メモリークラッシュ。
ありえない。
それは狂気に満ち溢れていた。
先生は優しく言った。
「ゆきんこちゃんもみんなのところに行きなさい」
イヤだ…助けて神様…。行きたくない…。
幼きわたしに抗うすべはない。
わたしは半ば意識を失いかけた状態でヤケクソで網を振り回していた…。
地獄のような恐怖の時間が過ぎたのも束の間。
本当の地獄はココからだった。
それはお遊戯室に放たれた。
なんだ…これは?…なにが行われている?
虫🦗を再び追いかけ回すという乱交…いや、乱行が目の前で行われたのである。
嬉々として哀れな虫たちを追い詰める子たち。
見るに堪えなかった。
わたしは全身を硬直させ、ただただ時間が過ぎるのを待った。
幾つの命が犠牲になったのだろう。
放たれた虫たちはどうやって回収されたのか。逃げ場をなくしたあの虫たちは…。
よく覚えていないのだ。
人間はストレスがかかると記憶を消すというアレだ。
幼いわたしにとってそれは永遠に続く拷問の時間だった。
わたしは幼稚園が大キライだった。
しかも虫取りが遠足になったのだ。
捕まえた虫をお遊戯室に放すという奇行が行われたのだ。
48年も前のことを覚えてるものだなぁと思う。わたしが年長さんのときの実話である。
以来、わたしはバッタが苦手である。
ココで一句。
「おなさ子は虫が好きと決めつけし
昭和の横暴許すまじ」
〜ゆきんこ 怒りの俳句集より〜
あ、コレ、俳句じゃない。
短歌だったわ。まぁいっか。