有報の感想 富士通(2019年3月期)
概況
当期において、IRがいくつか出されている。
「新経営体制および代表取締役の異動について 」(2018年10月26日)
「成長に向けたリソースシフト」の実施に伴う費用計上に関するお知らせ(2019年2月19日)
2018年10月26日のIRでは以下の記述がある。
サービスオリエンテッドカンパニーを目指した「質をかえる」取り組みを早期に実現するため、経営体制を抜本的に見直し、「意思決定と実行のスピードアップ」、および「責任と権限の明確化」を図る。
「形をかえる」がひと段落ということだが、まあ、構造を変えている最中でもあるように見える。なお、バックオフィスの一体化により効率化を進めてバックオフィス人員を減らそうとしているのでは?と思われる。実際、有価証券報告書にも、その旨が記載されている。
ただし、そううまくいくかは分からない。旧日本軍のインパール作戦を見ても、後方支援部隊がいない組織は瓦解していく。業務の整理と再構築がうまくいくかどうかによっては、さらなる迷走もあり得るだろう。
決算情報
企業の概況から売上(売上収益)と営業利益について検討する。
営業利益にはばらつきがあるが、売上は少しづつ減少している。一人当たりの売上高で考えると、大きく落ち込んでいるわけではないので、富士通自体が徐々にサイズダウンしている。2018年度の連結子会社数は418社だが、2014年度の連結子会社数は510社であった。単純に会社数では測れないが、単純計算で8割の規模になったということだ(売上も約8割になっている)。
キャッシュ・フローについては、フリー・キャッシュ・フローは微増なものの、投資活動によるキャッシュ・フローが減っていることに起因している。特に、当期は投資活動によるキャッシュ・フローはプラスとなっており、営業活動によるキャッシュ・フローの減少をカバーしているようにも見える。なお、投資活動によるキャッシュ・フローの収入要因は、投資有価証券の売却による収入なので、資金繰りのためか、昨今の持ち合い株式の解消への対応のためかは不明である。
その他の情報から
会社HPの経営方針に「質を変える」取り組みとして、2019年度に行うことが記されている。
1つ目は、当社の主要マーケットである日本国内において、一層のシェア向上を図るため営業改革に取り組んでまいります。これまで富士通グループ各社に分散していた1万人を超える国内営業人員について、グループ全体の視点で最適な配置を検討し、重点分野へパワーシフトしてまいります。
2つ目は、より強い事業体質の確立のため、グローバルに統一された商品開発、世界の有力なパートナーとのより一層の連携、世界各地の市場特性に合ったスピーディなサービス提供、グローバルに競争力のある人材の獲得・育成を進めてまいります。
3つ目は、新たなグローバル体制の構築のため、各リージョンにおけるマーケティング機能を強化し、世界中から集めた情報をグローバルな営業戦略や事業戦略にスピーディに反映していきます。グループ会社についても、機能の重複やリソースの分散を解消するため、組織の最適化に取り組んでまいります。
1つ目は、国内の営業の人員配置について。2つ目と3つ目はグローバル市場への対応である。
国内については、組織構造の改革に合わせて人員も再配置する、ということだろうか。そして、余剰人員と化している40代以上の従業員を外すことで、無駄なポストの削減とポストの空きを作ることで、若手が上がれる状態を作ろうということか。
セグメント情報を見ると、国内の売上は微減となっており、「形をかえる」改革がうまくいってるかは分からない。
海外については、商品やサービスの面と営業とマーケティングの面で弱さがあるということか。グループの情報の共有がうまくいっていないというのは、情報技術産業の会社としてはいかがなものか。
なお、リソースの重複や分散を防ぐとあるが、その分機動性も失われるリスクもある。そうなると、営業戦略や事業戦略の遅滞や地域戦略がうまくいかないという場合もあり得る。
一方で、全社の戦略を推進しやすいため、正しく戦略が組まれていれば、グループ全社として向かいたい方向性に行きやすいと思う。資源の集中をうたっているから、グローバルでの競争は厳しいのだろう。
まとめ
「形をかえる」施策は一山越えたという記載があったが、個人的には、まだ構造の変更が終わっていないように思った。
全体としては、サイズダウンして採算の合う分野への集中を目指しているため、まだ組織をいじる可能性はあるのではないか。ユビキタスソリューション事業は当期セグメント損益だったこともあり、手を付ける可能性もある。
「質をかえる」施策は提案型サービスへの転換である。(以下、有報記載)
営業の方法を変えるのも事業を付加価値の高いものに変えていくのも、人の意識がかかわるから、時間がかかると思われる。おそらく、人事政策から見直しをかけていく必要があるだろう。(もう行っているかもしれないが)
そのため、数年間をかけないと効果が出ないのではないか。
参考情報
富士通 HP
富士通 有価証券報告書
富士通 IR情報
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