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この秋も、郡上八幡から始めました、紅葉の旅。

昨年の秋、郡上八幡からスタートして、中央高速道沿いに、飯田市、奈良井宿、松本市と眺めて回った紅葉が素晴らしかった。僕はそれまで、わざわざ紅葉を見に行くことはなかったけれど、これほど美しいのであれば毎年見ておかねば、と思うようになり、今年も再び。
郡上八幡から始まり、旧中山道沿いに岐阜県の中津川、馬籠宿、妻籠宿、と回ってきました。昨年よりも一週間遅いスタートだったので、紅葉もかなり終盤に入っていました。それでも中津川では苗木城で最盛期の紅葉を眺め、山の中の歌舞伎小屋に驚き、とてもユニークなホテルに泊まり、旧中山道では地元の人々が江戸末期の風俗を再現させるイベントに取り組むようすを見ることができました。
秋の岐阜は濃いです。全部書くと長くなるので、今回は3回くらいに分けて投稿します。で、その一回め。今年4度目の訪問になる、安定の郡上八幡から。

この城下町が最も美しいのは、実は秋なのかもしれない。

予定していた日の前日、岐阜県北部には早くも大雪。早めにスタッドレスに履き替えておいてよかった、などと思いながらスタートすると、午後の快晴で雪は溶けてくれたようです。夕方近くに到着した頃、まったく雪の影響はありませんでした。ただし、前日の雪と強風で、紅葉はほとんど散ってしまったとのこと。それでも郡上八幡城の夜間拝観はできるので、登ってみると、なんとまぁ。
写真のような、小じゃれたライトアップで迎えてくれました。

お城の入り口の階段には、和傘が輝いています。美濃の和紙で和傘。なるほどな。
そしてお城に踏み込んでみると、うつくし。
この時期、郡上の盆地には雲海が現れるんですね。
そして振り向けば、そこは和傘の狂喜乱舞なのでした。
お城の上から見ると、こんな感じ。
灯りのともり始めた郡上の街を、しばし殿さま気分で眺めます。
LEDによるイルミネーションよりも、目に優しく穏やかな光。
紅葉は散っていました。そのかわり、普段は木に隠れてお城が見えない位置から見ることができます。

ところでこの和傘の灯り、発電機の調子が悪くてたびたび消えてしまいます。そのつど慌てて走ってきて修理をするワカモノがいました。少し手間取ると、ほかのスタッフが駆けつけてきます。「青山くん、まだなの?」
そうです。このワカモノこそが、世が世ならこの城の城主、青山氏なのです。江戸では今の港区青山に屋敷を構えていた青山家。何を隠そう、港区青山の地名の由来でもある青山家。これは、今もお城で働く、アオヤマくんが灯す灯りなのでした。

さてと、お城で2時間ほど過ごす間に、さすがにカラダが冷えてきた。何か食べに行こうかな、と。

夏の鮎に代わって、冬場は猪鍋が郡上の定番。郡上の赤味噌で煮込んであります。

うなぎか猪鍋かで迷ったあげく、より暖まれそうな猪鍋を選択。臭みもなく、郡上みそとの相性もよく、もちろんお酒との相性もよく、幸せな夜を迎えることができました。

静かなお寺で朝の紅葉を。

この街で朝の6時を迎えると、どこからともなく鐘の音が聞こえてくる。
郡上八幡にはお寺が多く、ほとんどの路地の突き当たりにはお寺があると言っていいくらいです。これは、かつては神社仏閣も城下町を守る役目を担っていたから。そして天下太平の世となった今では、どこのお寺も紅葉の見頃を迎えていた。
空は快晴。せっかく気持ち良く目覚めたのだから、宿でコーヒーを飲んでから散歩に出てみました。

職人町の突き当たり、長敬寺から街を眺めるとこうです。ここを散歩の起点とすると心地よし。
職人町に出てすぐ。右に折れると小さな橋を渡り、突き当たりには大乗寺の山門。このお寺には、いつ来ても観光客の気配がないけれど、地元の人からは、紅葉の隠れた名所と聞いていました。
境内に踏み込むと、散ったモミジの赤と、苔の緑が鮮やか。
やはり、散歩は朝の光の中がいいですね。
そして、さすがに水の街、郡上八幡。水舟の中にも紅葉が。
前日まで降っていたという雪が、まだ残っていました。

郡上八幡には、慈恩禅寺という紅葉の名所があります。が、ここには去年行ったので、今年はやめにしてモーニングセットを食べに行こうかな、と。
ここでは去年の写真を貼っておきましょう。

これは慈恩禅寺の庭。去年の11月12日の撮影。
この時期の午前中、慈恩禅寺の畳には、ご覧のようにモミジの影が映ります。うつくし。

朝、お寺を2〜3軒回っているだけで、一時間近く経っていました。それでは朝ご飯に参りましょうか。

古い喫茶店のモーニングセットでなごむ。

よほどの山奥でない限り、僕は素泊まりで宿を予約することが多い。ホテルで朝ご飯は食べない。なぜかというと、街の喫茶店でモーニングセットを食べたいからです。そこで常連さんたちの会話を聞きながら、その街のリアルな姿を知ることもまた、旅のお楽しみ。そのために前日からロケハンすることもあります。

その点で、郡上八幡には歴史のありそうな喫茶店が多く、毎回どこに行こうか迷うほど。そしてこの日は、以前から気になっていた店に、ようやく来ることができました。

郡上おどりの最終日に見つけたこの店。昭和な洋食メニューも多い。

ここで、旅先の街で喫茶店に入るときの注意をひとつ。
地元に溶け込んだ喫茶店は朝イチに常連さんが集まるので、一見さんは隅のテーブル席を選ぶのが大切なポイント。この店でも、常連さんが集まりそうなカウンターや、大きめのテーブル席は避け、壁際の二人用テーブル席に着きました。最初はそうして遠慮しながら、徐々に常連さんとの間合いを詰めて行くのが観光客としての正しい姿。これは居酒屋に行っても同じルールが適用できます。

クラシック音楽が流れる店内。メニューに書かれたコーヒーは、焙煎の深さで分かれている。で、それぞれのコーヒーの呼び名には、郡上おどりの曲目がつけられている。深煎りは「まつさか」だったかな。

当初はトーストにするつもりだったのだけど、メニューには飛騨牛カレーやナポリタンなどなど、昭和の洋食が並ぶ。うわぁ、迷う。結局、「鉄板イタリアン(つまりナポリタン)」とコーヒーを選択。ブレンドコーヒーだけを、先に持ってきてもらいました。

いちばんベーシックなブレンドコーヒーだけど、ベテランのマスターが時間をかけて、サイフォンで丁寧に淹れてくれました。お・い・し・い。とてもクリアな味。こんなコーヒー、首都圏の外資系コーヒーチェーン店では、飲んだことがありません。

コーヒーを飲んでいる間にも、来ること来ること、地元のおばあさんのグループばかり。店内には静かなクラシック音楽が流れていますが、そんなの聞こえないくらい賑やかです。とにかくお元気で何よりです。ところでこっちのお年寄りの会話を聞いていると、語尾には何かと「……なぁ」という語が目立ちますね。そう言えば映画『君の名は。』は舞台が飛騨の山の方でしたっけ。あの映画で聞いたような言い回しもちらほら。

このお年寄りたちも、若い頃は郡上おどりで活躍したんだろうな。
そして鉄板イタリアンのできあがり。朝からヘビーかな、と思ったけれど、一気に食べてしまいました。

入り口がカランコロンと鳴るたびにお年寄りのグループが増えてくるけれど、ひと組だけ、欧米系と思われる外国人のカップルが入ってきました。ふたりとも自転車のヘルメットを持っているので、このあたりを自転車で旅しているのかな?
店員さんは翻訳アプリを使っての対応。この街でも、こうして普通に外国人を見かけるようになりました。アジア系の観光客は所在なげに街を歩いていることが多いけれど、欧米系の人たちは、こうして積極的に日本の暮らしの中に飛び込んできますね。僕も外国に行ったら、ぜひともこうありたいです。

コーヒーをもう一杯おかわりして、滞在時間は約1時間。店が混み始めたので、このくらいでお会計といたします。おごちそうさまでした。

店を出ると、キリッと冷えた空気が心地よし。
橋の上から見る吉田川は、すっかり秋から冬への装い。郡上おどりの頃は、まだ一面緑の世界でした。

この日、午後はクルマで美濃市に向かいました。美濃和紙の街、古い街並み。
その後は中津川市から旧中山道へと向かいますが、そこで見た、山の中の芝居小屋などなど、驚くこと満載の旅が始まります。今回の投稿も長くなったので、続きは次回に。







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