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「密」〜リモートラブ〜






エレベーター内の張り紙。



「三蜜注意。」



高層ビルの高層階。 


見下ろす私、見上げる無数。




見えるよ私。

見えてない君。



長い廊下。


パーテーション。

広い大部屋。

私はここで、あなたの部屋は隣。



距離感を保つ。

聞こえるは、こだます会話と、復唱される受注。
同じ台詞と同じ抑揚。

その言葉だけを生み出すための時間と空間のためだけに開かれた扉。

向き合う画面。

奥行きのある。
そっちの世界は、今は晴れ?


あなたという名の知らない誰か。



誰を見てる?

誰と繋がる?



誰かの画面越しの方が近かったり。


同じ空気を吸うよりも、ずっとそっちの方が羨ましい。

女の子だもん。

150分に一回は化粧室でメイクと見え方をチェックする。

半径2メートル以上の距離からどんな風にかわいく魅せる?


ドキドキするの。
気になるの。

どんな風にうつってる?

あなたのために髪を巻いてきたの、って可愛く言えたなら。
かわいい?って聞けたなら。

そんなこんな。


1日5回以上目にする
トイレの張り紙、「三蜜注意。」


パソコン二台を操る私は。

右手のパソコンの端で、あなたを見つける。
目の端で、シャッターを切る。


何もないみたいに、興味なんて何もなくて仕事は作業みたいな顔しちゃって。前髪の隙間から、色恋を仕掛ける。

追いかける。



振り向く。

そらす。


舐める。

そらす。

おいかける。


いかないで。

振り向かないで。

私の視線だけ? 

残さないで。


寂しくなんかないよ?

寂しいよ。



マスクの上から覗く二個の監視カメラは、
暗視みたいなやらしさがある。

見えない内部はどんな感じ?


視線と眼差しだけで語る、伝え合う、
目はとても性的だ。


なんなら、儚くて。

ただ、濡れた眼差しで弄る。

聞こえて欲しい?


吐息が漏れる。

聞こえないでいて。


三半規管を惑わせるくらい強烈なやつで。

それだけで愛おしくて。


愛で染みたブラウスは、
あの新しいシャンプーの香り?


指の先にまで集中してる。
あなたの先端にまで見えるもの。


何も見えてないのに。
そんなところなんか見えちゃって。見えてる気になってなんてない。


でも。

何の意味もないよな。


見えてるのに、見えてなくて。
もどかしい。

見えてないのに、見えてたりして。
もどかしい。


見えてないようで見えるような気がして、
覗き込んでは、塞ぎ込む。

見えないでいて。
見せてみて。


見えるところで鳴るパソコン。
視線は誰かを。

通知は、私を。


ただ文面での小さなとっかかりを、ほどき読むみたいに目を凝らす。


鼓動が、小さく早くなる。
手の先の熱は、ひいていく。

悪くないよね、この緊張感。


わざと愛のない言葉と文章と、
絶対に触れないわざとな距離感と。


絶対的な恋愛観と。
わざと斜め前に位置をとる。


ポストイットでやりとりする、
また後でね。
と同じくらい浮き足立ってて。


用もないのに前を通ったりしちゃうのと同じくらい。
バツが悪くて。


少女漫画でもなんでもなくこんな感じの気分も、わざとしてるようなそんなでもないような。


肩がすくむ。

人が他にいるから、

監視されてるから。

パソコンに、あなたの視線を合わせる。



なんか悪いことしてるみたいに視線を遊ばせる。


さりげなく、仕事を手伝ってくれたり、頑張ろうねのその一言が、どれほど心を弾ませるか。

きっとあなたはわかってない。


わかってて、やってるかも知れないけど、そんなことないかもしれない。なんて、思いながら、ただそれでもいいと。このやり取り自体になんだかあったかくて、その正体がもはやなんだとしても結局は愛おしいものに変わりはなくて。


そのこと自体は、純真で。

お礼のコーヒーをどのタイミングで渡そうかなんて人目を気にして。

特に何もなくて、何かがあってはいけなくて、知られちゃいけなくて、知られたくなくて、でも、教えたくて。


近づけなくて。


客観視なんてしたくないし、しなくてもいいような。
そんなのどうでも、こんなのそんなに。


それで許される女より、それじゃ物足りないくらいの女になるの。


もっともっと足りなくて、
渇望されるくらいに。

あなたが、


頭を垂れて、喘ぐくらいに

「お早いご対応ありがとうございます。」
"態度で魅せて"

「なんでも聞いてね。」
"キミのことが知りたい"



視線と指は、一体化して、そのままの私を内部に迎い入れる。


読みすぎないで、飲みすぎて。

全部が溶けてしまう前に。
滴り落ちる前に。




早く掬ってよ?

注いであげる。
敬語でイケない?
あの感じ。


知ってるよ。
改札に入る前、斜めに追い抜く私に振り向くこと。
 


知ってるよ。
さりげなく意味もないような顔して、マスクの上からよく視線の先に私を入れてること。

知ってるよ。
男子の隣でアドバイスしながら、その内容を私にメッセージしてる事。

すれ違う時、最後に残されるその視線。
最後まで残る私への合図。

1時間に一回するアルコール消毒したみたいな、ちょっとベタつく摩擦力。


なんて、全部。
全部。



わかったような気になって。

なんて、自分で息をつく。

 

そんな事。何の意味も含まれてなくてそんなことに気づいたりなんかしたくなくて。



そんなことないようなこともないことも分かったりしていて。


それは、そうでなくてはいけなくて。

でも、そうであってはいけないものだから。
嘘をつく。

何もないよ。

何もない。


それだけが、向かう会社の足取りを。
音楽に変えるものだから。

息苦しい白いバリアの中で、それだけは、とても自由に表現されるもの。


30度あがる口角。
落ちる目尻。


揺れる脳内伝達物質。

揺れる水銀みたいに危なっかしくて。



近づきたい近づけない。
そんな環境変化によって定義されるものが瞬時に変わる。当たり前が変わる。


失礼だったことが、常識になる。

それが、壁になる。

今までの当たり前は、私たちに制限をかける。
 

それが、剥き出しになる。



そんな常識が、新しく阻むから。


だから、余計に苦しんで。

余計に楽しんで。


満たされる。

心はこの距離感のまま。
一生このまま、心拍上げて?

直接的な表現なんて何も要らないから。

何も要らないから。

何も欲しくないのよ。
与えないで。



満たさないで。


不満なままで。
不足なままで。

それでいい?

これでいい。

それでいい

それじゃ嫌。



1番の欲望の塊じゃない?

想像だけで、いっちゃって?



胸の奥に変な虫がついたみたいに、少し息苦しくて、でも、素敵な苦しさで。


恋なんて、気づかないで。
呼ばないで。

だから、それ以上。




あ、それ以上。


近づかないで?






お願い。


、、、ダメ。


愛してるなら。



もっとこの先心の距離を

詰めたいのなら。





近づかないで?



だって、あなたと。






「 密  」
になる。






///



近づきたい近づけない?


ぁあ、この想い。




離れるからこそ、密になる?






...続?












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