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「実績の作り方」 – 未経験から仕事につなげるには?
esports業界でキャリアを築く上で、「未経験」というハードルは想像以上に高い。多くの業界では、新卒採用枠や研修制度が整備され、経験がなくても少しずつ成長できる環境がある。しかし、現状のesports業界ではそうした枠組みはほとんどなく、「すぐに戦力になれるかどうか」が問われる。そのため、実績がなければ仕事を得られず、仕事がなければ実績を作れないというループに陥ることも珍しくない。この状況を打破するために、まず必要なのは「自ら実績を作る」ことだ。esports業界における実績は、必ずしも企業や団体での職務経験を指すわけではなく、個人の活動を通じて価値を生み出すことでも積み上げることができる。
では、仕事につながる実績とは何か。それをどう効果的に作り、どのように活かしていくべきか。未経験から業界への足がかりを築くためのアプローチを考えていこう。
実績を作ることがなぜ重要なのか
esports業界に限らず、どの分野でも「スキルがある」ことと「実績がある」ことは大きく異なる。実績とは、単にスキルを持っているという自己申告ではなく、「実際に何かを成し遂げた」という客観的な証拠である。企業やチームは「成果を出せる人」を求めるため、スキルを持っているだけでは業界に入り込むことは難しく、実績として証明することが求められる。
例えば
「イベント運営の経験があります」 → スキル
「○○の大会を運営し、平均参加者数を2倍に増やしました」 → 実績
「動画編集ができます」 → スキル
「選手のYouTubeCHの登録者を半年で5,000人増やしました」 → 実績
「ゲーム内最高ランクです」→ スキル
「大会での優勝経験が○回あります」→ 実績
このように、単なる「できる」という言葉だけではなく、具体的な成果を示すことで、業界内での評価が大きく変わる。
実績を作るための具体的な方法
未経験の状態から実績を作る方法は、大きく「自主的な活動」と「外部プロジェクトへの参加」の二つに分けられる。
まず、未経験者でもすぐに始められるのが自主的な活動だ。たとえば、配信技術を学びたいなら、自らTwitchやYouTubeでチャンネルを運営し、視聴者を増やす工夫をする。大会運営を目指すなら、小規模なコミュニティ大会を企画し、実際に運営を経験する。こうした活動は規模が小さくても、十分に実績として評価される。特に、「どのような課題に直面し、それをどう解決したのか」を具体的に示せると、より高く評価されやすい。
さらに、業界の現場に関わる機会を得るためには、外部のプロジェクトへの参加も重要だ。ボランティアやインターンを活用すれば、実践的な経験を積みながら、業界の流れを学ぶことができる。たとえば、大会配信の補助スタッフとして関わったり、イベント運営を手伝うことで、現場での実務経験を得るだけでなく、人脈を広げることにもつながる。
こうした機会は、公式の求人サイトではなく、業界関係者のSNSやコミュニティ内で募集されることが多いため、積極的に情報を収集し、関係者にアプローチすることが効果的だ。イベント終了後には、関係者に感謝を伝えるとともに、フィードバックを求めることで、自分の成長につなげることもできる。
実績を「仕事につなげる」ための流れ
実績を作っただけでは、それを仕事につなげることはできない。次に重要なのが、「作った実績をどのように発信し、どのようにアピールするか」という点である。まず、作成した実績を適切に整理し、ポートフォリオとしてまとめることが必須となる。ポートフォリオには、単なる経験の羅列ではなく、「何を成し遂げたのか」「どのような成果を出したのか」「どんな課題を解決したのか」を明確に記載することが求められる。具体的なデータ(視聴者数の増加率、大会参加者数の推移、スポンサー獲得数など)を用いることで、説得力が増す。
次に、ポートフォリオを適切な場で発信する。多くの人は「実績があれば、誰かが見つけてくれる」と考えがちだが、実際には業界内で自らアピールしなければチャンスは回ってこない。SNSなどを活用し、業界のトレンドについて発信しながら、自身の実績を定期的に共有することが有効な手段となる。また、業界イベントや大会に積極的に参加し、直接関係者と交流することも、仕事につなげる重要な要素だ。特に、ネットワーキングの場では、「過去にどのようなことをしてきたか」を簡潔に説明できるように準備しておくことが求められる。
成功例と失敗例
実績を作る過程で、成功したケースと失敗したケースの違いを理解することは非常に重要だ。たとえば、プロゲーマーとしてのキャリアを築こうとした二人の選手がいたとする。
一人目の選手は、競技シーンで実績を積みながら、自身のプレイスタイルを分析し、SNSや動画で積極的に発信を続けた。大会のプレイ内容を解説し、自らの成長過程を公開することで、視聴者や業界関係者の注目を集めた。さらに、対戦相手の研究や新しい戦略を積極的に取り入れ、プレイヤーとしての成長を可視化した。その結果、スポンサー企業やチームのスカウトを受け、プロとしての道を切り開くことができた。
一方で、もう一人の選手は、同じように大会に出場し、それなりの成績を残していたが、実績を適切に発信しなかったため、業界内での認知度が低いままだった。SNSの更新頻度が低く、自分のプレイスタイルや強みを明確にアピールする機会がなかったため、関係者の目に留まることがなかった。その結果、仕事のオファーもなく、「大会成績はあるが、次につながらない」という状況に陥ってしまった。
このように、実績を作るだけでは不十分であり、それを「どのように伝えるか」が成功と失敗を分ける大きな要因となる。
チャンスを引き寄せるために必要な準備
未経験から実績を作ることは難しいが、それを「活かせるかどうか」が、最終的なキャリアを左右する。 どれだけスキルを磨き、努力を重ねても、それを適切に伝えなければ、業界内での評価にはつながらない。実績とは、単に積み上げるだけではなく、「どこで、どのように活用するか」が重要である。ポートフォリオを常に最新の状態に保ち、業界関係者とつながることで、偶然のチャンスを確実につかむことができる。特に、esports業界では突発的な案件が多く、急なスタッフ募集やプロジェクトの立ち上げが頻繁に発生する。準備ができている人が、こうしたチャンスをものにできる。SNSやポートフォリオの活用、業界イベントでのネットワーキング、関係者とのつながりを意識することで、実績は初めて価値を持つ。業界の動きを理解し、自分の強みをどのように仕事につなげるのかを考え、実際に行動することが、esports業界でキャリアを築くための決定的な要素となる。
どんなに小さなことでも、ただ経験を積むだけで終わらせず、それを最大限に活かすための準備を怠らないこと。それが未経験からでも仕事につなげ、チャンスを確実に掴むための第一歩となる。
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