エフオーアイ裁判判決文を読んで

エフオーアイが粉飾して上場した事件において、株主が損害を被ったとして主幹事会社であるみずほ証券(現みずほインベスターズ証券)を訴えた裁判について、最高裁判所が主幹事だったみずほ証券にも賠償責任があるという判決を出しました。

あまり、この事件について知らなかったので、少し調べてみました。
なお、判決文はこちら

詳細な事件の内容は判決文に細かく書かれていますので、そちらを見て頂ければと思いますが、概要を説明しますと、エフオーアイは平成16年3月期に赤字になる恐れがあったために、循環取引による架空売上を計上、その後平成21年10月マザーズに上場したものの、平成22年5月に破産申立てと破産手続開始、6月に上場廃止し、平成26年9月に破産手続結了しました。なお、この事件で元社長を含む複数人が金融商品取引法違反で逮捕されています。

上場後に粉飾が発覚する事件は度々ありますが、上場後すぐに破産する会社というのはなかなかにショッキングな出来事だったと推察します。

この事件では、富士通にの従業員に外部協力者がおり、外部証憑の偽造やインタビュー調査での虚偽答弁、確認書の返答を行っていました。その方も損害賠償責任を負いました(富士通も訴訟されましたが、監督責任はないとされています)。会計監査人であった監査法人桜友共同事務所も損害賠償の訴えを起こされていて、こちらは和解になったようです。なお、こちらのメンバーの一部が独立して清陽監査法人を立ち上げたようです。

会計監査の観点から言えば、証憑の偽造をされると、偽造を見抜くのは容易ではないと思います。また、確認状も会社の指定した場所へ送りますし、確認先の職務分掌は分かりませんから、その会社の方が答えていると思われるなら、ある程度の信頼性があるとみるのではないかと思います。とはいえ、通帳なども偽造していることや、コピーのみで対応し、原本を要請されていなかったようなので、落ち度がある部分もあると思います。
原本でなく複製(PDFなども含め)で対応するというのは、リモートワークを多く導入している前年度、今年度3月期においては多いのだろうと思います。変な話ですが、複製と原本を突合する手続を求められることもあり得るように思います。その場合、サンプルの内何件のサンプルを突合するか、など、およそ会計的でない話になるのかな、と想像します。また、レビューや検査での指摘に入るようになると、原本での突合の方が楽であるということから、複製を用いなくなるかもしれません。

また、内部通報と思しき投書が二度ありました。どちらも不正を告発するものですが、一度目は不満分子によるいたずらという経営者の話を鵜呑みにして、投稿者の処分を求めていたようです。なお、これは「公益通報者保護法の改正法が施行される2022年以降は、これは犯罪行為になりうる」ようです。(参考文献 エフオーアイ粉飾事件・最高裁判決-内部監査室長の積年の恨みは晴らせたか?

この投書のように、粉飾に気付く場面は多々あったと思われます。売掛金と売上の関係や、キャッシュ・フローを見ると、異常だと思ったのでしょうが、経営者を信用していたということなのでしょう。上場申請では、上場という共通の目的に向かう一種の仲間でもあるので、疑いを持てなかったのかもしれません。ちなみに、M Scoreという指標では、私の計算によると-1.72という数値でした。-1.78以上である場合、粉飾の可能性が高いとされています。

私は、正直、ニュースを見て平成22年頃の事件でいまだに裁判をやっているんだなぁ、と思いました。また、会計監査人や外部協力者、引受会社など株主から損害賠償請求されており、粉飾というものが、いかに多くの犠牲を生むかを改めて感じました。

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