夏の私はコックピットに乗っている
私はララァ・スンになりたかった。
冒頭から申し訳ない。
私はセミが大嫌いだ。
虫は全般的に苦手だが群を抜いてセミが無理なのだ。子どもが幼き頃、虫かごいっぱいのセミを連れてきたときは発狂するかと思ったが…何も言えなくて…夏。あんなに恐怖を感じたことは無かった。
夏の朝はセミが鳴き出す前にゴミ出しに行かねばならん。
奴らはたまにセミの子の姿のまま、コンクリートを歩いているから要注意である。
擬態がうまい。実に狡猾だ。
夏の私の視線はさながらガンダムのコックピットである。
メインカメラの動体反応はMAXに設定してある。
奴らは上空からふいに落ちてくるときがある。
監視を頭上にまで行き渡らせるとなると
アッガイのメインカメラが1番良いかもしれない。
アレなら頭上のセミを100%カバーできる。
コックピットに少しでも動くものが視界に入れば私は即時撤退せざるを得ない。
逃げる…生き残るために。
夏のゴミ出しの私はかなり挙動不審である。
今日も朝5時にゴミ出しに行こうとマンションの廊下を曲がろうとしたら飛び出してきた。
「ひっっ!(声にならない)」
危ない。もう少しで踏むところだった。
「冗談ではない!」
#誰のセリフか解りますか
今年はジェットストリームアタックならぬセミアタック(未遂)にまだ一度しか会っていない。幸運としか言いようがない。
セミアタックとはもちろんセミがぶつかってくるアレのことである。奴らはいつもフラフラ飛んで不安定だ。黒い三連星もびっくりである。
あと2週間。お盆を過ぎればようやく私の世界に平穏が訪れる。
私が山歩きから夏を除外している理由は他でもない。
セミが鳴いているから。というしょーもない理由である。