5分後には忘れていたような、ささやかな過去の情景が蘇る〜駅の構内アナウンス集
駅の構内アナウンスってありますよね。
列車の到着を知らせたり、黄色い線の内側に…、などと言っているあの放送です。あのアナウンスって、これまで駅員さんが話しているか、専門家がいるとしても路線ごとに違う人が担当しているものだと思っていました。
しかしいるんですね。そういうプロの人が。しかも同じ人が関東だけではなく、関西や九州でもアナウンスしていた。そしてその第一人者と呼ばれていた津田英治さんという方が、この1月13日に76歳で亡くなられたとのこと。
ま、とにかく、この声を聞いてみてください。関東以北の人にはおなじみではないかもしれないけど、関東以西の人にとって、どこかで聞いていた声だとは思いませんか?
どうですか?
たしかに聞いたことがある、という人が多いはずです。そして、さらに一歩踏み込んで、「この声を聞いていると、なぜか思い出す懐かしい情景がある」と思える人とは、きっといいお友だちになれるような気がします。
この声を聞いていた時は、電車を待つ以外にすることのない、とても退屈な時だったのではないでしょうか。
それは部活の帰りだったり、遅刻しそうで焦っているときだったり、あるいはデートに向かっているトキメキの時間だったり、酔っ払って終電を待っている情けない時間だったり、両親に見送られて都会でのひとり暮らしに向かう、寂しさと期待の入り交じった時間だったり。
そんな情景が、駅の埃っぽい空気と共に、いろいろ蘇ってくるのです。
おそらく聞いていた当時は、5分後には忘れているような情景ばかりだけど、こうして改めて聞き直してみると、そんな忘れていた情景がリアルに蘇る。今は失っているかもしれない、今より若かった頃のありふれた日常。
音や声というものは、匂いと同じくらいに記憶を蘇らせるものですね。
という、これ以上の教訓もオチも何も無い話ではありますが、ぜひ聞いてみてください。
この落ち着きのある、淡々としていながらも穏やかなアナウンスを聞いていると、駆け込み乗車なんてしたくなくなるというものです。だからこそ、この道の第一線で活躍しておられたのでしょう。
そんな日常の名脇役でいてくれた、津田英治さんのご冥福を祈ります。
最後に駅の写真を貼っておこうかな。
これは、おそらく津田さんのアナウンスが流れていた、総武線水道橋駅のホームです。古いレールを利用した、この柱がシブいんですよね。