になるため、当然のことながら返却しなければならず、返却したらもう聴くことはできません。
 「聴く美術」での音声ガイドは、物理的に返却する、と言うことがないため、場所も時間も選ばず、いくらでも聴くことができます。
 展示会を出て、家に帰ってから繰り返し聴くことももちろんできますし、図録を読みながら、音声ガイドを聞き返す、と言うこともできます。
 やろうと思えばですが、遠隔地で開催され、行くことができない展示会に対して、音声ガイドだけを視聴する、と言う荒技だって出来るわけです。

2.自前のヘッドフォンで聴ける

 前提として、スマートフォン本体のスピーカーから音を鳴らすのは御法度。「聴く美術」を使うに当たって、イヤホン、ヘッドフォンは必須となります。
 その上で、レンタルの機械とヘッドフォンではなく、普段使っているお気に入りのイヤホンやヘッドフォンを使って音声ガイドを聴くことが出来るのは、これは大きなメリットと言えます。

 ことに左右分割の完全ワイヤレスのヘッドフォンを持っているのであれば、快適さは桁違い。
 機械式の音声ガイドで、ヘッドフォンが合わなくて耳が痛くなったり、ケーブルが髪の毛とか眼鏡とか、とにかくこんがらがってぐしゃぐしゃになった経験がある方には、これだけでかなりのお勧めです。

3.「聴く美術」版のみのボーナストラックがあることも

 これは音声ガイドの内容に関わることなので、必ず、とは言えないのですが。
 機械式のガイドにはなく、「聴く美術」アプリだけでしか視聴することができないボーナストラックがあることも。

 東京国立博物館のポンペイ展では一つ、展示の内容と言うよりは、視聴者サービス的なボーナストラックがありました。
 また兵庫県立美術館のガイドでは、アプリ内で博物館の見取り図を表示することができ、音声解説のある展示品がどこにあるかを確認することができます。

 アプリの柔軟さを生かして、機械式のガイドにプラスアルファされた音声ガイドを視聴できる可能性があること。これが三つ目のメリットです。

【4】「聴く美術」の注意点3つ

 一方で、事前に気をつけなくてはいけない点もあります。
 こちらも3点にまとめましたので、利用する前にあらかじめご確認ください。

1.機械式のガイドと、費用が異なる場合がある

 二、三例しかチェックしていないため、「異なる」と、ぼやかしましたが、どうも金額的には機械式のガイドよりも高くなるようです。
 また学割などの値引きサービスも、機械式にはあるけど「聴く美術」にはない、と言う例もありました。こちらは仕組み的にも難しそうです。

 ただ、リピーターとして複数回展示を訪れるような場合は、逆に毎回音声ガイドをレンタルする必要がありません。
 だいぶ限定的な状況ではありますが、そう考えればメリットにもなりえます。

2.音声ガイドに有効期限がある

 これは良い点1の裏返しとなるのですが、購入した、と言うか、支払を行った音声ガイドは、いつまでも無期限に使えるわけではありません。
 各音声ガイドごとに期限はそれぞれですが、有効期限のある、一定期間のみでの利用となります。

 実際には、一回支払をすれば、間違いなく対象となる展示の会期末までは聴くことができますし、期間にすれば数ヶ月、と言う長いものにはなるのですが、決して音声ガイドを「購入」したわけではない、と言う点は、予め理解しておくことが必要です。

 購入した、と言う表現が良くないと思うのですが、少なくともgoogle playでは支払時に「購入する」と表示されてしまいますので、これは致し方のない所です。

3.アプリの挙動がやや不自由

 これは利用しているOSや機種に大きく依存することですし、人によってまちまちだとは思うのですが。アプリの挙動に、やや不自由さと言うか、慣れがいるんじゃないかな、これは、と思うところがありました。

 例えば、音声ガイドを視聴中の画面。基本的に、画面の上半分には、いま解説されている展示品が表示されています。
 表示のすぐ下には「拡大」の文字があり、これをタップすると、いま聴いている音声ガイドが流れたまま、少し大きく展示品が表示されるのですが、ここで拡大を止めようと「x」をタップすると、音声ガイドの再生がストップし、再生場所も最初まで戻ってしまいます。

 また、「聴く美術」から、他のアプリ、たとえばカメラなどに切り替えて、もう一度「聴く美術」に戻った場合。アプリを終了していなくても、音声ガイドの最初の画面まで表示が戻ってしまい、もう一度最初から、どのガイドを聴いていたかを探さなくてはいけません。
 ちなみに、音声ガイドを視聴中、音声を流したままで他のアプリに切り替えると、再生は途中で終了します。こちらはまあでも、著作権保護などがあると思いますので、致し方ないことではあると思います。

 このあたり、極めて不自由、と言うほどではないのですが、手放しでお勧めするには、振る舞いに若干の癖を感じます。
 そのあたり、こういうものだ、と飲み込んで使う感じになりますので、事前に注意しておかなくてはいけない点だと思われます。

【5】おわりに

 どうしても気になる点もあったため、それらもつらつらと書いてしまいましたが、それでも非常な利便を感じるアプリでありました。

 音声ガイドはいいなあ、図録みたいに売ってくれないかなー、と言うのは、個人的に前々から思っていたことで。
 前々から思っていたわりには、2年近くもこのアプリの存在に気付いていなかったわけで。自分の不明を恥じ入るばかりです……

 すでにご利用になっている方には、何を今更、と言うことではあると思いますが。
 便利な点、気になった点、もろもろありましたので。自分なりにまとめさせていただきました。

 このアプリ、なんか見かけたけど、どうなんだろ? と言う方に向けて。なにかの参考になれば幸いです。

【6】メモ(操作方法などの補足)

 端末ダウンロードした音声ガイドは、メニューの「ダウンロードを管理」から、「編集」をタップすると削除が可能。

 削除した音声ガイドも、購入情報は残っているので、「ダウンロードを管理」画面などから再ダウンロードが可能。

 アプリのキャッシュを削除した場合、アプリそのものを削除した場合の挙動については未確認。

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