日本語指導の思い出②
前回は、バニアさん登場、で終わった。バニアさんは桶谷先生がご自身の研究費で呼んで下さったのだが、そもそも何故、桶谷先生がやって来たか、抜けていた。
大阪府の外国人支援には、10数年前の当時、NPOピアにほんごが協力して、母語支援者を派遣していた。
それでA君が入学してすぐ、支援をどの程度、付けるか回数等を決めるために、当時ピアにほんごの代表者だった村上自子先生が、桶谷先生を伴って、ヒアリングに来られた。重大事案だったらしく、教育委員会の方も来ていたような記憶がある。教頭も同席した。
その時、村上先生は、A君に、日にちを聞いたり、昨日は何をしたの、とか先週の○曜日に入学したのかな?と尋ねたりして、簡単な質問を、優しく、しかし、少し回りくどく尋ねていた。
後から思えば、「突き上げ」をやっていたのだと思う。語学の能力を測る方法にOPIというものがあり、日常会話を進めていって、学習者の語学能力を、誘導質問で確認していく。日にち、曜日、時間が分かっていて言えるかどうか、ものの名前を知っているか、動詞が活用できるか、などなど。桶谷先生もA君に少し質問していた。
村上先生や桶谷先生の質問は、初めての私には、正直、何故そんなことを聞いているのかよくわからないような、簡単な会話で、私は聞き流していたが、途中から異なことに気づいた。A君は、はにかんだ感じで、首を振る意思表示ばかりで、ろくに喋っていなかったのだ。
後から聞いた話では、最初に外国にルーツを持つ生徒と保護者に対して大阪府とピア日本語が行った入学に関する説明会(数カ国語の通訳の個別相談つき)があった時、村上先生はもちろん、桶谷先生も、あの子(A君)は大変だ、ということで注目していたらしい。
校内的には「自分の研究業績をあげるためにやってきたんだ」と批判を口にする人もいたが、私としては、日本語指導の入門書を20年ほど前に読んだきりで、かなりのレアケースらしい生徒を引き受けることになったので、ノウハウを持つ村上先生や、支援を申し出てくださった桶谷先生は、天の助けそのものだった。