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向井太一も反対する検察庁法改正案は何が問題なのか?
向井太一さんの楽曲を聴くようになったのは2017年ごろだったかと思います。
独特のハスキーボイスで話題にはなっていたので、そのうち売れるんだろうなぁと思っていたら
なんと10年来の大ファンであるm-floさんとコラボしちゃいました。
そんな彼は、自身のTwitterで安倍政権を批判する内容のツイートをいいねしたり、リツイートしたりしています。
最近だと、一律10万円の給付金や休業補償に消極的な態度を示していた政権に調理をしながらボやく国会議員のツイートをいいねしていました。
久しぶりに怒りの蒸し鶏作ります pic.twitter.com/i4TL63YlPg
— 山下芳生 (@jcpyamashita) April 7, 2020
このコロナ禍で、政府の動向が直接自分たちの身に降りかかるということで政治に関心を持ち始めた人が多いと感じていたので、向井太一さんもその一人だろうなと思っていました。
しかし、今Twitterで連日トレンド入りしている検察庁法改正案にまでも関心を持つとは予想していませんでした。
恥ずかしながら、自分が検察庁法改正案に関心を持ち始めたのはつい先週辺りから。
安倍首相に近いとされる検事長の定年が延長されたということをなんとな~く知っていただけです。
もっと言えば、こんなマニアックな法案が芸能人の間でも話題になるとは思っていなかったのです。
でも、よくよく調べると法案そのものはマニアックでも、その背景にある本質的な問題点は関係ないものではないと思いました。
ここでは、検察庁法改正案のどこが問題なのかを、2月に話題となった「黒川検事長の定年延長問題」とともに探ります。
検察庁法改正案とは?
この改正案、一言でいえば、「内閣が必要と判断すれば、検事長の定年を延長できる」法案です。
検察庁法の規定で検事長の定年年齢は63歳、検事総長は65歳と定められていました。(※検事長は検事総長、次長検事に次ぐ組織ナンバー3の存在)
それを今回の法改正で検事長の定年を検事総長と同じ65歳まで引き上げる。
この改正は国家公務員法で規定されている60歳定年を段階的に引き上げて65歳まで延長するという国家公務員法改正と合わせて行われます。
これだけ聞くとどこが問題なのか分かりません。
政治家をも有罪にできる検察の人事へ政府の介入可能に
注目すべきは無条件に定年延長を認めるわけではないという点です。
定年を延長するべきかどうかを判断するのは、任命権を持つ内閣にあります。
時の政権が「適格」と判断すれば延長されるし、そうでないと判断されれば延長しないということが可能であるということ。
要するに唯一、首相を逮捕・起訴できる権限を持つ検察幹部の人事に政権が恣意的(意のまま)に介入できることになります。
自己保身のために(ポストに留まるため)政府要人への捜査、起訴を取りやめる検事長が出てきても不思議ではなく、政治権力の腐敗を助長しかねません。
ただ、注意すべきはこの法改正は2022年4月の施行であり、これは自民党トップの安倍さんの総裁任期が切れた後のことです。(ただし、現行3期9年の総裁任期を4期12年と変更すれば安倍総裁の任期は2024年まで延長可能)
したがって、安倍政権が恣意的に検察人事に介入する余地はないとの声も聞かれます。
しかし、この法改正はこれよりももっと大きく根深い問題点を孕んでいます。
発端となった1月末の閣議決定
実は、この法改正には前段階として1月末の閣議決定があります。
それは、「2月8日に定年を迎える黒川検事長の定年を半年間延長する」というものです。
法律上の規定に沿うと2月8日までが任期ですが、これを政府が国家公務員法にある「職務の特殊性や特別の事情から、退職により公務に支障がある場合、1年未満なら引き続き勤務させることができる」を採用し、任期延長を閣議決定しました。
政府が検察幹部の任期延長を決めたのは初めてのことで、過去の政府答弁にあった「検察官と大学教官は国家公務員法が適用されない」が覆される形となりました。
歴代政権が「検察官に国家公務員法が適用されない」と解釈しているのは、
首相をも逮捕・起訴できる権限のある検察の人事へ政府が介入する余地をなくすためです。
黒川検事長は政権には近いが、森友・加計問題には無関係
ここで、黒川検事長のことについて。
彼は2019年1月に東京高検検事長に就任しており、今年2月8日に63歳のハッピーバースデーを迎えるまでが任期でした。
それまでは安倍政権肝いりの政策「共謀罪」や「出入国管理法改正案」の成立に関与するなど7年間に渡って政治家と近いところで仕事をしていました。
趣味は「犬の散歩」と本人は公言しています。
『FRIDAY』2020年3月20日号より
本当なのかパフォーマンスなのか知りませんが、安倍首相もロシアのプーチン大統領やプロスケーターのザキトワ選手から犬をプレゼントされたり、大炎上したステイホーム動画でも犬を撫でているように犬好きです。
友達と会えない。飲み会もできない。
— 安倍晋三 (@AbeShinzo) April 12, 2020
ただ、皆さんのこうした行動によって、多くの命が確実に救われています。そして、今この瞬間も、過酷を極める現場で奮闘して下さっている、医療従事者の皆さんの負担の軽減につながります。お一人お一人のご協力に、心より感謝申し上げます。 pic.twitter.com/VEq1P7EvnL
首相と誕生日が同じ自分も犬は「この世の唯一の正義だ」と思っているので間違いないかもしれません。
これが首相と近い存在とされるのはそういった所以なのかもしれません・・・。
しかし、よく話題となっている財務省が公文書改ざんを認めた「森友疑獄」に係る財務省幹部の不起訴や安倍首相の関与が疑われている加計学園問題の捜査に黒川氏は関わっていないとされています。
ここを混同すると、本当の問題点を見失うことになります。
定年延長の閣議決定は黒川検事長を検事総長にするため?
定年延長の話に戻しましょう。
このタイトルに対する答えとしては「可能性は非常に高い」です。
なぜか。
1月末の定年延長の閣議決定では延長期間を「任期満了から6カ月」としました。
ということは今年の8月まで延長されることになります。
そして8月には、現在検事総長を務める稲田伸夫氏が退任すると言われています。
なぜなら、検事総長は就任から2年で交代するのが「慣例」となっているからです。
その後任として黒川氏を据えるため定年を延長したというのがもっぱらの見方です。
そして、ここにはギブアンドテイクの法則が働いていると思われます。
真偽不明ですが黒川氏には上記報道のように「賄賂を受け取って被疑者を在宅起訴に留めた」というベタな疑惑が持ち上がっています。
これが事実なら、司法権力を悪用した大疑獄です。
仮にこれを事実として、この疑惑を安倍官邸サイドが握り潰す見返りに、(定年延長して)検事総長となった暁には、今なお政権の時限爆弾としてくすぶり続ける「桜を見る会における有権者買収疑惑」を不起訴(不問)とするという取引がなされていたとしても不思議ではありません。
検察が持つ権限の大きさゆえに、一度不起訴にした事件を再起訴するのは至難の業と言われているので、安倍政権にとっては好都合です。
検察庁法改正案の問題点
週明けにも衆議院を通過する見込みである法改正案の問題点をまとめます。
◎検察庁法改正案の問題点
・時の政権の判断で、検事長の定年を最大3年間延長できる
・定年が延長される・されないの基準が一切示されていない
・定年を延長させるため、時の政権のために司法権力を濫用することが可能に
・法的瑕疵のない国家公務員法の改正とともに行われるため、問題点が見逃されやすい
もしかすると、「内閣が司法に介入し、検察が権力濫用しても私たちにはなんにも関係ない」と思われる方がいるかと思います。
確かに聞いてすぐはそう受け取ることもあるかもしれませんが、私たちの払っている税金が、政治家自身やその関係者の私腹肥やしに流用されていているのに見逃されるとなれば、真面目に税金を払うのがバカバカしくなります。
また、時の政権に都合の悪い事実を握っていたり、発言したりしている人間を検察に起訴(起訴された場合の有罪率は99%)させるためにポストに留める・・・ってことも可能になります。
最後に今回の法改正に異を唱えた向井太一さんとm-floの ☆Taku Takahashiさんがコラボした楽曲を紹介しておきます。
100万再生も間近です。Spotifyでは100万再生を超えています。
※検察官について
裁判に関する報道やドラマでよく耳にする「検察官」は、捜査や逮捕までは警察と同じですが、大きく違うのが、警察が逮捕した容疑者を裁判にかけるかどうか(起訴or不起訴)を判断することができることです。
過去の例で見れば、田中角栄元首相が逮捕された「リクルート事件」、当時旧民主党の代表だった小沢一郎氏の政治資金規正法違反事件(小沢氏の秘書が逮捕・起訴)など政治家が関わる事件にはすべて検察が関わっています。