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音楽を真面目に考える日

指揮者のむーらんさんのブログをたまたま読むようになってから、自分の思ってたことはこういうことか、と腑に落ちる瞬間がある。
今日はとある有名なピアニストの演奏と画家との共通点としてこの一文。
驚嘆はあれど残念ながら、感動がないのよ

ああ、これか。最近頭の隅でいつも思っていたことは。あまりに納得してコメントまでつけてしまった。

以下自分的考えのまとめ。
音楽を勉強していくと、どこかの段階で飛躍的に技術が上がる時期がある。私は中2から高校時代に、とあるきっかけで大学の先生のもとにレッスンに通い始めてから。
今までとは全く違った練習方法に切り替わって、今思えばぐんぐん弾けるようになった。
レッスンで課題に出される曲の量もスピードもすごかったし、練習しないとこなせないからとにかく練習した。ただその先生が素晴らしかったのは(当時は鬼!と思っていた)、コンクールを目標にしないでハノンのような基礎練習にずっと付き合ってくださったこと。
ハノンをとにかく信じられないようなゆっくりなテンポで弾いて、一音でも音が転んだら最初からやり直しだった。レッスンでその時間いつも付き合うというのは、今自分が教える立場になると物凄く大変なことで、弾き手以上の集中力がいるとわかる。とにかく自分の出す音をじっと聴いてピアノを弾く。徹底的に。
ずいぶん難しい曲もどんどん渡されたけれど、納得がいくまで弾き込んだし、譜読みも早くなった。
後になって、その先生が教えておられる大学の受験生に向けてコメントされているのを発見。

これを大人になって読んだ時に、言葉少ない先生だったけれどなるほどそういう考えで教えてくださっていたのだなと感動した。

コンクール、受験、試験、音楽を志すと人から評価される場面は沢山ある。演奏者になっても常にお客さんの耳がある。私は心が弱かったから、いちいちびびって全然結果が残せなかったし受験も3回失敗した。前述の先生が入試に落ちた報告を聞いた時
きみはよく弾くのになんでだろうねえ
と悲しそうな顔をされたのを今でも何となくフフフ、と思い出す。
結局、自分をよく見せたいという気持ちが強い割に自己肯定感も低く、都会の人がみんなすごそうに見えるという田舎娘だったのだろう。

まあそんな私も50が近くなり、自分の事を受け止められるようになった。よいところもそれなりにあると思える。好きは好き、興味がないのは仕方ない、全てにいい顔するのはやめなさい私、と。

最初書くはずだった事から微妙に逸れている、自分日記になってきた。でももう少し自分日記。
とにかく色々な音楽をした。クラシックから始まり、バンドでバックバンドをしたきっかけでブラコン、ファンク、ロック、ジャズ、ポップス。その時々真剣に向き合ってきたという自負はある。真剣に考えすぎて色々迷子になった。
その音楽の根っこを掴みたい、掴もうとするとその時の自分が持っている何かが引っかかって邪魔してくることも沢山あった。楽譜がないと弾けない、ペダル、リズム、タッチ、歌い方。その度に色んな事を言われて、そこにどうにか近づこうとしてきた。そして何が一番したいかよくわからない状態が続いた。自分のいいところもわからなくなった。
だけど。
シンプルで美しいものが好き
結論はそこで落ち着いた。
美しくて、無駄がなくて、押し付けない。
つまらないと思う人にはつまらないだろうし、
おぉ!って技も使わない。ただ引き算的に一つずつの音が美しくて必要な時に鳴る。
そういう音楽が好き。
こう思ったら腹が座った。

色々なジャンルに向き合ったことは、伴奏の時に結構役に立っているかなと思う。バンド的な音か、オケか、室内楽か、ピアノ的か。
これは言葉では説明出来ないから、やっぱり経験値として誇れることかもしれない。

話をもう一度戻そう。。
技術は助けになる。これは絶対そう。技術がなくて気持ちだけあってもうまくいかない場合が多い(でもそうでもない場合もあるし、そこで感動もある)
音楽を当たり前に美しいものにする、特にクラシックで再現した時に、無理なく演奏できて尚且つ音色に気を遣っていられるのは技術なくして難しい。
だけどそれでも。
自分の音楽から技術が離れていくこともある。演奏に向かい過ぎて、より複雑なことやよりよい結果や、完璧さを目指しすぎて。やがて自分の音楽が完全に自分から分離して、ただ演奏するための演奏になる。ある種の義務感が快楽にかわるし、目的もそこに一体化してしまう。
より完璧な演奏
より完璧なフレーズ
より複雑なソロ
そういう音楽に出会うと、凄いなあとは思うけれど感動しない。
全く心が動かない。

音楽をするのに音楽だけしていたら厳しいと思う。日々の経験が、出会いが、料理をしたりボールをついたり、物事の動きが全て連動している。音楽はエネルギーの流れで、いつも音がどこかへ行きたがっている。一つずつの細かいフレーズのことだけ考えすぎると、完璧なものが幾つも羅列される、だけど全体としてはどこへも行かない。
昔読んだ漫画
いつもポケットにショパン

これも今になって、たまに思い出して納得する。
そういう自分の身体の感覚を総動員して、でも普通に弾きたい、歌いたい。
感動は、そんなあちこちにはないとしても、私だけの音楽が出来るまで
音楽は自分だけのものだけれど、誰かに向けて音を出した瞬間に自分の手を離れる。誰かの耳を支配する。その時間を、分かち合いたい。

ああなんか恥ずかしいこと偉そうにいっぱい書いちゃった。頑張ろ。


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