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孫とドラえもんの映画を見たいとか言わないでほしい/兎の中の人

最近どうやら、うちの父親がドラえもんにハマったらしい。
いや、正確にはドラえもんの映画が気になっているらしいのだ。
母から聞いた話なので詳細は分からないが、思い出してみると最近テレビ放送されたドラえもんの映画を見ていた父を目撃した記憶がある。

なら勝手に見に行けばいいだろうと一人で映画を見に行くタイプの私なんかは思ってしまうのだが、どうやら我が父のくせに一人で見に行くのは嫌だと言うのだ。

「孫でもいれば一緒に見に行くのに……」

母曰く、そんなことをボヤいていたらしい。
私がその場にいたら文句の1つや2つどころか10や20も言ってやりたいところだ。
たぶん文句を言われることを分かっているからいないところで言っていたのだろうが。

妹と弟はどうか分からないが、少なくとも私は人間として欠陥品なので残念ながら他人と生活できないと思っている。
友人の中には「家賃も安くなるし、雪兎となら上手く生活できると思う」と声をかけてくれた子もいたのだが、話を濁しながらお断りをした。

前にも書いたと思うが、オンのときの私はのーたりんで陽気な心の広い兎に見えるらしい。
だがオフモードになると酷いものだ。

失敗を人のせいにして怒るし、片付けは出来ないし、物はすぐになくす。
実は数日前からお気に入りだった伊達政宗公の甲冑が描かれた箸が一本消えてしまい、困っているところだ。
台所を必死に探しても見つからない。
もしかしたら、他のお宅に進軍している可能性があるのでもし見かけたらぜひ私の元に返ってくるように説得していただきたい。

……さて、話がそれたので戻そう。
実は母にはもうすでに私が結婚できないことを悟られている上に、諦められているようだ。とはいえ自立の気配もない子どもに対しては思うことがあるらしい。

「結婚するしないは勝手だけど、一人になったら寂しいよ」

そう言われると確かに老後の心配はある。
今は父も母も健在で雨風しのげる家とほどほどの収入があるから生活はできるが、いつ何が起きるか分からない。
そう考えるとやっぱり一人は寂しいかもしれない。
箸だって探せないのだ。

そう思っていた先日、伊達政宗公の箸がまな板置き場から発見された。
どうやらこの記事を書き上げる前に進軍をしていた政宗公に私の元へ戻ってくるよう説得してくれたのだろう。
名も知らぬ親切な誰かに感謝を致す。

……なんの話を書いていたのか分からなくなってきた。
まぁ、箸も見つかったのだ。
一人でもなんとかなるだろう。

ただ父には申し訳ない話だが、妹も弟も「いい人はいないのか?」発言には無言で視線を逸らすので、ドラえもんの映画がやっている間に孫の顔を見せることはないだろう。
いい加減、父親に一人で映画を見に行く勇気を持ってもらいたい。

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