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西風が吹けば桶屋が儲かる

西風が吹けば桶屋が儲かる。
そんな格言があったことはすでに若い人たちの頭からは滑り落ちているかもしれない。

決して昔のことを大切にして欲しいという話ではなく、私にとって格言の中には自分の意識しなかった価値を時々知らされることがある。それは新たな発見になる、と私は格言に触れるたびに思う。いわば「温故知新」にも通じるのかも知れない。

私たちは現世の正しい情報をマスコミだけに頼っていてはいけない。
政府を丸呑みで信じてはいけない。
自分で検証する術は持ちたい、と確かにそう思う。

何が自分にとって重要で、何が多くの言葉を塞いでいるかを知らないと物事の本質は見えてこない。
桶屋が儲かるということは、世の中の流通が問題なく順に進んで行き、無意識でも誰もがそれぞれの仕事の価値をリスペクトすることから生まれていた。
しかし今は、材料をひとつひとつ加工してタガでしめて桶をこしらえる技術は日常で求められるものではなくなった。

桶と柄杓_V


利口な桶屋であれば町の西側に立って大団扇で仰ぎ続ければ更に儲かると思いついただろうか。

科学は西風が何なのかを解明しいつかは砂埃を減らすことができるだろう、目の病は治療できることが増え、三味線は既に日常ではないものの、猫がそれほど単純な生き物でないことも承知して、ネズミがかじろうが現代の桶は100円で簡単に手に入る日用品になった。

今や西風のお陰で手作り桶の売上が伸びる時代ではない。
むしろ手作り桶の新しい使い方を提案する方が売上には貢献できそうだ。
過去の因果はどこかへ消えてしまったようではあるが、今度は新しい因果が何処かに生まれている。
私たちは当たり前に提供されることを一度疑ったほうが良い。
そうすることによって初めて、大切なものにたどり着けるのだろうと信じている。

新しい風を探すが早いか、新しい桶を工夫するが早いか。
私は心の内でどちらが得策か、そっと探している。

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