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コロナ禍のK-POP〜閉ざされた世界にエールを'MY TREASURE'

2021年が幕を開けた。とはいえ、昨年1年は正直なかったようなもの。私は大学生なので、ほとんどの記憶が家の中で、季節の移ろいすらあまり感じられないまま終わってしまった。なので、実質2019年25月が始まったような感覚でしかない。おまけにコロナの収束は夢のまた夢というか、もう「○月には旅行に行けるようになる」系のネタにも飽きてしまって希望なんてない。気づけば就活が始まろうとしている…もう一度言う、希望なんてない。毎年新年にはなんとなく「今年こそは何か成し遂げてやろう」と意気込んだりするものだが、今年は最初からそんな気概もなくスタートを切ってしまった。こんなに暗い新年の幕開けがかつてあっただろうか。しかし、暗く閉ざされた生活の中に一筋の光が差した出来事があった。それが、今回紹介したいTREASURE(トレジャー)の新曲’MY TREASURE’のリリースだ。この曲をもっと多くの人に聞いてほしい、K-POPを知っていても知らなくてもいいから、この曲を知ってほしい、そんな想いに突き動かされて、一匹のオタクが重い腰を上げてnoteを書いている。この!熱量を!感じ取ってほしい!

コロナ禍のK-POP

2020年は未曾有の1年だった…というと、もう過ぎ去った困難かのように思えてしまうが、私たちはいまだに未曾有のさなかにいる。新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、世界は字義通り閉ざされた場所になってしまった。K-POPの文脈でもやはりこの印象は強い。そもそも2010年代以降K-POPは韓国の輸出産業、国策として振興されてきた部分が大きい。K-POPアイドルにとって移動ができない現状が大きな痛手であることは言うまでもない。特に隣国で、アメリカに次いで世界第2位の音楽市場を誇る日本への渡航ができないことはK-POPにとって非常に困難な事態と言える。

一方、パンデミックの世界の中で、音楽はこれとどう向き合っているだろうか。BTSが11月にリリースしたアルバム『Be』は「コロナ時代を生きるみんなにBTSが届ける慰め」と銘打たれ、コロナ禍が意識されていることは間違いない。タイトル曲'Life Goes On'の歌い出しは「ある日世界が止まった 何の予告ひとつなく」。まさに、パンデミックの世界で生きることを歌った楽曲と言える。タイトル曲にまでコロナ禍の影響が大きく映し出されているのはBTSが唯一なのではないかと思う。また、アルバムの構成にコロナ禍が意識されたものには、前回K-POPで旋風を巻き起こす日本発の「シティポップ」でも扱ったTOMORROW X TOGETHER(トゥモローバイトゥゲザー)の3rdミニアルバム『Minisode1: Blue Hour』がある。このアルバムは、予期せぬパンデミックの中で孤立し、感情を失っているティーンエイジャーの視点から描いた楽曲で構成され、TXTの物語の深化につながった作品といえる。いずれにせよ、突然訪れたパンデミックに対するK-POP的の視点からの語りは、まだ始まったばかりである。

日本人が4人、K-POP期待の新人TREASURE

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そんな中、2021年1月にリリースされたTREASUREの1stアルバム『THE FIRST STEP: TREASURE EFFECT』から、タイトル曲'MY TREASURE'は未曾有の一年を締めくくり、この状況の中で新たなスタートに立たせてくれる楽曲に仕上がっている。TREASUREは、BIGBANGや2NE1を輩出した名門で、最近ではBLACK PINKの活躍が著しい韓国3大芸能事務所の一つYGエンターテイメントから5年ぶりに結成され、昨年デビューした男性アイドルグループ。サバイバルオーディション番組「YG宝石箱(YG TREASURE BOX)」を通じて選抜された12人のメンバーで構成され、うちヨシ、マシホ、アサヒ、ハルトの4人の日本人メンバーがいる。日本人メンバーのいるK-POPアイドルグループは、特にTWICEの成功以降男女問わず多く見られるが、3分の1が日本人というのはかなり珍しい。TREASUREは、昨年'BOY'、'I LOVE YOU'、'MMM'という3曲のシングルをリリース。デビュー前から話題だっただけあり、'BOY'と'MMM'が韓国Gaonチャート週間1位を獲得するなど売れ行きも好調だ。また、今月行われた韓国ゴールデンディスクアワード(GDA2021)では、ENHYPEN(エンハイフン)とともに新人賞を受賞。期待の一角にあり続けるグループだ。

未来を照らすまばゆい光のような'MY TREASURE'

何より今回の本題はこの曲について。もう、とにかく良い!良すぎる。”正解”がすぎる。初めて聞いたときすべての歌詞がスッと入ってきて、日本語かと思ったまである。歌唱力が高く、グループデビューに先立ってソロデビューを果たしたイェダムのバラードから幕を開け、ラップのヒョンソクの合図で曲は一気に王道ポップジャンル曲に(この時点でオタクとしてはかなりキてます)。とにかく王道を行くK-POPの軽快なブラスに自然と体も揺れる。一方でストリングスがエモーショナルな印象も与える。そして、この曲はとにかく歌詞がいい(以下はサビの歌詞)。

心配しないで
もう一度熱く笑ってよ 熱く!
笑ってるときが特別かわいいよ 君は
がんばって 僕たち結局輝くはずだから
閉じた目を開けて
You're the only one TREASURE
ダメだっていいじゃん また始めよう
もう泣かないで 明日がくれば輝く存在
You're the only one TREASURE

アイドルの側から「君たちがトレジャーなんだよ」と囁いてくれる、こんな曲があっていいのか!?「涙さえも力になるんだ」「枯れていた幸せと 咲くことのできなかった愛が また育つから Never give up!」「出来なくたっていいじゃん また始めよう!」そこにあるのは、無理やりに元気出せよ!というエールではなく、笑うことから初めてみようよ!というものすごくポジティブでやさしい"小さなエール"。この世の誰もが宝石のような存在だと歌うこの曲は間違いなく聞いたすべての人の心を癒してくれるはずだ。作詞にはラップメンバー ヒョンソク、ヨシ、ハルトも参加。この曲の内側から湧き上がるパワフルさの源だ。


歌詞をみるとやはりコロナ禍、”閉ざされてしまった世界”がインスピレーションの源になっているのは言うまでもない。ラップ担当のヒョンソクの歌う「物寂しくなってしまった世界」はまさに世界の現状を切り取っている。「雨が止んだら 晴れた空が待っているように もっと良い日が来るよ」「戻ってくるよ 幸せだったあの日あの時」厳しい時期ではあるけれど、明日は再び明るい光が昇るから、というこの曲のメッセージはコロナ禍のK-POPという文脈でもやはり際立って明るく、元気や勇気を与えてくれる。未曾有の一年に一区切りをつけ、新たなスタートラインに立った前向きな楽曲に仕上がっている'MY TREASURE'は、コロナ時代のK-POPの金字塔だ

現実と幻想が入り混じるMV

'MY TREASURE'を語る上で何と言っても欠かせないのがMVだ。とにかく構成が秀逸で、この曲のコンセプトを支える重要な要素をなしている。イントロはバスの中で目を閉じるイェダム。現実かと思うと、バスは空へと向かう…。

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街の俯瞰から、花の咲き乱れる街…現実と幻想が錯綜しはじめる。

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教室を思わせつつ、色鮮やかで印象的なセットにはミュージカルのような雰囲気が漂う。

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家庭内暴力や虐待、ネグレクトを思わせる描写、コロナ禍という厳しい状況下で受験勉強に励む高校生たち…後半は一気に雰囲気が変わり、現実に引き戻しつつ、元気や勇気を与えてくれる展開に。

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最後はやはり、現実へ。
現実から始まって、TREASUREの世界観へと連れ込み、現実に還元するという大まかな構図になっている。楽曲に加えMVも、今はどんな状況にあっても、未来はきっと明るい。そう思わせてくれる展開になっている。

パフォーマンスも魅力の一つ。傘を使った演出など、やはりミュージカル的な展開とストーリー性が感じられる。

これだけダラダラと文章を書いておいて、本当に申し訳ないが、はっきり言ってこの楽曲の良さは言葉にする必要がないと思っている。あまりに良すぎる。正直、良すぎて語彙が死んでしまっているオタクなので、この曲の良さを上手く伝えられている気がしないが、とにかくまずは聞いてほしい。MVを見てほしい。私から言えることはそれだけだ。お願いします、聞いてください。

TREASUREは、すでに日本デビューも決まっており、それに先駆けてテレビアニメ「ブラッククローバー」の主題歌'Beautiful'も発表された。この曲にも作詞にメンバーのヨシが参加しており、アニメのテーマでもある前向きで、夢に向かって諦めない気持ちの表現された明るい楽曲に仕上がっている。これも合わせて聞いていただきたい。

TREASUREの活躍から目が離せない!!

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