有報の感想 井村屋グループ2018年3月期
(情報)
食品製造会社。小豆をコア原料として位置づけている。ようかんやあずきバーの他、肉まん・和菓子・ドレッシングなど製造販売。調味料の製造も行っている。(セグメントは流通・調味料・その他)
日本基準。五十鈴監査法人。
(感想)
キャッシュ・フローの状況
(上図、単位:千円)
FCFが2017年3月期、2018年3月期にマイナスとなっている。主な原因は有形固定資産の取得である。この内容は、工場設備である。当期の設備投資は流通事業における冷菓製造設備、点心・デリ製造設備に対する30億40百万円である。次期以降の新設予定は以下の通りとなっている。
流通事業に対する投資を積極的に行っている。特に、2017年3月期、2018年3月期の投資金額が大きい。
(上図、単位は千円)
2018年(平成30年)3月期における売上債権の増加額は何だろうか?売上債権が未回収だから営業CFが伸びなかった。回収条件が変更されたなど、特殊な要因でもあるのだろうか?仮にそうであるなら、売上割合のうち日本アクセスがおよそ3割、三菱商事がおよそ1割を占めているため、どちらか又は両方との契約条件が変更された可能性が高い。(「生産、受注および販売の状況」より)
売上が増加したことにより、回収金額が積み重なっているだけかもしれない。売上は30億円ほど増加している。しかし、それならば、なぜ営業CFは減少しているのだろうか。
会社の説明(「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」より)だと、銀行休業日の影響ということである。そうなのだろうか。それにしては金額が大きい気もする。たしかに、日本アクセスや三菱商事はインパクトが大きいだろう…… ?
設備投資について
2018年(平成30年)3月期の財務活動によるキャッシュ・フローは自己株式の処分によるものである(2,166,098千円)。この資金は次期における投資に使用される見込みである。投資予定としては、三重県津市の本社工場への投資45億円(流通事業)、愛知県豊橋市の工場に11億円(流通・調味料事業)を投資する予定である。また、AZUKI FACTORY関連への投資として2億円の建設仮勘定が計上されており、これが来期に稼働すると思われる。
今後数年間にわたり、減価償却費負担が増えるため、費用増加要因となろう。また、大型の投資であり、生産設備更新や新規ラインの設置によってコストダウンと生産増強による出荷量増加(即売上増加となるかは分からない)が期待できる。一方(おそらく商品コンテンツが強いため投資の回収はできるとは思われるが)うまくいかないと減損損失を計上するリスクもある。
役員について
五十鈴監査法人の元代表社員である名倉眞知子氏が社外取締役となっている。名倉氏は平成20年3月期から平成26年度3月期まで業務執行社員として監査報告書にサインをしている。就任はできるのだろうが、独立性を阻害する馴れ合いの脅威となるのではないか。監査法人として、どのような品質管理を行っているのだろうか?
(馴れ合いの脅威があっても監査ができないわけではない。セーフガードを適用し、阻害要因を除去するか、又はその重要性の程度を許容可能な水準にまで軽減できるのであれば、問題ない。)
・名倉氏経歴(役員の状況より)
さすがに、同社の株式は持っていないし、購入もしていないよう。
その他
金融商品の注記に貸倒引当金の記載がないが、不要なのだろうか?(金額的重要性はないだろうが)
小豆の仕入先が海外にもあるためか、為替予約を行っているようである。
(まとめ)
積極的に投資を行っている。来期(2019年3月期)はより大きな投資が行われる見込み。自己株式を処分して資金も得ている。
売掛金及び受取手形の増加の理由はなんだろうか?
(参考)
言葉について
CF
キャッシュ・フローのこと。資金の流れ。資金の獲得はキャッシュ・イン・フロー。資金の支払はキャッシュ・アウト・フロー。
FCF
フリー・キャッシュ・フロー。事業から得られる(又は支出した)キャッシュ・フロー。
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