次点争いはイメージ戦略で明暗
失点を最小限に留めて余裕の三選
女性知事としては初めてとなる、無投票を除く3期連続当選を果たした小池氏。
裏金問題に揺れる自民党から水面下の支援を受け、無党派層からの支持が落ち込んだものの、政財界の組織票を手堅くまとめ、自民・公明支持層からも一定の支持を獲得した。
自民党から支援を受けていたとはいえ、裏金問題への関与は疑われず都政における大きな失点もなかったことが影響したのかもしれない。
また、現職の余裕からか他候補へ批判を向けることなく公務優先を前面に押し出した選挙戦をアピール。
これからの4年間も目立つ失策なく、都政を進めることができれば本人が希望する限り4選は手堅いだろう。
政党色を排し、SNSと街頭演説の二段構えで無党派層から支持を集める
安芸高田市長を辞職し、都知事選に出馬した石丸氏は無党派層からの支持を集めるべく、政党からの支援をいっさい断り、市長時代から得意とするSNSでの発信と候補者の中でダントツの街頭演説をこなした。
その結果、自民党や立憲民主党など既存政党に不満を持っていたり、政治に無関心だった若者から多数の支持を集め、10代から30代までの得票率は小池氏をも上回った。
最終的に得票数は小池氏最大の対抗馬と目されていた蓮舫氏を数十万票上回る165万票を獲得。小池氏の得票数は300万票を下回る結果に。
石丸氏は一貫して既存政党や既存メディアのあり方を強く批判し、小池氏でも蓮舫氏でもない新たな風を吹き込む存在であることを都民に認識させた。
これはかつて大阪で巻き起こった維新旋風を彷彿とさせる。
政策よりも批判が先行、政党色も排せず支持の広がり欠く
長年所属していた立憲民主党を離党し、無所属での出馬を決意した蓮舫氏。
しかし、旧民主党時代から放っていた強烈な存在感と圧倒的な知名度が仇となってしまった格好だ。
国政で与党に座る自民党から支援を受けていることを引き合いに、国政での勢いよろしく小池氏を舌鋒鋭く批判した。
ここに批判ばかりというイメージが染みついてしまい、特に旧態依然とした政治を嫌う幅広い層から敬遠される結果に。
小池さんもイヤだけど蓮舫さんもイヤだという空気が醸成された。
また、選挙期間中無所属での立候補をアピールしているなか、街頭演説には離党した立憲民主党の幹部が姿を並べており、さらに落選後の自身の進退について徹底的に明言を避けたことから、出馬にあたっての覚悟の度合いを問われることになった。
落選後の今はなにも考えられないとコメントしているが、取り沙汰されている立憲民主党への復党や衆議院への鞍替えはあるのだろうか。
イメージ戦略の成否が左右した2番手争い
石丸氏と蓮舫氏の2番手争いは連日都民やマスコミの間で関心を集めていた。
今回、石丸氏と蓮舫氏の得票数に最も影響したのはイメージ戦略の成否ではないだろうか。
石丸氏は既存政党やメディアを既得権者として、対抗する姿勢を鮮明に打ち出した。
そして、安芸高田市長時代から得意とする切り抜き動画を駆使して、短い時間でわかりやすく発信することを徹底。
いわゆるタイパを重視する若年層に若者が求めていることを分かっていると思わせることに成功した。
政治に触れる機会が圧倒的に少ない若年層は、政策に具体性よりもわかりやすさを求める傾向が強い。
だからこそ具体的な政策をいっさい語らずとも支持を集める結果につながったのだろう。
ただ、これは何もまったく新しい手法ではない。
具体的な政策はないけれど、何かやってくれそうだという期待感だけで支持を伸ばす手法は維新と類似している。
一方、蓮舫氏も若者への支援を強化するよう精力的に訴えていたが、政党カラーを払拭できず、今ではインパクトを持たなくなった、支持者がプラカードを掲げて一体感を演出する手法は無党派層や若年層に恐怖感すら与えた。
また、他候補者を批判せずこれまでの自らの実績を淡々と語る小池氏を殊更に批判したことで自ら掲げる政策が見えづらくなり、「国政での対決構図を持ち込めば勝てると思っている」との安直な印象を有権者に与えてしまった。
さらに一部の支持者が暴徒化し、小池氏の街頭演説を過度に妨害したり、ビラを投げつけるなどの暴力行為が発生したことも無党派層や若年層の支持が離れてしまった原因だろう。
もっと言えば、殊更に若者を強調したことから一定の支持を集めていた40代以降の離反も起きたと考えられる。
具体的な政策や実績がなくても4分の1の票が入る危うさ
先述の通り、蓮舫氏を上回る票を獲得した石丸氏は具体的な政策をほとんど語らなかった。
実を言えば、安芸高田市長時代の顕著な実績もない。
これは安芸高田市の近隣に位置する自治体との比較からも読み取れる客観的な事実だ。
石丸氏が人気を博していたのは、高齢議員と対立する様を見せて強い言葉で叱責する、いわゆる勧善懲悪のようなシーンを多数発信していたこと。まさに悪と戦う正義のヒーロー像とでもいえるか。
それでも4分の1の得票率を獲得できる。
ここに今回の都知事選の危うさが見て取れる。
今後もこうしたイメージ戦略だけで圧倒的な支持を集める手法がトレンドとなり続けるだろう。
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